佐渡島庸平(コルク代表)
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正しさへの妥協が、作家の味を生み出す
創作に関わっていると、「味がある」とは何かとよく考える。作家性とも言えるかもしれない。
味や作家性とは、いつ生まれ出すのか?
マンガ家に限らず、何かしらの領域で一流を目指している人たちは、まずは「技術」を学ぶ。たくさん真似て、型を身につける。思考せずにすむように、体に覚え込ませる。無意識にできるようになることが一番いい。
だが、技術を習得すればするほど、みんな同じになっていく。下手な時のほう
昔と違って、“虚無主義”に陥らない理由
今から振り返ると、中学から大学くらいまでの間、ぼくは「虚無主義」に陥っていた。
メタ的な視点を高めていくと、すべてのことは諸行無常で、儚いもののように思えてくる。結局、死ぬから全てのことに大差がなく感じる。
長い時間軸で社会を見ていくと、今、価値があると信じられているものも、別の時代の非常識だったりする。
例えば、江戸時代の祭りについて調べると、今の祭りと違いすぎて驚く。それと同じで、現代社
創作とは手紙であることを、改めて実感
新人マンガ家との打ち合わせで、ぼくは「手紙」を喩えによく使う。
マンガ家でも小説家でも、クリエイターは、自分の作品で誰かの心を動かしたいという衝動を根底に持っている。
どうやったら自分が感じていることが相手に伝わるのか、自分の見えている世界を相手と共有できるのか。それを深く掘り下げて、様々な試行錯誤を繰り返していくことが、創作ではないかと、ぼくは思う。
創作とは、誰かに気持ちを届ける「手紙」
技術ではなく、技能を熟達させた先にあるもの
「編集者を育てるには、薫育(くんいく)しかないんだよ」
最近、マンガ編集者として、そして経営者として、大先輩である堀江信彦さんがよく話されていた、この言葉についてよく考えている。
堀江さんは、『北斗の拳』や『シティーハンター』などを担当し、ジャンプが歴代最高部数を記録した時代に編集長を務めたマンガ編集者だ。集英社を退社された後も、コアミックスを起業した。まさに編集者をライフワークとしている人だ
どうすれば、呪いのような「小言」を言わなくなるか
言葉が持つ力について考える。
言霊と言うべきか。その言霊の力まで理解して、言葉を使わないといけない。ファンタジーで、意味を理解することなく魔法の言葉を使うと、予想外の災難を起こしてしまうように。
言葉が指し示すものは、ぼくらが想像しているよりも大きいかもしれない。
日本に住んでいると「まわりに迷惑をかけないように」という台詞を至るところで耳にする。子育ての方針としても「周りに迷惑さえかけなけ