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“友達でいる理由”を尋ねられる相手は何人いるか?

「なぜ、あなたは私と友達でいてくれるのか?」

このnoteを読んでくれている人で、こんな質問を誰かにぶつけた経験のある人は、どれくらいいるだろうか。

ぼく自身の話で言うと、つい先日、人生ではじめて経験した。それは数年前から参加している『EO(Entrepreneur’s Organization)』という起業家同士が学ぶ合うコミュニティがキッカケだ。

EOでは、自己認識を高めていくことを大切にしている。

自己認識には2つのアプローチがある。自分の価値観、情熱、願望についての内省的な理解をする「内的自己認識」。外側から自分自身を理解すること、他者が自分をどう見ているかを知る「外的自己認識」だ。

以前に『ジョハリの窓から、「さらけだす」を再考』というnoteに詳しく書いたが、いかに自己認識を高めていくかという点で、EOでは「ジョハリの窓」についての話がよく行われる。

自分は知っていて、他人は知らない「秘密の窓(hidden self)」。他人は知っていて、自分は知っている「盲点の窓(blind self)」。この2つの窓を開放していくために、EOでは様々なプログラムが組まれている。

例えば、「5%リフクレション」という振り返りの型がある。

EOでは同じメンバーで毎月集まり、1ヶ月の間に起きたことを共有しあう。そして、1ヶ月間の中で生じた様々な感情の中で、自分の心に深く刻まれた上位と下位の5%の感情は何だったのかを共有する。

実際、その5%を考えるのは簡単ではなく、かなり深く内省していかないと見つからない。そこは自分自身でも、言語化してなくて、普段は見つめていないところだ。かなり意識していても、なかなか辿りつかない。

ぼくにとって、EOの仲間と定期的に語り合う時間は、自己認識を高めるために欠かせない機会となっている。自分の感情をさらけだして、学びあえる仲間ができたことで、気づかされることがすごく多い。

そして、EOでは毎月の集まりとは別に、年に一回、特別な研修の場が用意される。その研修のテーマも「もっと自分をよく知る」なのだが、その事前課題の内容の一部に驚いた。

それが、「なぜ、あなたは私と友達でいてくれるのか?」という質問を、3〜5人の親友に電話で尋ねることだったのだ。

「親友とは」の定義で、夜中の3時にいきなり電話をかけて、「悩んでいるので話を聞いてほしい」と相談できる相手かどうか。そういう距離感の相手に、先ほどの質問をしてほしいというのだ。ハードルが高い!!

さらに、友達でいてくれる理由については、表面的ないいところを言ってもらうだけではダメで、深層的な部分にまで切り込むようにと指示されている。例えば「自分の存在が、あなたに取ってどういう意味を持っているのか?」「あなたの心の中で、自分はどういう場所を占めているのか?」みたいなことを聞き出すべしというのだ。

ハードルが高すぎる!!この研修の企画はEOの本部のあるアメリカで組まれている。日本人にはハードルが高くて、恥ずかしい!

そもそも、毎晩ぐっすり寝るぼくは、夜中の3時に突然電話をかけたりしない!そんな間柄の人が思いつかない!でも、最終的に、3人に相談させてもらった。

ひとりは、南アフリカの中学校からの付き合いで、高校時代はテニスでダブルスを組んでいた相手。もう一人も、高校からの友人。最後は、大学のサークル時代からの付き合いで、いまはコルクの副社長をやっている黒川。

この課題に取り組む中で、ぼくが感じたのは、「仲間」と「友達」は似て非なるものということだ。

講談社時代から現在に至るまで、仕事を超えた仲になったと感じている相手はいっぱいいる。でも、そういう人たちの中から、今回の質問をぶつけられる相手はいなかった。大切な「仲間」であるのは間違いないのだけど、「友達」という認識には至らなかったのだ。

では、「友達」という間柄は一体何なのか?

それは、雑に相手を扱っても、こちらが雑に扱われても、お互いに「雑に扱われた」と思わない間柄。そもそも、雑という概念がお互いの間にない間柄。そうした関係の相手を言うのではないか。

親しき仲にも礼儀ありと言うけれど、礼儀をなくしてもいい相手。そう言い換えてもいいかもしれない。

例えば、今回ぼくが質問をした相手の一人である中高時代の友人は、どんな仕事をやっているのかよくわかっていない。物理の研究をしていて、専門的なことをやっているので、話を聞いてもよくわからない。相手もそのことがわかっているのか、本気で仕事の説明はしない。振り返ると、会話のほとんどがそんな感じで、雑な会話ばかりしている。

もう一人の高校からの友人は、「お前はゴルフもするし、行きたいと思うレストランの趣味が一緒だから、関係が続くんだよ」と、開けっぴろげに言ってきた。相手は医者をやっていて、「医者の世界に閉じていると世間が狭くなるから、医者以外の友達として、お前はちょうどいい」とも言っていた。

雑なコミュニケーションをしてきても、笑って流せる。雑なコミュニケーションなのに、なぜか関係が継続していく。そういう相手のことを、友達と言うのかもしれない。

マンガで友情を描くというと、お互いが手を取り合って、協力していくシーンが思い浮かびやすい。でも、そういうシーンは「友情が描かれている」というより、「仲間の絆が描かれている」といったほうが正確な気がする。

友情を描くのであれば、雑な間柄なんだけど、一緒にいると不思議と心が落ち着くみたいな関係を描いたほうが圧倒的にリアルだ。

また、仲間の間柄から、友達の間柄に滑らかに移行していくには、どんなことが必要なんだろうか。今回の研修の課題のおかげで、関係の築き方という点で新しい気づきがたくさんあった。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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