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振り返りのゴールは、目標設定ではなく、視点を得ること

クリエイターとして上達を続けるため、何が必要なのか?

この『基本信仰こそ、思考停止の元凶』というnoteに詳しく書いたが、クリエイターとして長期的に成長していくために、どういう姿勢が必要なのか。ここ最近は、そんな抽象的なことばかりをマンガ家たちと話している。

どんな職業でも、最初は「型」を覚えることが必要だ。それによって、ある程度のパフォーマンスを継続的に発揮できるようになる。では、基礎を覚えた後に、どうやったら守破離の「離」を実行し続けられるのか。

上達し続けるために、型よりも大事なことがある。それは、一番初めに「学び方を学ぶ」ということだ。学び方がわかっていたら、独学で成長しつづけることができる。自然と「離」を実行できる。

先日、デザイナーの遠藤大輔さんとコルクラボで対談させてもらったのだが、この問いについて考えるヒントをもらった。

遠藤さんはニューヨークにある芸術大学を卒業し、世界的に有名なデザイン事務所でデザイナーとしてのキャリアをスタート。その後、フリーランスのデザイナーとして活動し、ビズリーチのロゴなどを手がけている。

遠藤さんはデザイナーとして活動すると同時に、デザイン教育を通して、デザインを社会に実装することにも注力している。現在もニューヨークにある美術大学でデザインを教えていて、過去には1,500人を超える教授たちの中からベストプロフェッサーを受賞したこともある。

遠藤さんがどうのようにデザイナーの育成に向き合っているのか。それが、マンガ家を育成していく方法を模索している、ぼくの最大の関心ごとだったのだが、遠藤さんの話してくれた内容にものすごく共感を覚えた。

そもそもデザインの世界では、基礎となる知識は既に体系化されている。文字の加工の仕方・配色テクニック・レイアウトの組み方などをしっかりと覚えれば、デザイン性に優れたアウトプットを生み出せるようになる。

だが、デザイナーに求められる役割が拡張するなかで、そういった知識を覚えているだけでは不十分だと遠藤さんは言う。自分の中にある創造や発想の型をアップデートし続けないことには、デザイナーとして社会に価値を提供することはできない。

そのため、遠藤さんの授業では一番最初に、どうやって自分をアップデートするのかの「学び方」を学んでいく。

『ドラゴン桜2』の一番のテーマは、「学び方を学ぶ」だった。ぼくも重要さは意識しつつも、そのこと自体をテーマにカリキュラムを作ってはいなくて、盲点になっていた。

では、遠藤さんは具体的に何をやっているかというと、参加者は自分で好きにテーマを決めて、5週間で上達を目指す。期間中はメンバー同士で上達具合をシェアしたりするのだが、期間終了と同時に、どういうプロセスを経て上達したのかをプレゼンする。そのプレゼンのためには、自分がどうやって上達したかを客観視する振り返りが必要となる。

どういうプロセスを経ると、自分の創造性が発揮できるのか。どういうプロセスだと、自分の場合は効果が薄いのか。そうしたことを整理しながら、「上達に必要なものは何か」という問いを各自が紐解いていく。

この話を聞いた時、楽天大学の仲山進也さんが『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』の本で書いていたことを思い出した。

この本では、「振り返り」を行う際、次の4つを言語化することが大切と書かれている。

(1)何が起こったか【事実】
(2)どう考えたか【解釈】
(3)得られた学びは何か【規範化】
(4)次どうするか【適用】

この4つの中で特に重要なのは、(2)と(3)だ。振り返りというと、「何をやったのか」という事実確認と、それを踏まえて「次に何かをするのか」という目標設定を行うイメージを持っている人が多いと思う。でも、その振り返りだけでは、成長に限界がくる。既定の型の延長線上でしか、成長していくことができない。

事実とそこに至るまでのプロセスを客観視し、自分の価値基準と視点に気づき、価値基準と視点自体をアップデートする。そうすることで、得られるインプットの量と質が変わり、価値基準が磨かれることで、アウトプットに大きな変化が生まれる。

遠藤さんは、この価値基準と視点をアップデートすることを「リフレーミング」と呼んでいた。物事を見る枠組み(フレーム)を変え、違う視点で捉え、新しい発見や学びを得る。リフレーミングが起きている時に、人や組織は大きく成長をしていくのだ。

会社で振り返りのMTGをすると、「次の目標をどうするか」といった問いがメインに置かれがちだけど、「今回のことから、何か新しい視点は得られた?」という問いにしたほうが、圧倒的にメンバーの成長に繋がるはずだ。何より、そっちのほうがワクワク感を感じられるだろう。

遠藤さんと仲山さんの話を同時期に聞いて、振り返りの正しい姿勢を身につけることが、上達し続けるために最も重要だと気づくことができた。

以前に『目標を自分ごとにする鍵は、振り返り』というnoteを書くなど、これまでも振り返りの大切さを盛んに言ってきた。

「今回の経験には、新しい視点を得る機会があったのか」。そのような視点で振り返りを行うと、より解像度が高まると感じた。振り返りを使って、学び方自体を洗練させていく。それは、全ての職業、趣味の上達に通じる本質的な行為だと思う。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。日記には、どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを書いています。子育てをするなかで感じた苦労や発見など、かなり個人的な話もあります。

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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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