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クリエイティビティとは、n次創作と身体性

「クリエイティビティ」とは何なのか?

編集者になり何度も自問したが、今の時代ほど、この問いが迫ってきたことはない。AIによって作品らしきものが簡単に生まれるようになってきた。
どうすれば、AIにとって代わられる作品ではなく、AIをうまく利用した作品を生み出していけるのか。

作品=作家性+技術

とすると、技術の部分がAIに置き換わっていくのだろう。

今までぼくたちは、技術の部分もクリエイティブとみなしていたが、作家性がより重要になっていく。今までは、作家性よりも、技術の部分のほうが重視されていた可能性もある。

ぼくらの思考は言葉で行われ、思考の流れは文化、社会によって規定されている。

クリエイターは、ゼロイチでものを生み出すと言われることがあるが、クリエイターもAIもゼロからものを生み出すことはない。事前に積み上がっている情報が元になっている。

だから、創作物は、全てn次創作であると言える。

二次創作を否定するつもりはない。以前に『二次創作がもたらす、滑らかな成長』というnoteにも書いたが、二次創作とは「創作の楽しさ」を多くの人が味わう最初の行為だと思ってる。

二次創作から始まり、n次創作へとなっていく。それがクリエイターの成長ステップなのだと思う。

華道や茶道の家元について、面白い話を聞いたことがある。
父と子で、大きな革新が起きることがあまりない。作法は、はじめ父から子に教えられる。その中では、革新は生まれず、子が祖父の技術を学びにいって、革新が起きる。
1代目と3代目。2代目と4代目が影響を与え合う。
徳川家を考えた時にも、家康の築いた土台を安定させたのは秀忠だとしても、発展させたのはやはり3代目の家光だ。

直接的な関係は、ただ似ている、引き継いでいるだけになってしまう。型を破れるのは、先代ではなく、二代前を意識した時であるというのは、創作に向き合う時のヒントがたくさん詰まっているように思う。

まずは、自分にもっとも影響を与えた作家の真似をする。
そのあと、自分に影響を与えた作家に、影響を与えた作家を調べる。そして、その祖父母的な作家の作品を現代的に更新できないかを考える。

そのような形で企画を考えていると、自然とn次創作的になっていくように思う。

全ての創作物がn次創作だとしても、ある時、急に「これは新しい!」と感じるような作品が生まれる。
作家性、オリジナリティがあり、それを起点としてたくさんの二次創作、n次創作が生まれるのが、傑作なんだと思う。
論文だと引用回数という概念が大切にされているが、創作物も実は同じだ。

AIが質の高いn次創作を行うかどうかは、時間の問題だ。
では、AIに真似できない、作家性とは何か。

それは身体性だと思う。
身体の声に心を澄ます。そこで見つけた感情と経験を創作物の中に閉じ込める。ぼくたちは、創作物で覚えた感情を、現実の中で探してしまってる。現実を見る目を、創作物に与えられている。

そうではなくて、できるだけまっさらな目で、現実を見て、そこで感じたものをしっかりといれる。それは驚くようなものだったり、ハッとするようなものではない。身近な平凡なものだと思う。
でも、そこに作家性が宿る。

以前に、『“表現の学校”における、自分と向き合う大切さ』というnoteを書いたが、自分と深く向き合っている創作物こそが、世の中にとっても、作者自身にとっても、一番価値のあるものになるとぼくは信じている。

たとえ技術的には不完全でも、「この感情を描きたい」「この問いを主人公と一緒に考えたい」という作者の衝動が感じられる作品を読むと、グッと引き込まれる。

ぼくが一緒に仕事をしている、つのだふむという作家がいる。
毎週こんなnoteを書いている。

彼が糸島での実生活を描いたマンガがTikTokでバズった。

そして、Kindleでも無料に読めるようにしたら、すごくたくさんの人に読んでもらえた。

自分がなぜ福岡に移住しようと思ったのだろう?
さらには、作家にまで移住を自信を持って勧めたのだろうと考える時がある。

都会よりも、自然の中のほうが、自分の身体の声に耳を澄ますことができる。それがこれからの時代の創作に重要だと直感的に考えているからではないかと思っている。

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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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