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他者の足跡を追うことで、自分は何者かを知る

「成長し続けることが重要」という考えは、一般的なものにみえる。だが、人生において大切なのは、成長よりも「成熟」だと考えている。

ぼくが考える成熟とは、社会が求める基準を手放し、自分なりの基準を手にいれ、それを楽しみながら追求することだ。

成長は数値で測ることができるが、成熟は数値で測る事ができない。成長は一方向に加算的に進むものだが、成熟は多方向に広がり、時に矛盾を抱えるものだ。成熟とは、その矛盾を含んだままバランスを取ることでもある。

経験もスキルもない若い頃には、成長を追い求めるのは自然だ。だが、様々な経験を積んでいくと、簡単には割り切れないものが世の中に多くあることを知っていく。そうしたものと向き合っていく中で、成熟していく。

では、自分なりの基準を手に入れるには、どうしたらいいか?
それは「自分を知る」に尽きるのではないか。

そんなことを考えて、40歳を超えた頃から、自分を知るための行為に多くの時間を割くようになった。

以前に投稿した『40歳を超えると、"原点"に触れたくなる?』というnoteに詳しく書いたが、過去に自分が影響を受けた作品を読み返すことも、その行為のひとつだ。

作品から影響を受けて、ぼくが変わったのか。それとも、似たような価値観を持っていたから、その作品が好きになったのか。どちらが先かわからないが、自分が影響を受けた作品を読み返すと、自分の根底にある価値観や人生観を再認識することができる。

そして、自分を知るために重要だと思う行為が、もう一つある。

自分が影響を受けたと感じる人たちに、できるだけ会いに行くことだ。

“人は、人によって磨かれる”

これは『宇宙兄弟とFFS理論が教えてくれる あなたの知らないあなたの強み』という本を一緒に作った、ヒューマンロジック研究所の古野俊幸さんの言葉で、ぼくが大切にしている言葉だ。

人はひとりで勝手に育っていくものではない。人に揉まれて、磨かれ、育っていく。だから、自分の価値観の根底には、他者が残した足あとが必ず存在する。

例えば、講談社の新人時代にぼくの指導社員だった先輩編集者と、約10年ぶりに会って話をさせてもらう機会があった。

当時、先輩からはいつも発破をはかけられていた。「打ち合わせに同席しているだけでは意味がない」「会社はお前が学ぶために給料を払っているわけではない」と、奮起を促すような声かけをしてくれていた。ぼく自身、その通りだと思って、1年目から新連載を立ち上げたいと思い、それが『ドラゴン桜』へとつながった。

そんな風に、先輩の言葉に発奮して仕事を頑張っていたので、その影響を無意識に受け、後輩やコルクの社員に同じような声かけをしていた。久しぶりに先輩とふたりで話をして、以前のぼくがコルクでやっていたことは、先輩からの影響を強く受けていたことに気づいた。

そんな風に、人生の節目節目で自分に影響を与えたであろう人たちと久しぶりに再会するのは、自分を知る行為として大きな価値を感じている。

先日は、小学5年・6年生の時の担任の先生に、小学校の卒業式ぶりに会いにいってきた。

ぼくは6年生の途中まで学芸大附属世田谷小学校に通っていたのだが、先生は一方的に授業を進めるのではなく、生徒自らが問いを立て、みんなでディスカッションしていくスタイルを取り入れていた。現在でいうところの「探究学習」だが、当時としてはかなり斬新なスタイルだったと思う。

ぼく自身の学び方のスタイルは、小学生の頃の体験にすごく影響を受けているような気がしていて、先生と久しぶりに話がしたいと思ったのだ。

先生と話をしていると、「自分は、そんな子どもだったのか」と思わされるようなことが幾つかあった。

例えば、小学生の頃のぼくは、制服のジャケットのポケットにいつも文庫本を入れていたらしい。でも、読書好きな子どもなのに、休み時間には外でサッカーをしていたりして、友だちもたくさんいる。その両立ができている子どもは珍しいようで、それがすごく記憶に残っていたらしい。

先生と会ったことで、自分の基本的な部分は、当時から現在に至るまで、あまり変わっていないことに気づかされた。

こうした行為は、「自分のルーツを探る」みたいな行為とも呼べると思うのだけど、こういうのが楽しいと感じるのは年齢のせいなのだろうか。

最近では、ぼくに確実に影響を与えたであろう両親や親戚の人生についても興味を持ちだしている。彼らが若い時、どんなことを考えて、どんな経験をしてきたのか。そうしたことを実はよくわかっていない。

どういう人たちに囲まれて、ぼくは育ったのか。その足跡を追うことで、自分が何者をより理解できそう気がする。

最近、ゴーギャンの絵のタイトルの言葉をよく思い浮かべる。

“我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか”

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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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