40歳を超えると、"原点"に触れたくなる?
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40歳を超えると、"原点"に触れたくなる?

平野啓一郎の『マチネの終わりに』の中にこんな一節がある。

「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」

では、どんな時に未来が過去を変えるのか。

すごくシンプルな話で、振り返る時だ。振り返る度に、新しい意味が付与されて、過去の意味が変わっていく。

今、ぼくは、毎晩その日を振り返って、ボイシーという音声配信システムで配信をしている。

この振り返りを一年近く続けてきたが、すごくいい。日々が積み重なっていく感覚がある。日々を自分がどう受け止めたのかを、自己理解が進む。

ぼくは今、41歳で、去年、こんなブログを書いた。『居場所から居心地の探究へ』。「不惑」とは、自分探しを終えて、「自分を見つける」ではなく、「自分を知る」ではないかと最近は考えている。

居場所を思い求めるのではなく、自分なりの居心地を知る。自分の居心地とは、誰かに決められるものではなく、自分で感じるしかない。高い服の方が安い服よりも居心地がいいとは限らない。どんな服が居心地をいいかを知っているのは自分だけなのだ。

そして、自分を知るための振り返りとして、非常に有効な方法を見つけた。

過去に自分が影響を受けたものに改めて触れることだ。

noteのコミュニテ機能を使って『文学サークル』を運営している。月に1回の読書会の本の選定は僕が行なっている。じっくりと語れる本を選ぼうとしたら、自然と、僕の人生に影響を与えた本になる。そのような本を改めて読み返し、みんなで話し合いをすると思わぬ発見の連続だ。

登場人物の考え方や振る舞いを見ていて、「今の自分」と重なる部分を発見するのだ。しかも、物語の大筋とは関係ない箇所から見出したりする。

例えば『ゲド戦記』。

小学生の頃から好きな作品なのだけど、なぜ自分がこの作品に強く惹かれるのかを、しっかりと理解できてなかった。それが、読み返すなかで、その理由が見えてきた。

ぼくは、ゲドの他人への接し方や、距離の取り方が好きなのだ。

ゲドは、相手を窮地から助け出したりと、救いの手を差し伸べるのだけど、深くは入り込まない。最終的には相手が自分自身で歩んでいけるように、少し距離をとって見守っていく。

ゲドの他者への姿勢は、今のぼくが目指している編集者像そのものだ。

ゲドから影響を受けて、ぼくが変わったのか。それとも、そういう価値観を持っていたから、好きになったのか。どちらが先かわからないが、過去好きだった本を読み返すと、その作品を面白いと思うだけでなく、自分の一部を発見することになる。

過去を他者と振り返ることは、自分を知るのにすごく有効だと思って、南アフリカの友人と25年ぶりに会ってみたり、講談社の新入社員時に指導社員だった先輩編集者と、約10年ぶりにじっくり話をしてみたりした。

新卒1年目の時は、その先輩と多くの時間を過ごした。先輩が担当するマンガ家のネームや原稿が完成するまで、10時間くらい一緒に待ったことが何度もある。

先輩からは、いつも発破をはかけられていた。「打ち合わせに同席しているだけでは意味がない」とか、「会社はお前が学ぶために給料を払っているわけではない」とか、奮起を促すような声かけをしてくれていた。ぼく自身、その通りだと思って、1年目から新連載の企画をし、そのひとつが『ドラゴン桜』だ。先輩からの発破がなければ、やってなかったかもしれない。

そんな風に、ぼくは先輩の言葉に発奮して仕事を頑張っていたので、その影響を無意識に受け、後輩やコルクの社員に同じような声かけをしていた。

久しぶりに先輩とふたりで話をして、ぼくがコルクでやっていることは、先輩からの影響を強く受けていたことに気づいた。そして、自分の原点に振り返るために、先輩とは定期的に話がしたいと思った。

こんな風に、過去に影響を受けたものに改めて触れることで、見えてくる自分の姿がある。

「自分探し」と「自分を知る」は、似ているようで全く違うものだということを最近はすごく実感している。

そして、40歳をすぎると同窓会を企画する人が増える気持ちがちょっとわかった。友達とは同窓会関係なく会えばいいと思っていたけど、ちょっと距離の会った人と話して過去を振り返ると、思わぬ気づきがあるのだ。

他の人も40代になって、こういう感覚を持ったりしているものだろうか。


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