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「欠点」と「弱点」の違いと、それぞれの向き合い方

世の中には、似たような意味合いだが、実は使い方がずいぶん違う言葉がある。

そのひとつが、先週のnote『子どもに“委ねる“覚悟と、子離れの難しさについて』で触れた「任せる」と「委ねる」だ。前者は信用が背景に、後者は信頼が背景にあり、相手への向き合い方が全く違う。

他の例で言えば、「修行」と「修業」という言葉もそうだ。

多くの人は「修行」という言葉を使う時、何かしらのスキルを獲得するために鍛錬することをイメージすると思う。職人になるために修行するとか、武芸を極めるために修行するとか。

だが、語源を調べていくと、「修行」とは仏教における精神鍛錬に関する用語のひとつで、財産・名誉・性欲といった人間的な欲望から解放され、生きていること自体に満足感を得られる状態を追求することを指す。

なぜ「修行」という言葉に誤った認識が生まれてしまうかというと、「修業」という言葉があるからだ。本来、スキルや習得する行為は「修業」なのだが、似た言葉として意味が混同され、「修業」の意味合いで「修行」が使われるようになってしまった。

修行とは、何者かになるために行うものではなく、何者かになりたいという欲望すら消し去るために行うものなのだ。
何者かになろうとせずに、目の前のことに没頭した瞬間に、真の学びが始まるのだと思う。こうした話を以前に投稿した『意外と知られてない、「修行」の本当の意味』というnoteで触れた。

このように、語源ついて考えていくと、自分の思考が整理され、世界の見え方が変わっていく。だから、普段から、言葉には敏感でありたいと考えている。

最近、ふとSNSを見ていたら、マンガ原作者や脚本家として有名な小池一夫さんの言葉を引用した投稿が流れてきた。

「主人公には“弱点”を、ライバルには“欠点“を」

2年前に小池さんの本についてYouTubeで話した時も、弱点と欠点について言及していた。

今回、投稿を見た時、前よりもその言葉にとどまった。自分の脆弱性について考える時間が増えていたからかもしれない。

「弱点」と「欠点」。
このふたつの言葉の違いとは何かを考えはじめた。

chat GPTはこのような言葉の差の説明が上手い。最近のぼくが言葉について考えるのが好きなのは、 GPTとのやりとりが楽しいからかもしれない。

弱点は、比較的に力が劣っている部分や、攻撃や批判を受けやすい箇所を指します。個人の能力や性格、物事の構造上の脆弱(ぜいじゃく)な点に使われることが多いです。

欠点は、人や物事において、理想や期待に達していない部分や性質を指します。完璧でないところ、改善の余地がある点を言います。

弱点は克服する。欠点は改善する。

弱点は、強みと表裏一体で、弱点をなくそうとすると、強みもなくなってしまう。だから、改善はできない。弱点を克服する時に起きることは、その弱さを見つけ、気づき、受け入れることだ。

主人公に欠点ではなく、弱点というのはすごく示唆深い。弱点はそれを克服できると、愛嬌になる場合がある。

一方、欠点の改善を試みていない態度は怠惰に感じる。愛嬌に転じることはない。

弱点は変えれなくて、受けいるもの。
欠点は改善するもの。

つまり、重要なことは、弱点と欠点を見極めることだ。その2つをどうやって混同せずに分けるのか。

「変えられるものを変える勇気を、変えられないものを受け入れる冷静さを、そして両者を識別する知恵を与えたまえ。」
カート・ヴォネガットがよく引用して、ぼくも好きになったニーバーの祈りだ。

受け入れるとか、諦める、というのは消極的な努力をしてない言葉のように感じやすい。しかし人生で本当に難しいことは、自分の弱点を見つけ、それを受け入れることなのだろう。

欠点の改善は、成長実感が湧くし、うまくいきだすと楽しい。ドーパミンが出る。受け入れたり、諦めたりする時は、ドーパミンは出ない。  

弱点と欠点は、ストーリーテリングに役立つ概念なだけではない。

自分がどのように生きていくのかを考える上で、重要な概念だ。

願わくば、ぼくに弱点を識別し、それを受け入れる勇気を。


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