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民主的な対話の大切さを、息子たちから学ぶ

教育の役割とは何か。学校とは何のためにあるのか。3人の息子がいる親として、教育についてよく考える。

見守るとは、自分がいなくなった時の準備』というnoteにも書いたが、知識に関しては、学校で学ばなくても別にいいと思っている。知識を学べる場は他にも沢山あるし、学びたいと思ったタイミングで勉強すれば、いくらでも十分な知識は身につけられる。

それより大切なのは、他者との関係の築き方を学ぶことだ。

他者とコミュニケーションをとるのは当たり前すぎて、わざわざ学ぶことではないと思っているかもしれない。しかし、しっかりと意識して学ばないと熟達していかない難しい課題だと、ぼくは考えている。相手の気持ちを理解するのも、自分の考えを相手に伝えるのも、一筋縄ではいかない。

ぼくのnoteで何度も紹介しているが、息子たちが通っている『きのくに子どもの村学園』では、他者との関係を築く練習を大切にしている。

この学校では、生徒同士で問題が起きたら、生徒たちが集まり、その問題が起こってしまった原因や、どうすればいいかなどを話し合う。大人は介入せずに子どもたちだけで話し合う。先日、息子は「学校に紙のマンガ本は持ち込んでよくて、なぜKindleがいけないのか。ルールを変えるべきだ」と話し合いをしていた。

学校であれ、会社であれ、話し合いは先生や上司が間に入り、調整をつけることが多い。一方、この学校では、みんなで話し合い、納得解に辿り着こうとする。この教育方針に僕は感銘を受けた。

この学校に通い始めてから、息子たちの成長を感じる瞬間が多い。特に印象深かったのが、三男から言われた言葉だ。

息子たちが集まると、兄弟喧嘩が絶えないのだが、この日は小学6年生の長男が小学1年生の三男を泣かせていた。我が家でも『きのくに子どもの村学園』のように、喧嘩が起きたら、みんなで話し合うようにしている。

それで、「何があったの?」と聞くと、息子たちが色々と話をはじめる。以前だったら、話すうちにお互いの感情が膨れ上がってきて、話し合いにならなかった。でも現在は、みんなが話し合い方を学んでいるから、感情に流されずに話し合えるようになってきている。

この日は上手く話し合うことができたと思ったから、話し合いが終わった後に、「さっきのパパの話し合いの進め方はどうだった?」と息子たちに聞いてみた。その時の三男からの指摘に、ぼくの驚いた。

長男に泣かせれていた三男が、長男の意見をぼくが軽視しすぎていると指摘してくれたのだ。自分を泣かせた長男を悪者と決めつけ、長男の意見を聞いてはいるものの、雑に扱っていると。

三男にそう言われて、ハッとした。泣いている三男と泣かした長男のふたりを見て、「長男がまた意地悪な事をしたのだろう」と長男に反省を促すような接し方をしてしまっていた。

揉め事の当事者でありながら、このような客観的な意見を言うのは、大人でも難しい。小学1年生として学校に通い出してまだ半年くらいなのに、既に話し合いの仕方を学んでいるのだ。三男の成長に喜びを感じるとともに、『きのくに子どもの村学園』の教育方針は素晴らしいと改めて感じた。

最近、こんな風に教育について考えているぼくが共感した本がある。『子どもたちに民主主義を教えよう――対立から合意を導く力を育む』だ。

この本では、子供たちに本当に身につけてほしい力として、対立から合意を導く「民主的な対話の力」の重要性を説いていく。

ぼくが特に印象に残ったのは、多数決の問題についての言及だ。

多くの学校では、物事を前に進めるために、話し合いの場で多数決を採用することが多い。多数決で勝った側の意見を採用し、負けた側は我慢してきちんと従う。多くの意見を聞いたうえでの決定なんだから、それに黙って従うことが民主主義のあるべき姿だと教わる。

そんな風に小さい頃から多数決の考え方にどっぷりと浸かってしまうと、大人になっても、何かを決める際は多数決で勝てばいいと考えてしまう。勝つために多くの味方を獲得し、相手を打ちまかそうと考える。選挙の仕組みなど、まさにその典型だろう。

だが、本来の民主主義とは、そういうものではない。それぞれが自分の立場や考えを捨てず、それでも共に歩んでいくために、どう合意を形成していくか。全員が納得する合意を形成するのは簡単ではないかが、それを模索していくのが民主主義の根幹を成す対話の力なのだ。

そして対話の力を養うには、小さい頃からトラブルを数多く経験し、対話によって解決する経験を積むしかない。本の中の文章を引用する。

「トラブルが起こらない社会」を目指すのが「心の教育」で、「トラブルが起きたときに解決できる人材がたくさんいる社会」を目指すのが「行動の教育」であり、民主主義教育です。だから、学びの機会を増やしてあげるためにも、トラブルは起きたほうがいいんです。小さな対立はいっぱいあっていいんです。

引用元:『子どもたちに民主主義を教えよう――対立から合意を導く力を育む』

まさに、ここで書いてあることを『きのくに子どもの村学園』は実践している。この本を読み、自分が大切だと思う教育のあり方への理解が深まった。

最近の学校ではトラブルが起こると、親が呼び出されて、親まで介入することが多いと聞く。でも、それは子どもたちから大切な学びの機会を奪っているのではないか。

トラブルを許容し、対立は学びの機会と捉え、対話の力を養う。そうした方向へと、学校教育が変わっていけばいいと改めて感じた。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。日記には、どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを書いています。子育てをするなかで感じた苦労や発見など、かなり個人的な話もあります。

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