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【マンガ専科本先出しnote】感動を作る演出を学ぶ

コルクラボマンガ専科」では、実際にマンガを描く力をつけられるスキルやマインドをお伝えしていきます。今回は、「演出」についてコルクラボマンガ専科の講師として登壇してくださった東京ネームタンクの代表・ごとう隼平さんのお話をお伝えします。

【本講座の講師profile】
東京ネームタンク代表 ごとう隼平
マンガ家として大手出版社に通いながら、日本の商業マンガの構造を10年に渡って研究する。その成果をマンガにかかわるすべての人に広めるため、2015年、マンガ教室・研究室「東京ネームタンク」を創立。
2017年、株式会社マンガ仲間を立ち上げ、代表取締役に就任。「東京ネームタンク」において年間200本を超える作品を生みだし、多くのマンガ賞受賞作や連載作家の輩出に関わる。

◆感動とは何か?

マンガのクライマックスには、感動を入れる必要があります。強く思いが高まるからこそ、そのマンガが自分にとってかけがえのないものになります。このクライマックスに向けた高まりを「演出」といいます。
今回は、この「演出」について分解してお伝えしていきます。

感動とは、何かにうち痺れたり心が震えたりする瞬間のことです。ポイントは、「楽しい!」とか「嬉しい!」とかシンプルな感情ではないこと。深い感動には、万感の思いともいえるような多彩な感情が入り混じるものです。

とはいえ、「感動とは、色々混在している感情」では再現性が低いので、ここでは私が分析した感動についての結果をお伝えします。

感動を分解すると、意外性・共感・カタルシス(解放)の三種類が含まれています。逆にいうと、この三種類を込めるように設計できれば、強い感動を生むことができるようになります。

【図1】感動は、意外性・共感・カタルシス(解放)

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◆感動の要素1 「発見」

【図2】「意外性=(発見)」のイメージ

図2

人は、何かに気付いたりそうなんだと思ったりした時に心が動きます。
【図2】のようにアメーバ的な存在で「意外性=(発見)」を表現すると、「この世界に何があるんだろう」とにゅるにゅると探し始め、自分ではない他の物体を「見つけた!」という状態です。

その「意外性」には、大きく分けて①できごとに対する意外性②感情に対する意外性の2つの要素があります。

① できごとに対する意外性
ストーリーの意外性で感動させること。映画でよくある「どんでん返し」などがその例です。映画とマンガの違いは、一気に全ストーリーを見るか、連載という形でぶつ切りで読むかということです。連載で読むマンガの場合、以前のストーリーを忘れてしまう可能性があるため、「どんでん返し」の大きさには制限があると考えています。

できごとに対する意外性の例
・伏線…伏線を回収して、「こことここがつながっていたのか!」と意外性を出す。
・第3の答え…「そういう答えがあるんだ!」という意外性です。「山に行くか、海に行くかを想定していたが、空に行くことになった」など。
・やらなそう→やる…やらなそうな人がやるんだという意外性。    
                            など

② 感情に対する意外性
登場人物に対して「そんな気持ちになるんだ……」と思う感情を描くことで、読者の意外性が生まれます。「感情」を伝えるためにマンガを描く!でもお伝えした通り、オリジナルの感情を込めることは非常に重要です。

例えば、『桃太郎』は「鬼を倒しに行き、実際に鬼を倒す」というシンプルゆえに意外性のないストーリーです。
では、そこに意外性を設計するとどうなるでしょう?

・できごとの意外性を追加では、実は「桃太郎は鬼が送り込んだ鬼の子どもだった」という設定にする。
・その場合、感情の意外性として、「鬼を倒した時には怒りと喜びと悲しみが混じりあった感情が湧き、『自分は誰にも理解されない』という孤独を抱いた」

以上のように描ければ、十分に読者を感動させられます。
こうした意外性の設計は、定番のあらゆるストーリーで試してみることができます。ワークとして、ぜひ取り組んでみてください。

【図3】『桃太郎』に「感動」を設計する

図3

◆感動の要素2 共感性=(理解)

【図4】「共感性=(理解)」のイメージ

図4

感動の2つめの要素は、「共感性」です。発見したものを自分の中に入れ、「こういう感じなのね」と納得することによって、喜びが生まれます。

「主人公の思いと一体化する」ということや、「登場人物の感情に共感する」といった瞬間のことです。

◆感動の要素3 「カタルシス」

【図5】「カタルシス」のイメージ

図5

感動の要素の「最後」は、カタルシス(解放)です。カタルシスは、排出や浄化などの意味で使われます。マンガでは、抑圧からの解放を描くことを意味します。
例えば、
孤独の心が救われた。
勝ちたいと修行を重ねていた結果、勝てた。
復讐の機会を狙っていて、ついにその瞬間を捉えた。
こうした瞬間が、カタルシスです。

「【マンガ専科本先出しnote】ストーリーのプロットを身につけよう」では、主人公にはわかりやすい「穴」を設けるとお伝えしました。主人公はその「穴」を埋めようと追い求めていく中で、抑圧され、苦悩します。そして、最終的にこのカタルシスの段階を迎え、感動を生みます。

カタルシスの例
・平和を求める主人公が世界を巡り、悪を倒し、平和な世界を実現する
・平和を求める主人公が世界を巡り、今回は平和にならなかったが、引き続き平和を求めることを誓う
(※求めたものが叶わなくても主人公や読者が受け入れればOK。)

◆コマワリを学ぶ

マンガでは、コマワリに落とし込んで「感動」を演出していきます。
慣れていないうちは、コマワリでつい物語の流れを説明したくなります。そうなると、ただただ説明的な絵が連続する魅力の低いマンガになってしまいます。

コマワリとは、ストーリーを説明するものではなく、紙芝居です。紙芝居をどう楽しむかというと、絵を見るんですよね。つまり、コマワリには「いい絵」を見せていかなければいけないんです。
それぞれの絵において、自分の絵について「ここをこうやって見せようとした」と説明できる魅力がなければいけません。

◆紙芝居に32枚の絵を入れる方法

マンガの第一歩は、ワクワクする「いい絵」だけを込めた32ページの紙芝居を作ることです。32ページはマンガの基本的な区切りです。(詳しくは、「ストーリーのプロットを身につけよう」を参照。)
その時に、いい絵を入れて読者を楽しませるんだったなと思い出していただきたいと思います。

ここで思い出してほしいのが、「感情」を伝えるためにマンガを描く!でお伝えしたことです。マンガは、「感情」を伝えていくものです。感情は、次のような順番で展開していきます。

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