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クリエイターにとって、「ゾーンに入る」技術とは何か

スポーツの世界でよく語られる「ゾ―ンに入る」という言葉。
日本語だと「無我」「忘我」という表現の状態。

極度のストレスがある状況下で、どうやって緊張感をコントロールし、集中力のスイッチを入れるのか。一流のアスリートたちはゾーンに入るために、どんな工夫をしているのか。

ビジネスマンやクリエーターにも、ゾーンの入り方がわかると役立つと思って、前回、『Badを食わせるが、学びたい気持ちを育む』というnoteでも紹介したスピードコーチの里大輔さんに再び話を聞いた。

若い時は、必死でプレーしてると自然とゾーンに入ることがあるかもしれない。だが、経験をたくさん積むと、自然とゾーンに入れなくなる。意図的にゾーンに入るための「技術」が必要になる。初めは、自分の意志が必要ない。けれども、途中からは意志の力が必要になる。

ゾーンに入るは恋愛に似てると思った。

恋は、落ちる。
愛は、育む。

恋は、自分ではコントロールできない。勝手に陥ってしまう。若い選手が、ゾーンに勝手に入るのと同じだ。一人でもできる。いや、一人で勝手に舞い上がっているのが恋だ。

愛を育むことは、勝手にはできない。しっかりと意志を持つことが必要だ。そして、自分を知り、相手を知る。2人が協力し合わないとできない。

多くの創作者が、処女作は夢中になって書くことができる。でも、幾つかの作品を書き終わった頃には、以前のように創作に没入できなくなる。デビューしものの、作家を長く続けることができない場合の多くは、ゾーンに入る技術を身につけていない。

恋愛もスポーツ選手のゾーンも創作のゾーンも、全て同じだ。

初めは、外部刺激で、勝手にゾーンに入る。慣れてくると、外部刺激では何も起きなくなる。自分を知り、他者、環境を知り、そこへ働きかける方法を知らなくていけない。

外部刺激から、どうやって自分の中に楽しみを見つけるのか。里さんが教えてくれた例が面白かった。

水を飲む。運動して、喉がカラカラの時の水が美味しい。これが、外部刺激で楽しんでる時だ。より美味しい水の飲み方を求めて、山に登ったり、いろんなことを試す。その試みには、飽きがくる。ゾーンに入れなくなる、恋が終わるように。

次に、毎朝、同じ時間に水を飲む。自分の体調によって、味が変わる。その微妙な変化を楽しむ。でも、その繰り返しも飽きてきてしまう。

その次にするのは、自分の中で、最も美味しく感じる状態を知ること。毎日、向き合う環境は変わる。その変化の中で、自分の体調を知り、環境との関係を調整し、毎日、同じ味を感じれるようにする。

この3段階目のフェーズになると、毎日が動的で、同じ繰り返しがないので、飽きることが来ない。

環境と自分の関係に注目できて、自分に働きかけができるようになると、毎日がすごく楽しいだろう。そのような感覚になっている人は、毎日、季節とともに変化し続けるのを明確に感じることのできる自然の中での生活は、最高のエンタメになるだろう。

金銭やフォロワーというわかりやすすぎる外部刺激が離れて、自分の身体と環境を元に作った独自ルールに毎日挑む。それが人生の究極の楽しさであり、その独自ルールを作ることがクリエイティブな行為なんだと考えている。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。

また、ぼくがどのようにして編集者としての考え方を身につけていったのかを連載形式でシェアしていきます。コルク社内の中堅社員にインタビューをしてもらってまとめた文章を有料部分で公開します。

今週は、インタビュー記事があがらなかったので、「創造力の捉え方(仮)」という今、僕が執筆している本の序文をシェア。

学ぶということは、スキルを身につけることだと僕たちは無意識で思ってしまう。学校では、学年ごとに学ぶことが決められていて階段状になっていた。仕事ができるようになるのも、学校での学びと同じようにスキルを身につけることだと思ってしまうのだ。

確かに、英語ができたり、医師免許があったり、司法資格があると、収入面で有利なことはある。資格や職業は、何らかのスキルを身につけていることを端的に示すものだった。

スキルの価値がなくなることはない。しかし、インターネットによって、どんどん相対的に下がってきてしまっている。

昔だったら、師匠の元で時間をかけて修行をしなければ身につけれなかった知識を、YouTubeで観て、自分で実践を繰り返すことで身につけれることがあるかもしれない。知識やスキルは、陳腐化が進んでしまった。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

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