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関係性の深め方

新年のはじまりの抱負は、「Do」ではなく「Be」で立てる。そのことを昨年は意識した。

具体的な行動の「Do」を抱負として定めると、変化が連続する中で、柔軟さを損ねてしまう可能性がある。変化にどのような態度で臨んでいきたいかと「Be」を意識した方が、のびのびと今を楽しめるのではないかと考えたからだ。

そして、昨年の年始、ぼくは「判断保留の態度」を抱負に掲げた。

すぐに反応しない。すぐにジャッジしない。「自分は既にわかっている」と思わず、判断保留の態度で、観察を続ける。

2023年は「関係を深めること」を抱負とする。

すぐにジャッジしないは、以前よりは意識できるようになった。しかし、よく知っていると感じてる相手に対しては、わかったつもりになってしまう。ジャッジをしないですらなく、ジャッジがすでにされている状態で関係を結んでしまっていないか。

ぼくらは新しく知り合った人に対しては、相手のことを深く知るために、積極的に色々と質問をする。一方、付き合いが長い相手に対しては、「今更こんなことを聞いてもな」とあまり質問しなくなる。新しい知り合いと関係を深めるのはできても、付き合いの長い人との関係を更新するための技術を実はぼくは知らないのではないか。

ぼくは、編集者として、たくさんの人と会い、関係を構築するのが得意だと思っていた。けれども、それは新しい出会い限定で、よく知っている人との関係の深め方は、盲点になっていた。

子育てをしていると、今の子どもをみて、将来を判断しても意味がないと痛感する。子どもが変わり続けているからだ。子どもとのコミュニケーションで失敗したと思う時は、子どもへの観察が足りなくて、ちょっと前のイメージで子どもに接してしまった時だ。

初心で相手を観察し、初めて出会いのように相手と接することができるか。

家族や仕事仲間のように、よく会ってる人たちと、一期一会の気持ちで接することができると関係が深めれるように思う。

「どのように初心で接し、関係を深めるか」が今年のぼくが取り組む課題だ。そして、関係を深めるためには、関係を編み直す場の設計が大事だと今は考えてる。小難しい言い方をしてるが、簡単にいうと、忘年会とか新年会とか、定例行事をしっかりやろうということだ。

会社員の頃は「仕事で結果を出したい」という気持ちが圧倒的に強く、忘年会のような場に参加するのはあまり好きではなかった。その時間があれば、仕事をしたいと思っていた。

でも、急がば回れ。「Do」から離れ、お互いの「Be」がさらけでるような場がある方が、チームとして働けて、結局、成果もでる。

年末にコルクで忘年会をしたのが、ぼくにとって社員との関係性を編み直す場となった。昨年は創業から10年が経ち、マンガ家の三田さんと小山さんに特別ゲストとして参加してもらった。ふたりと接する社員の振る舞いを見て、「みんな、三田さんや小山さんのことを心底尊敬しているんだな」と感じた。

編集者という仕事のやりがいをシンプルにまとめると、自分が心から尊敬している作家の創作に貢献できることだ。創作に貢献できるなら何でもやる。その楽しさを他の人にもお裾分けしたいという気持ちが、コルクを創業した理由のひとつになっている。

しかし、作品を好きになるのと、作家を尊敬するのは別の話だ。仮に『宇宙兄弟』が好きでコルクに入社したとしても、それだけで小山さんを心から尊敬はできない。小山さんを観察して、小山宙哉という作家が何を大切にしているかを知ることで、作家本人を尊敬して仕事をできるようになっていく。

忘年会でのみんなの振る舞いを見て、そうした働き方になってきていると感じられて、ぼくは嬉しい気持ちになった。『宇宙兄弟』のなかで、ムッタが自分と同じ感情を共有できる仲間と出会えた瞬間に「ここにいたんだ」と心の中で漏らすシーンがあるが、コルクのメンバーに対して思わずそんな気分になった。

こうした発見は、普段の仕事ではなかなか気づくことができない。言わば、仕事という「Do」を手放し、ただ一緒に時間を過ごすだけの場だからこそ、気づくことができたのだと思う。

「関係を深める」という言葉遣いをしたが、青臭さを厭わずに言うと、「愛し方を知る」ということかもしれない。

恋は落ちるもので、意志は関係ない。愛はするもので、意志を必要とする。愛は自然に生まれるものではなく、努力していくものだということをこの歳になり気づき、努力しようと思った年始である。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。

また、ぼくがどのようにして編集者としての考え方を身につけていったのかを連載形式でシェアしていきます。コルク社内の中堅社員にインタビューをしてもらってまとめた文章を有料部分で公開します。

限られたリソースで成果を出すには

このインタビューは、過去の仕事体験を話しているので、上の価値観とすごく違って、自分でも面白い。20代の時は、どうやって成果を出すかということを徹底して考えていた。

ドラゴン桜の巻末にはホリエモンをはじめ、塾講師や大学教授などさまざまな人へのインタビューを掲載している。

当時、マンガの単行本にインタビューを載せるのは、あまり例がなく、モーニングで出してる単行本だとほとんどなかった。そういうインタビューは、雑誌には載せても、本からははぶくものだった。「必要は発明の母」というように、困ってる状況を打破するために、なにか必要があって生まれるものだ。

最初のインタビュー相手は、参考書売り場の書店員へのインタビュー。
なぜ、有名人でもなく、参考書売り場の書店員なのか?この巻末企画は、読者サービスとドラゴン桜の販路を広げる作戦の両方を兼ねていた。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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