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イタリアで感じた、アーカイブに触れる価値

先週、イタリアに1週間の出張をしてきた。

福岡の糸島で活動している雲孫財団の活動の一環としてだ。滞在をコーディネートしてくれたのは、ヨーロッパで活躍してくれてるファッションデザイナー。イタリアの職人事情がよくわかる旅となった。

今回の旅の一番の目的は、ソロメオ村のクチネリの工場へ行くことだった。そこは美しくて素晴らしい場所だったのだけど、もっと心に残ったのはフィレンツェ郊外にある、ファッションデザイナーたちが自前で作り上げた、ミリタリー服に特化したアーカイブだった。ヨーロッパだけでなく、日本の特攻隊の服など、世界中の軍服が集められていた。

そのアーカイブの始まりは趣味だったのだが、今ではビジネスになっている。一般には開放していないが、プロのファッションデザイナーたちが、見学にやってきて、服をレンタルする。そして、デザインの参考にするのだ。

その服のレンタルだけでビジネスとして成立するくらい、ファッションデザイナーはアーカイブを見ながら、新しいデザインの発想を行う。

ぼくはいつも創作は真似から始まると言ってる。発想の始まりが、過去の名作や神話なのはよくあることだ。「ドラゴンボール」は、「西遊記」と「南総里見八犬伝」がインスピレーションの元になっている。最終的な物語は、全く違うものになっているが、スタートは古典の型を使っている。

本は中身を一瞬で、大量にみるということが簡単にできないため、アーカイブをみることをあまりしない。数作品を参照にするということとアーカイブを参照にするということは、似ていても全く違うことだと今回、気づいた。

アーカイブを見て、気になる服を数十着抜き出す。それは、偶然目に入ったものを適当に選んだだけのよう感じるかもしれない。しかし、それは、その時の時代の空気でなんとなくいいと思ったものを選んでいる。

一年後にやってくると、なぜか違うものを選ぶ。時代の影響を受けて、自分でも無意識変わっている、いいと思うものの変化に気づくことができる。

世の中に完全に新しいアイディアや発想はない。では、何がパクリやパロディで、何が新しいアイディアなのか。

こんな風に言ってる学者がいる。「新しい研究とは、結びつきを見つける行為だ」と。どんなに斬新に見える研究の切り口も、先行研究は必ず存在し、それを探すことが研究の第一歩になる。「前例がない」と主張する論文で、素晴らしいと思えるものは見たことがない。思考が浅い時に、前例がないと主張すると。

創作のアイディアも一緒だ。先行作品がないアイディアは、まだ思考が浅いだけだ。そして、一見、結びつきそうにない複数のアイディアが結びついてる時に、それは新しいものとなる。

「西遊記」と「南総里見八犬伝」という中国と日本の王道の2つを堂々と掛け合わせ、結びつけたことで、さらなる王道の「ドラゴンボール」が生まれた。

本にも服のようなアーカイブがあればいいのに、と思いながら、ふと思いついた。Kindleで本を読み続けていても、企画は深まらない。書店をふらふらと歩いていて、違うジャンルの本を買っている時に、急に企画が思いつく時がある。

本の企画を考える時は、わざわざアーカイブのある特別なところに行かず、書店に行けばいいのだ。そういう点でも、書店が街中に存在するのは、電子書籍では代替できない価値があるとぼくは改めて思った。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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