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創業から10年。目指す経営者像が全く変わった

コルクを創業してから10年が経った。

この10年で、僕の中で経営者像が大きく変わった。創業当時、経営者とは何をする人なのかを僕は全くわかっていなかった。今もわかっているかはわからない。でも、10年前の自分は、全くわかっていなかったことだけは、わかるようになった。同様に、「リーダーがどんな存在なのか」も、以前とは全く違う考え方をするようになった。

創業時からコルクは、「プロフェッショナルな編集者集団」になりたいと思っていた。メディアを運営する編集者ではなく、クリエイターの創作活動をエージェントとして支える編集者だ。

創業当時と比べると、YouTuberやVTuberを筆頭に、インターネットを舞台に活躍する新しいクリエイターがどんどん生まれている。マンガ家や小説家はだけでなく、新時代のクリエイターも含めて、コルクは「物語を作る人たち」の価値を最大化したい。

では、そうしたプロフェッショナルな編集者集団となるために、経営者であるぼくは、どうあるべきか?

ぼくが率先して、トップを走り、リードしていく。それが経営者としても、リーダーとしてもあるべき姿だと思っていた。「率先垂範」。この四字熟語を何度も頭に思い浮かべた。

それで、毎朝、オフィスを自分で開け、電気をつける。自分で仕事を数多くこなし、結果を出し、会社として利益を上げていく。ある種、自分の編集力に会社の命運がかかっていると捉えていた。

でも、これでは自分のコピーロボットを作っているようなものだ。ぼくが考えるプロフェッショナルな編集者集団とは、一人ひとりの編集者が個性を発揮し、ぼく一人では想像もつかなかったような面白い企画が続々と生まれるようなチームだ。

理想と現実のギャップから、チームビルディングについて真剣に勉強するようになった。また、自分自身の社内での振る舞い方や、どういう距離感で社員と接すべきかを定期的に見直すこともはじめた。

そうしたことを試行錯誤するなかで、「経営者である自分は、その集団の先頭にいない方がいいのでは」という考えが生まれるようになった。

このnoteでも何度か取り上げている馬の研修がある。そこには馬が三頭いる。それを観察して、リーダーを推測する。ある人は、率先して動く馬をリーダーだと思う。ある人は、最後にゆっくり動く人をリーダーだと思う。自分が一つのリーダー観に捉われていたのだと自覚できたタイミングだった。

例えば、プロ野球チームで考えてみると、グラウンド内でチームを優勝に導くために選手を束ねていく監督の他に、グラウンドの外でチームが求めるものを適切に補強していくゼネラルマネージャー(GM)がいる。

最も有名なGMのエピソードは『マネー・ボール』で描かれたビリー・ビーンだろう。独特の理論をもとに他球団で埋もれていた選手たちを集め、彼らの強みを発揮させることで、GMの立場からチームを改革していった。

チームとして結果を出し続けるには、グラウンドの内外からチームに揺さぶりをかける監督とGMのどちらの存在も欠かせない。そして、このふたつの役割は補完関係にあり、それぞれの役割を越境してはいけない。GMが監督の采配に口出しをし始めたら、チーム全体の人間関係が混乱し、こじれてしまう危険性がある。

チームが結果を残すために、チームを引っ張っていくのが監督だとしたら、チームを後方から見守っていくのがGMかもしれない。

ぼくのあり方を振り返ると、これまでは監督兼選手としてチームを引っ張ろうという考えが強かった。でも、現在は監督的な立ち位置でチームを任せられるメンバーが育ってきたこともあり、GM的な立場でチームと接することが経営者である自分の役割だと最近は考えている。

リーダーとして、組織の動きを遠くから見守る。そして、動じない。本当に必要な時だけ動き、とことん見守る。それも、ある意味、リードだ。そして、経営者とは、場を作ることなのだと思う。人が人によって磨かれる場を作る。

ぼくが今、抱えている問いは、どうすればクリエイティブな人が育っていく場を作れるのかだ。その問いと向き合うことが、経営者としてのぼくの役割だと思っている。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。日記には、どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを書いています。子育てをするなかで感じた苦労や発見など、かなり個人的な話もあります。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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