鍛えるべきは美意識と観察力。 クリエーターとして表現を磨くための「マインドセット」とは?
編集者として新人マンガ家を担当する時に、必ずぶち当たる壁がある。それは、どうやって「表現力」を上達させるかだ。
どんなに面白いストーリーを考えられたとしても、表現力が乏しければ、物語の魅力は伝わらない。表現力を磨くために、何が大切なのか? 表現力が伸びる人と伸び悩む人の差とは何か? その答えをずっと考えてきた。
プロマンガ家を育成する『コルクラボマンガ専科』のカリキュラム作成にあたり、改めて様々な人と議論を重ねるなかで、小手先の技術より、そもそもの「心の姿勢」が表現力に大きな影響を与えることが見えてきた。
そのためマンガ専科では、クリエーターとして表現力を磨くための「マインドセット」をテーマとした講義をしている。以下は、ほぼ変更なしの書き起こし原稿です。
★ 第1回『プロのマンガ家になるとは?』はコチラ
★ 第2回『クリエーターとして生き残るためのSNS戦略』はコチラ
※ 現在、『コルクラボマンガ専科』は第2期を開催中。第3期への参加に興味のある方は、こちらに登録いただければ、最新の情報を送ります。
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センスがある人って、どんな人?
はじめに「センスとは何か」をお話します。
みなさん、センスってなんだと思いますか? どの業界でも「君はセンスがあるね」みたいな会話ってありますよね。でも、センスという言葉の定義は、人によってバラバラです。
僕がセンスを定義するとしたら、センスがある人とは「2歩先のことを掴める人」ではないでしょうか。
「1歩先」だと、アンテナが高いとか、流行の最先端を行っているだけ。
「3歩先」だと、「未来すぎて、ついていけない…」と言われてしまい、周囲から理解されない人になってしまう。
だから、大衆が向かう「2歩先」。流行りの少し先をキャッチできる人が、センスがいいと思っています。
流行には巻かれろ。そしてルーツを勉強しろ!
じゃあ、センスをどうやって磨いていくのか? その方法をひとつ伝えます。
まずは、今流行っているものを取り入れてみてください。
「流行っていて嫌だな」「みんながやってることなんて、やりたくないよ」という気持ちもあるかもしれません。でも、流行っているものには、流行るだけの理由がある。みなさんは、これからマンガで流行りを作りたいわけですから、その理由を考えてみましょう。
そして流行りに触れた後は、必ずルーツを勉強してください。
たとえば、パンケーキが流行っていたとします。そうしたら、まずは流行りのパンケーキ屋を体験してみましょう。そして、その後に老舗のパンケーキ屋にも行ってみてください。
ルーツと思われる店と、流行りの店の両方に行くと、ある種の「進化論」がわかります。原点から、どのように進化して、今の流行りに至っているのか。最新と古典を結ぶと線が生まれ、その線の伸びる先の「未来」がだんだんと見えてくるはずです。
音楽、ファッション、マンガ、どれも同じです。原点を知り、流行りを知り、未来を見つめる。それを繰り返すことで、どんどん線がシャープになっていって、二歩先をつかむ精度が磨かれていきます。
そういう意味で、まずは流行りに思いっきり飛び込んでみる。羞恥心、先入観を持たず、流行りで遊んでみるのは、センスを磨くために非常に重要な行為です。
「苦手」という言葉に逃げ込んでないか?
では、本題に入りましょう。
今日の講義で得てもらいたいのは、イラストの小手先の技術ではありません。これから技術を高めていくための「考え方」「姿勢」について伝えていきます。
大切ことは、先入観をできるだけ捨てることです。
みなさん、何かしら「苦手意識」を感じるものがありますよね…? 人前で話すのが苦手とか、文章を書くのが苦手とか。
以前、ある知り合いに「苦手なものって何?」と聞いたんですよ。すると彼は、即答で「女性を口説くのが苦手です」と言ったんです。
それで、僕はもう一度こう聞きました。「それって、何回挑戦したの?」と。
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