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僕が妻と喧嘩をする理由

僕と妻は、ほとんど喧嘩をしない。

だけど、ごくたまにする。する時はたいてい同じで、何かを購入する時だ。

僕は、何か欲しいものがある時、まず買う。その商品を選ぶ理由は、なんとなく。それを使う中で不満が出てくるから、解決できる製品を調べる。そして、その不満を解消してくれるものを次に買う。 

一方、妻は先に調べる。何時間もかけて、様々なレビューを読み、どれが一番いいか調べ尽くす。それでもまだ悩んで、僕にどれがいいかを聞いてくる。仕事で疲れ果てて、半分寝ている僕に。

もちろん僕 は「どれでもいいよ、好きにして」と答える。そうすると「私だけが悩むのはおかしい。一緒に悩んで決めてよ」と喧嘩になる。僕には何が決め手になるのか全くわからなくて、買ってから悩めばいいと思うから、買う前だと一緒に悩みたくても悩めない。いつまでたっても話は平行線のママだ。

長男は、顔や表情、兄弟ゲンカの仕方まで僕と似ている。だから、 思考法も僕と一緒なのだろうと思っていた。 ある日、息子が急に表をもってやってきた。そこには、お年玉を使って飼いたいものリストが書かれている。

クワガタ、鳥、猫、魚を飼った場合のいい所と悪い所が、表に書き出されている。それで、その表を見ながら、一緒にペットショップへ行き、何を飼うのか決めることにした(息子3人の世話でも大変だというのに、猫を飼う勇気などはなく、うまく猫の選択肢がなくなるように誘導した)。

色々な動物がいる大きいペットショップは都心にはなく、郊外まででかけた。 1時間近く悩んで、昼ご飯を食べて、再度ペットショップに戻って、 鳥にすることに決めたのに、その日は結局買わなかった。

僕だったら、絶対にその日に買ってしまう。 びっくりしたのは、また1週間くらい後に、鳥は鳥でも、文鳥なのか、インコなのかと鳥を種類にわけて表をつくっていて、それぞれのいい 所と悪い所を説明された。

当時幼稚園生だった長男は、鳥の飼い方と いう本を繰り返し読んでいて、その中味を理解するために、すごい勢いで漢字を覚えた。 それで、鳥専門店へ行き、何を飼うか悩んだ。その時も店で散々悩み、 昼ご飯を食べに行って悩んで、それでやっと文鳥を購入した。

ものを買うときの行動パターンが、僕じゃなくて、完全に妻と一緒だ。 それだけ時間をかけて飼うようになった文鳥だというのに、名前は「ぶんちゃん」だ。全く迷うことなく、適当に名前をつけていた。僕だったら、名前をどうするのかというところに時間をかけて悩む。 息子が3人いると、3人とも行動パターンが違う。

年月をかけて形成されていくわけでもなく、初めから決まっている。子育てをしていると、遺伝子の影響力の大きさに驚く。そして、僕の息子ではなく、僕と妻の間にできた息子なのだということを実感する。

息子はお年玉で、文鳥と鳥かごを自分で買ったことで、お金の力というものを何となく理解した。文鳥のために、色々なものを追加で買いたくなる。

また驚いたことに、息子は買ってくれと頼むのではなく、どうやってお金を稼げばいいのか、方法を教えてほしいと聞いてきた。その後、妻と話し合ったらしく「ユーチューバーかプログラマーにはどうやったらなれるのか?」と聞いてきた。

僕らの時代であれば、お金が欲しければ、お手伝いをして、お小遣いをもらうしかなかった。実際、小学生がユーチューバーとして稼ぐのはかなり難しいかもしれない。しかし、インターネットの中ではどんな人間にも可能性がしっかりと開かれているのだ。時代の大きな変化を、子供に稼ぎ方を教えようとして、改めて感じた。

子育てをしていると、些細な気づきがたくさんある。子供が生まれる前は、一緒にゴルフをしたり、映画をみたり、食事へ行くことが僕と妻の共通の喜びだったが、今は日常の驚きを共有し合うことが最大の喜びだ。

(エッセイ・2017年6月1日執筆 / トップ画像イラスト:秋野ひろ

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上の文章は、以前に「ベビモフ」というWebメディアで、僕が連載していた子育てに関するコラムを転載したものだ。当時は、子育てをしていて感じる自分の思いや感情を忘れないために書いていた。

連載自体は終了しているのだけれど、コルクラボのメンバーから、僕が子育てについてどのように考えているかを知りたいとリクエストを貰うことが度々あり、noteマガジンに転載することにした。

また、これをきっかけに現在の僕が育児・家庭について感じていることを記録しておきたいと思い、コルクラボのメンバーにインタビュー形式で考えを引き出してもらった。思いっきり本音で話していて、一部の言葉だけで誤解を産みたくないので、クローズな形で。

今回のテーマは、「子どもに対しても、パートナーに対しても、自分とは全く違う人間であるという前提で向き合う」です。

★月額800円の noteマガジン「週刊!編集者・佐渡島の好きのおすそ分け」の読者は、そのまま、お読みいただけます。


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