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互助が生まれるコミュニティの原風景

コルクのバリューの一つが「さらけだす」だ。

さらけだすは、自分のプライベートや秘密を話すということではない。自分の大切にしている価値観を仲間に共有しておくということだ。

チームで働く時、何を伝えておくと細やかなサポートがしあえるのか、設計しきることができない。だから、雑談などで日常的にいろんなことを話しておくことが実は仕事のために大切だと思ってる。

ぼくは親戚付き合いを大切にしている。

そんなに大切にしているという意識はなかったが、年間でスケジュールをかなり優先的にとっていて、大切にしているのだと意識に上がってきた。

父方の「佐渡島家」は、昔から毎年の正月や夏休みになると、親戚一同で家に集まったり、旅行にでかけていた。家に集まると、黒門市場で買ってきたネタで手巻き寿司大会が行われた。その後、景品を競い合うビンゴ大会やルーレットと一連の流れが決まっていた。子ども時代のぼくはこの集まりをかなり楽しみにしていた。

この集まりを仕切ってくれたのは、今は亡くなってしまった祖母だ。

祖父は若い時にガンになり、仕事はできなくなった。それで、祖母が代わりに働くようになり、起業した。鰻の佃煮屋から始まり、駐車場経営、保険の代理店とピボットをしていき、保険の代理店に落ち着いた。今もまだ残っている。もしもどんな保険に入ろうか悩んでいる人がいたらぜひ。(笑)

すごく行動力があり、免許の制度が整う前から車に乗ってたから、何も試験を受けずに免許をもらえた、とよく言っていた。保険の代理店がうまくいき、祖母は義理の娘たちを雇いながら、仕事を大きくしていった。ゴッドファーザーならぬ、ゴッドマザーといった感じで、孫たちを集めて、賑やかに親戚の会を開いていた。

そんな風に、親戚同士が集まる機会が多かったので、従兄弟同士も自然と仲良くなった。セーフィーを起業した同い年の従兄弟の佐渡島隆平と、お互いに刺激を与えあいながら仕事しているのも、祖母の存在が大きい。

祖母が亡くなってから、こうした親戚の集まりも失われがちだったのだが、隆平が「おばあちゃんに倣って、親戚を集めて一緒に過ごしたい」と言い出した。そして、逗子の小さなホテルを貸し切ってくれて、親戚一同を招待してくれた。従兄弟とその子どもたちも一緒だったから、総勢34名という大所帯だった。

面白いと感じたのが、子どもたち同士の仲の深まり方だ。

はじめて会う相手もたくさんいるのだけど、ぎこちない時間は短かった。息子たちに付き添って、子どもがたくさんいるところにいくことがある。そんな時に、子ども同士でもなじむのに意外と時間がかかるものだなぁと思うことが多々ある。

親戚である。その一点だけで、信頼感や安心感が生まれ、仲良くなるのが早い。当たり前と言えば当たり前なのだけれども、不思議なように感じた。

母方でも、親戚の集まりが定期的に開かれている。

母の旧姓は高橋なのだが、母の母方が岩田家で、その親戚を集めた「岩田会」というのが定期的に開催されている。

アスクルの創業者である岩田彰一郎さんも、この岩田会の中心だ。ぼくがコルクを起業する時には、岩田さんに色々と相談をさせてもらって、ものすごくお世話になった。隆平がセーフィーを起業する時にも、岩田さんを紹介し、それが縁で今はセーフィーの社外取締役をしている。

共通点は親戚というだけ。趣味嗜好などは違うから、誰もが全く違う職種についてる。岩田会のメンバーで協力しあうだけで、相当多くの業種のことがわかるなという話になった。親戚というだけで、仕事を一緒にすることへのハードルが下がる。ネット上で誰とでも繋がれてしまうからこそ、閉じてる関係の安心感がある。

おそらく、地方から出来てきた人たちで結束する県人会も、昔は似たようなものだったのではないだろうか。同じ地元出身というだけで、お互いに信頼感情が湧いてきて、互助の精神が働いていく。華僑やユダヤ人の集まりとかも同様だろう。

ぼくにとっては、コルクラボも似たようなものだ。コルクラボに参加しているというだけで、信頼感情が無条件に湧きやすい。コルクラボで大切にしたい姿のひとつである「互助が自然と生まれるコミュニティ」とは、親戚同士や県人会のような集まりにイメージとしては近いのかもしれない。

互助の精神が存在するコミュニティに複数所属していると、人生で何が起こっても「何とかなるだろう」と思いやすくなる。

コミュニティの本を書いたり、コミュニティについてそれなりに考えてきたつもりだったけど、ぼくにとっての「コミュニティの原風景」は親戚同士のつながりにあることに今更ながら気がついた。

親戚の繋がりは、結婚か子どもが産まれるかしないと増えていかない。コミュニティが増えるのがすごくゆっくりだ。ネットでどんどん早く、誰とでも繋がる社会だからこそ、その「ゆっくりさ」が価値なのだと気づいた。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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