アサーションを学ぶと、「さらけだす」が上手くいく
コルクでは行動指針のひとつに「さらけだす」を掲げていて、この「さらけだす」という考え方について、ぼくのnoteでは何度も触れてきた。
なぜかというと、「さらけだす」は誤解を受けやすいからだ。
自分の恥ずかしいことや、他人に知られたら嫌なことを、思い切ってオープンにしていく。それが「さらけだす」だと受け止められることが多い。
勇気を持って話したくないことを話したら、周りがひいてしまって、傷ついてしまい、「2度と話したくない」と逆に頑なになってしまうこともある。
作家との打ち合わせで、「キャラをもっと立てよう」という言葉も、同じような誤解が起きやすい言葉だ。大抵の場合、すごく変な人物になってしまって、リアリティもなければ、感情移入もできないキャラクターになってしまう。
キャラが立っているとは「記憶に残りやすい」ということだ。突飛であると確かに記憶に残りやすいかもしれないが、好きになるのは難しい。読者が好きになれるのは、「自分と同じ」だと共感できる要素を見つけたからだ。その人物の特徴が分かりやすく演出されていると、共感できるポイントを見つけやすく、記憶に残りやすい。
さらけだすの場合は、「自分が大切にしているこだわり」や「自分が欲しているもの」など、自分のコアな価値観を相手と共有することを意味する。
自分のキャラを周囲に理解してもらって、どんな判断、行動をするのか予測できるようにするためにさらけだすのだ。その方がチームとして協力しやすい。
何も伝えずに、相手に自分の価値観を察してもらうのは無理だ。相手は自分と全く違う考え方をしていることを前提とし、自分が何を欲し、何を大切にしたいかをさらけださないのは、相手への不親切とも言える。
お互いを深く理解し、仲間として協力しあうための関係を築く。
そのために「さらけだす」は欠かせない。
ただ、ここで重要なのは、何でもかんでも「さらけだす」をすればいいわけではないことだ。
自分の考えを伝えようとするあまり、ストレートすぎる表現になってしまったり、自己主張の圧が強すぎたりして、攻撃的なコミュニケーションになってしまう可能性がある。こうなっては深い相互理解など望めず、本末転倒に陥ってしまう。
そこで「さらけだす」とセットで捉えてほしい概念がある。
「アサーション(assertion)」だ。
アサーションとは、相手を尊重しつつ、自分の意見を主張するコミュニケーション方法を意味していて、アメリカから入ってきた概念だ。1970年代の公民権運動がきっかけとなり、人種差別を背景としたコミュニケーション課題を解決するため、相手を尊重する自己表現手法が生まれたと言われている。
自分の思っていることを伝える時に、相手を気遣うあまりに、結果的に自分が傷ついてしまう。また、自分の言いたいことをそのまま伝えて、相手を傷つけてしまうようなコミュニケーションではうまくいかない。
アサーションでは「表現する」「伝える」といった要素も大切にしながら、「傾聴する」「対話する」といった要素も同じくらい大切にする。伝え方、聞き方、話し合い方。これらを包括的に、アサーションの考え方で見直して、コミュニケーションを健全なものへ変えていく。
アサーションについての本を幾つか読んできたが、ぼく個人としては、この『夫婦・カップルのためのアサーション』が一番理解しやすかった。
夫婦やカップルだと、一緒にいる時間が長くなるので、つい相手に「察してほしい」「さすがにわかるでしょ」という態度になりがちになる。そうしたなかで、自分の感じていることや望んでいることを、相手を尊重しながら、どう伝えていくか。そうした内容が書いてある本だ。
アサーションの本を読んだからといって、アサーションがすぐにできるようになるわけがない。アサーションの考え方を自分に馴染ませ、様々な場面で応用していくことが重要だと、ぼくは考えている。
アサーションを意識しながらコミュニケーションをとり、相手からのフィードバックを伴った振り返りをしながら、コミュニケーションスタイルを少しずつ変えていく。そうした地道な継続が大切になるだろう。
ぼく自身、自分がアサーションができているとは全く思えない。だが、意識して行動するのとしないのでは、全然違うだろう。
コルクのみんなの「さらけだす」への理解をより深めるために、このアサーションという概念を社内で広げていきたい。
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コルク佐渡島の『好きのおすそわけ』
『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…
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