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人が動くのは、アクションではなく、リアクション

「人を動かす」「人が動く」

この言葉の差について、ずっと考えている。

僕は、イソップ寓話の『北風と太陽』をよく思い出す。

北風がやったように、力技で相手を動かそうとすると、逆に相手の心は閉じてしまう。「やりたい」と思っていたことも、他人から押しつけられると、醒めた気持ちになってしまう。太陽がやったみたいに、相手が自ら動きたくなる接し方とは何か?  

そんなことをずっと考えてきて、こちらのアクション、発信の精度をあげようと努力していた。

でも、太陽的な行為とは、アクションではなく、リアクションなのかもしれないと考えるようになった。

それは、馬から教えてもらった気づきだ。

先日、「馬に学ぶリーダーシップ研修」という2泊3日のプログラムに参加してきた。

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馬と意思疎通を図るなかで、自分のリーダーシップスタイルを自覚していくのだ。馬と共にする研修は、スタンフォード大学やスイスのIMDでも取り入れているらしい。今回、友人の経営者を誘って、一緒に研修を受けた。

馬は繊細だ。

広い視野があり、聴覚・嗅覚が優れている。20メートルくらい離れた場所にいても、人間が指を少し動かしたことに気づき、反応を見せたりする。100メートルくらい離れていても、手を振ったりすると反応するそうだ。逆にいうと、こちらの一挙一頭即まで監視されている状態で、わずかな動きも見落とさない。

この繊細である馬と意思疎通を図るのが、実に難しい。

馬と一緒に散歩をしようと思っても、馬場の中に戻そうと思っても、全然言うことを聞いてくれない。大きく身振り手振りをしたり、大声を出したりしても、ちっとも動いてくれない。初めは鞭を使わないと、こちらの意図通りの行動をしてくれなかった。鞭で、馬を動かした。

みんなで試行錯誤する。だんだんと鞭を使わず、離れたところにいても一緒に動くことができるようになっていった。

その差は何なのか?

こちらからアクションするのをやめたのだ。

馬の様子をしっかりと見て、耳がピクっと動いたり、首が少し曲がったりと、馬がちょっと動くたびに、こちらも動く。馬が動かない時は、こちらも動かない。馬が首をこちらに向けた時だけ、馬に近づく。

そんな風に、馬の反応に合わせて、ただただリアクションを重ねていく。そうしてリアクションする中で、こちらが望んでいることを少しずつ促す。そうすると、鞭を使わなくても、こちらの意図を汲んで、馬が少しずつ自分で動き出す。

相手のアクションに対して、リアクションをしていく。リアクションの中に意図を少しずつ込める。込めた意図が、お互いのアクション・リアクションのサイクルの中で増幅していく。もはや、動き出した時には、馬が僕を動かしたのか、僕が馬を動かしたのか。主従がわからなくなっている。

この気づきは、仕事や子育てにも当てはまる。

僕は、自分の主義・主張が強い方だ。「こうしたい」「こうすべき」をはっきりと伝える方が、コミュニケーションにおいてはいいと認識していた。でも、自分のアクションによって相手を動かすのではなく、相手へのリアクションを重ねるなかで自分の意志を伝えるほうが、無理のないコミュニケーションをうむ。

ノンバーバルコミュニケーションを身につけたい、と強く思った。僕の意図は、言葉だから遠くの人には届く。しかし、言葉に頼りすぎているせいで、近くの人には強制のように感じてしまう。馬と接した時のように、表情や仕草など言葉以外から相手を観察することが、ノンバーバルコミュニケーションの第一歩だと思った時に、『徒然草』のこんな一節を見かけた。

【現代語訳】第百九十四段

世界の道理を知る人が、人を見る目は、寸分の狂いもない。

例えば、ある嘘つきが出任せをでっち上げ、世に広め、人を騙そうとしたとする。
ある人は、素直に真実だと思い、馬鹿正直に騙される。
ある人は、洗脳までされて、話に尾鰭と背鰭をつけ、ますます面倒にする。
ある人は、話を聞いても上の空。ある人は、少しおかしいと思って、信じるでもなく、信じないでもなく、曖昧にしておく。
ある人は、あり得ない話だが、人の言うことだから、そんなこともあるかも知れないと思考を停止する。
ある人は、知ったか振りをして得意げに頷き、笑うのだけど、実は何も理解していない。
ある人は、嘘を見破るのだが、「なるほど、こんなことか」と思い、自信がなくなる。
ある人は、嘘だと知りながら「別にどうでもよい」と手を叩いて笑う。
ある人は、嘘だと知っているが、何も言わず、知らん振りを決め込み、知らない人と同じ態度でいる。
ある人は、嘘だと知りながら、何も追及せず、自らが嘘つきに成り代わって、人を騙す。

嘘つきが人を騙す事でさえ、それが嘘だと知る人には、答える言葉や顔つきで、話の理解具合が分かってしまう。まして、世界の道理を知る人が見れば、我々みたいな悩める子羊は、手のひらを転がっているようなものだろう。しかし、戯れ言の推察のようなことを、仏の教えに応用してはいけない。

※引用元:https://tsurezuregusa.com/194dan/

嘘つきと出くわした時の、リアクションを10パターンに細かく分類している。これがすごく面白いのは、嘘つく人の特徴ではなく、嘘つきと出会った時に、人々がどんな風に反応するかを観察していることだ。こちら側を観察している描写は、読んだことがない。

馬を見ている時も、皮膚の痙攣、首の向き、耳の方向を意識すればいいとわかると、リアクションが取りやすくなった。人の場合は、表情以外にどこに注目するといいのか。

どうすると観察がうまくなるのかを日々考えている。

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