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先人そのものではなく、先人の見ていた「対象」を見る

佐渡島庸平(コルク代表)

去年あたりから、「引き継ぐ」という言葉について、よく考えるようになった。

以前に投稿した『人生を通じて、自分は何を「引き継ぎ」たいか?』というnoteにも書いたが、全く新しい何かをゼロから創りだすことは基本的に起こり得ないとぼくは考えている。

創作にしても、ビジネスや研究の世界にしても、先人たちからの影響を受けて、現在の自分たちは世界を見ている。自分たちに影響を与えた先人たちには、彼らに影響を与えた先人たちが更にいて、その繋がりは歴史の中でどこまでも続いていく。

自分は何を引き継ぎ、そして、次の世代に何を引き渡したいか。

そういう風に考えていくと、先人たちへ感謝の想いが自然と湧いてくる。謙虚な気持ちでいられ、長期目線で物事と向き合えるようになる。

この「引き継ぐ」について考えるにあたり、重要と思うことがある。

それは、先人たちが見ていた「対象」を見ることだ。

彫刻家の外尾悦郎さんという方がいる。ぼくの直接の知り合いではなく、石川善樹から聞いた話だ。

外尾さんはアントニオ・ガウディの意志を最も深く受け継いでいると言われていて、200人以上の建築家や彫刻家が関わっているサグラダ・ファミリアの建築において、最も長期間勤め続け、重要な仕事を任されていた存在だ。

外尾さん曰く、ガウディのことを一生懸命に研究しても、ガウディが何を考えていたかわからなかったそうだ。それよりも、ガウディが見ていた対象、自然を見て、彼のやりたかったことは何かを考えることができるようになったらしい。ガウディは、自然を建築で再現しようと挑戦していたのだ。

それで石川善樹は、企業のコンサルも同じスタンスでやっているという。

長い歴史をもつ会社のパーパスを再構築する際、亡くなってしまった創業者の考えをどう理解すればいいかという相談をもらうことがあるそうだ。

そういう相談に対し、亡くなってしまった人が何を考えていたかを一生懸命に考えてもわからないので、創業者が見ていた景色や影響を受けたものに、現代に触れ直す。そうすることで、創業者と同じ方向を向けて、考えていたことが自然とわかるようになると。

これは、創作においても同様だ。

先日、『ストーリーメーカー』など多くの物語創作論の本を書いている大塚英志さんと話をさせてもらう機会があった。大塚さんは大学でマンガの講義をしていたことがあり、その内容を聞かせてもらった。

その講義では、生徒は自分が尊敬するマンガ家をひとり決める。そして、そのマンガ家のインタビューを読み漁り、その作家に影響を与えた10人を調べる。次に、その10人の作品を読み込んでいく。

すると、自分の尊敬しているマンガ家の作品を改めて読んだ時に、受け取れるものが全く変わる。その作品が、その作家が触れてきたものによって出来ていたことに気づくのだ。

先人そのものでなく、先人が見ていた対象を見ることで、同じ方向を向く。そして、先人の考えを深く理解する。一世代ではなく、二世代前を見ることで、一世代前のことが理解できる。

先人たちの積み重ねのうえに自分はいると捉え、先人たちの見ていた方向を知ろうとする行為は、クリエイティビティを広げる発想だと感じる。

僕は編集という行為をアップデートしたいと思っている。編集の歴史を知りたいと思うのだけど、誰が、最古の編集者なのだろう?全く手がかりがない。もしも、知っている人がいたら、教えてほしい。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。日記には、どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを書いています。子育てをするなかで感じた苦労や発見など、かなり個人的な話もあります。

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『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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佐渡島庸平(コルク代表)

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佐渡島庸平(コルク代表)
コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。