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自分を無価値と感じる人は、「問い」の立て方に問題あり

いろんな新人マンガ家と接する中で、いつも疑問に思うことがある。

次々とネームを描ける人もいれば、立ち止まってしまい、ネームに手がつかない人もいる。もちろん、成功する可能性が高いのは前者だ。アウトプットを繰り返す中で、様々なフィードバックを得て、自分の気づきに変えることができるからだ。

でも、どれだけアウトプットが大切かを伝えても、立ち止まってしまう人の手を動かすことはできない。彼らも何もしていないわけではない。一生懸命にネームを考えてはいる。でも、その中身がなかなか思いつかない。

最後は、これだけ考えているのに、ネームが思いつかないから、自分はマンガ家として才能がないのではないか…と思い悩んでしまう。まさに負のスパイラルといった感じだ。

それで、何を考えているのかを聞いてみると、頭の中で漠然とした壮大な「問い」を立ててしまっていることが多い。

「壮大なテーマから考えるな」

これは『ドラゴン桜』『インベスターZ』のマンガ家であり、ぼくの企画の先生でもある三田紀房さんがいつも話している言葉だ。ドラゴン桜では「教育とは何か」、インベスターZでは「お金とは何か」という壮大なテーマを扱っているのに、どういうことなのか?

その理由は、壮大なテーマを描こうとすると、身構えてしまい、いつまでも描きはじめれないからだ。

ドラゴン桜は「潰れそうな学校って、どうやって再建したらいいかな?」が打ち合わせの始まりだった。インベスターZも、アメリカの大学がファンドを運営しているという話を聞き、「運用しているのが高校生だったらどうなるかな?」という雑談から生まれた素朴な疑問から企画がはじまった。

企画を考えるには、すごく卑近で、聞いた瞬間から気になる具体から入った方がいい。壮大なテーマは、たどり着く先であり、企画のはじまりにはなり得ない。これが三田さんの言葉の真意だ。

自分には才能がない。自分なんて無価値だ…と思い込んでいる人の多くは、頭の中の「問い」が壮大すぎるのではないだろうか。

もっと、新人マンガ家が自分を動かせやすくなるような「問い」を自ら立てるためには、どうしたらいいか?

そこで、コルクでは『問いのデザイン』の著者である安斎 勇樹さんを招き、新人マンガ家向けに「問い」について学び合う合宿を実施した。

安斎さんと色々なワークショップをやらせてもらって、問いに対する解像度が高まったのだが、その中で紹介したいものがある。

それは「問い」の良し悪しは、時期とセットで考えることだ。

問いには、「高校生が投資ファンドを運用したら、どうなるのか?」といった具体的な問いもあれば、「時代に残る作品とは何か?」といった抽象的なものもある。

先ほどの三田さんの話の繰り返しになるが、作品を作ろうとしている時に抽象的な問いを考えても先には進まない。でも、作家として「時代に残る作品とは何か?」を考えることは、作家としての在り方や指針を考える上で重要で、この問いと定期的に向き合うことが作家としての軸を築いていく。

つまり、自分が何を求めているかで、必要となる「問い」は変わるのだ。問いの質を上げることに意識がいくが、時期も同様に重要な要素になる。

自分の置かれている状況を見ながら、頭の中にある「問い」をもっと具体的にしたほうがいいのか。それとも、抽象度をあげていったほうがいいのか。そういう判断ができると、自分で自分を動かしやすくなるはずだ。

また、自分なんて無価値と思い込んでいる人は、「問い」の出発点が間違っていることも多い。

例えば、新人マンガ家からネームが送られてくる時、冒頭に「期待に応えられてないと思うんですけど…」という一文が添えられていることがある。

これは自分で自分の作品を否定して、周りも否定するだろうと勝手に決めつけている行為だ。そして、「このダメな作品を、どうやって面白くするか?」という問いを立てて、悩んでいる。

でも、自分と他人は違う。自分はダメだと思っても、ぼくが読んだら面白い部分が見つかるかもしれない。他人の目を通すことで、自分では気づかなかった価値に気づき、チームで作品を面白くしていくのが編集の意味だ。

だから、勝手に変な問いを立てるのではなく、まず相手に聞いてみる。

そうすることで、問いの精度をあげることが大切だ。勝手に他人の頭の中を妄想して問いを立てるのは、自分を無意味に苦しめることだと思う。

このように問いに対する解像度を上げることで、見える景色は大きく変わってくるはずだ。自分の動かし方に悩んでいる人は、自分が向き合っている問いを考え直してみるといいかもしれない。

ぼくもよく自問自答をしているけど、問いかけ方をいつも変えながらやっている。安斎さんとのワークを通して、問いの立て方の解像度があがった。


<追伸>
安斎さんとの合宿に参加した新人マンガ家のみんなが、合宿で学んだことをテーマに、それぞれマンガを描いている。「問い」に対する理解が深まると思うので、その一部を共有します。今回、紹介するのは『コッペくん』や『猫のおふくちゃん』を描いている、やじまけんじ君のマンガです。

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