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成長を前提とせず、「見守る」に徹する物語とは?

期待を手放し、相手を信頼し、ただただ見守る。

子育てをしていると、この「見守る」について、たびたび考えさせられる。

我が家では、もともと長男が不登校だったのだが、次第に次男も不登校になっていった。そこら辺の話は、以前に投稿した『「もう死にたい」という気持ちの裏側』というnoteにも書いた。

そして、今年の夏前から三男が不登校気味になり、9月からは週に1日だけの登校となった。

そんな中、学校の先生から、三男のことで話をしたいと連絡をもらった。ぼくも参加したかったのだが、仕事があり、妻が一人で行ってくれた。

あまりにも三男が学校に行っていないので、厳しいことを言われるのだろうと身構えていたのだが、逆だった。三男のことをすごく真剣に考えてくれていて、不登校にどう向き合っていくかを話をしてくれたのだ。

これまで、先生たちは三男が学校に行けるように、色々と声がけをしてくれていた。ぼくも妻も、どうやったら学校に行きたくなるような声がけができるかを考えていた。

でも、今回の面談で「そろそろ考え方を変えましょう」と提案を受けた。

「学校はどうするの?」「学校へ行ったほうがいいんじゃない?」「今日はよく学校に行けたね、頑張ったね」。そういった言葉を毎日のように投げかけられると、子どもにとってプレッシャーになってしまう。

学校に行っても行かなくても、フラットに接する。こちらから何か特別な対応はしない。子どもが学校について話したい時だけ、学校についての会話をする。こちらから働きかけをすることは一切やめて、見守るに徹していくという提案だ。

そして、今回の提案で印象的だったのは、具体的な期間が設けられていたことだ。「これからの2年間は、そうした接し方をしていきましょう」という提案だったのだ。

三男が通っている学校は、ぼくのnoteで何度も紹介してきた『きのくに子どもの村学園』という学校だ。ぼくは、きのくにの教育方針にすごく共感していて、先生たちのことを全面的に信頼している。

子育てにおいて「見守る」ことの重要さは色々な子育て本に書いてあるが、言うは易しで、どう行うかはかなり難しい。

まずは2年間。そんな長さを提案されるとは思ってなかった。それくらいの長い時間が子どもにとって必要であることを、きのくにの先生たちはこれまでの経験でわかっているのだろう。

自分たちだけだったら、待てても1か月だっただろう。きのくにの先生たちは、とことん子どもに寄り添っている。甘やかしてる感覚はなく、寄り添っている。

子育てをしていると、子どもたちの成長や変化を、どうしても期待してしまうところがある。そうした期待を手放す。それが見守る時に必要だ。

もしかしたら、これからの2年間、学校にほとんど行かないままということもあり得る。そうなったとしても、それを当たり前として、息子を受けれていこう。そうした決心のようなものが、先生たちとの話し合いで生まれた。

こうした内面の変化は、ぼくの編集者としての考え方にも影響を与えはじめている。

コルクは「物語の力で、一人一人の世界を変える」をミッションに掲げているが、物語には現実を変える力があると信じている。何かしらの理想に向けて、主人公が切磋琢磨している姿を描くことで、「自分もこういう風に生きたい」「自分もこんな理想を実現したい」と読者が感じ、毎日の行動が自然と変わっていく。そんな作品を多く生み出したいと思ってきた。

一方で、「あなたはあなたのままでいいんだよ」「何も変わらなくていいんだよ」というメッセージが強い物語については、自分が積極的に関わっていきたい作品とは捉えていなかった。

でも、子育てをする中で、息子の心に寄り添っていける物語とは何かと考えると、主人公が立派な志を持って切磋琢磨していくような物語だけではない気がしてる。

今、息子は『浦安鉄筋家族』が大好きで読んでいるのだけど、そのような主人公が社会に受け入れられているところが、息子を癒すのかもしれない。

物語には起伏が必要とされ、主人公が困難を克服し、成長する姿が描かれる。「あなたはあなたのままでいいんだよ」というようなメッセージ性の強い作品でも、主人公は物語を通じて何かしらの変化や成長を遂げていることが多い。

成長や変化を前提とせず、読者の心にただただ寄り添っていける物語とは何なのか。そうした問いが、ぼくの中に生まれてきて、そのような作品を編集したいと思う。


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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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