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私はどこから来たのか、私は何者か、私はどこへ行くのか

自分にとって、今年はどんな一年だったかを振り返っていきたい。

ぼくは小学生の頃からずっと「自分は何者なのだろう?」と問い続けてきた。そして、「何者かにならなくてはいけない」と自分で自分で駆り立ててきた。

灘に行っても、東大に行っても、講談社に行っても、起業しても、ぼくは自分が何者かわからなかった。プロフィールに書く言葉は手に入る。でも、何者かであるという実感が手に入らない。そして、今年は何者かになろうと、自分を駆り立てるのをやめた年だった。

外を見るのをやめた。やめようと決心してやめたのではない。自然とやめた。決心してできることではないのだろう。そして、自分の足元を見つめた。

自分の両親はどんな人だろうと考えた。さらに両親の両親はどんな人なのかを考えた。その両親は?ぼくの名前は庸平だ。その名前について考えた。

庸平は「中庸」からきている。では、中庸について何を知っているだろう?一度も中庸を読んだこともなければ、論語も知らない。

中国も日本も、四書五経が文化の土台になっているのに、それについて学ぼうとしたことすらなかった。自分の名前に込められた意味を理解して、それを体現している人になる。それが全ての始まりになると感じた。庸も平も、極端ではない、という意味だ。極端とは何か、極端ではないとは、どういうことか。これは、ぼくにしか向き合えない固有の問いだと思った。

ここ数年、幼少期に読んだ本を読み直し、その影響を再確認したりしている。中でも、「ゲド戦記」の影響は大きい。

ゲド戦記には「真の名」という概念が存在する。真の名とは、親につけられた名前ではなく、その人が生まれながらに持っている本当の名前だ。人間だけでなく、動物や自然にも真の名が存在し、真の名を知ると相手を自由に動かすことができる。

庸平という言葉の意味を追求していくことは、真の名を知ろうとするゲドの行為に重なる気がする。そして、ぼくがその名前を理解した時、ぼくはぼくを自由に動かすことができ、ぼく自身に居心地の良さを覚えるようになるかもしれない。

自分を観察するという点で、自分のzoom動画を見直すということをした。
サッカーでコーチングをしている佐伯有利子さんに1年間伴走してもらったのは、たくさんの気づきがあった。さらに、I'm besides you というベンチャーのサービスを使って、ぼくのzoom動画をデータ分析してみたこともたくさんの気づきがあった。

自分が他者からどう見えているかを理解することは、内省によって自己理解をすることと全く別能力であると「インサイト」という本を読んで知って以来、外的自己認識を高めようと意識してきたが、その変化が生まれてきた一年だったように思う。

自己理解が深まることで、他者の感情にもより気づけるようになる。コルクの行動指針の一つが、「まきこむ」だが、ぼく自身はそこまで得意ではなかった。自分はまきこむが苦手だと意識できるくらいは、まきこむに対する解像度が上がった年でもあった。

自分の由来を調べ、外部から観察を試みる。同じことを、マンガに対しても行った。マンガの歴史を調べ、田河水泡のマンガへの貢献の大きさを初めて知った。ヒット作を追うのではなく、歴史の中に埋まっているものを掘り起こしたいと思った。漫画という言葉について考え、北斎漫画は、今の漫画のルーツではないことも理解した。

そして、里中満智子の作品をたくさん読んだ。手塚治虫やちばてつやと同じ時期に、里中満智子が成し遂げたことの大きさを初めて知って驚いた。数十年経った作品が、全く古びることなく、心に響いてくる。ぼくは、編集者として、このような作品が生まれる現場に立ち会いたいのだと初心を改めて思い出した。

Webtoonに様々な企業が続々と参入し、いよいよ日本国内においてもWebtoonが盛り上がってきていることを実感する年だった。新しいことをやっているという感覚でWebtoonに取り組むのか。それとも、今までと同じであると捉えるのか。

ぼくは、人の葛藤と愛を描くという点で、同じだと思った。ヨガをやっていても、自分の身体すら思い通りに動かせない。チームで創作しようとしたら、思い通りにならないのは当然だ。はやる気持ちを抑えながら、チームのコミュニケーションが豊かになるためにできることは何かを考えていた。ヒット作は時の運だが、コミュニケーションが深く取れ続けていたら、時の運を待つ準備ができる。

短期的ではない、長期的な時間の概念を使って、自分やマンガを観察し、自分の行動を決めていった年だった。

過去や未来も、因果関係も、人間が作り出した概念の一形態でしかない。過去も未来もなく、円環していて、今しかないという時間の概念で、因果ではなく、縁起に注目して世の中を観察していくとどうなるのだろうか。そのようなメガネをかけて、自分とマンガを観察できるようになりたいと、年の瀬には思うのであった。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。また、ぼくがどのようにして編集者としての考え方を身につけていったのかを連載形式でシェアしていきます。コルク社内の中堅社員にインタビューをしてもらってまとめた文章を有料部分で公開します。

インタビューによって自分を磨く

ドラゴン桜に対する世間の反応をみて、情報を楽しんでると思った。なので、単行本に勉強法にまつわるインタビューをいれて、一冊のお得度を上げようと思った。

まだ、単行本に重版がかかっていない。この赤字に赤字を重ねたくなかったから、ライターもカメラマンも雇わず、全部、自分でやることにした。苦肉の策として、自分で全てをやったのだが、それが結果的にぼくを成長させてくれたように思う。

インタビューは、編集者の仕事の基礎が全て詰まっている。企画、取材依頼、カメラ、インタビュー、ライティング、校正、デザイナーへの発注。

誰からも口出しされず、自分だけで工夫を繰り返すことができる場所を自分で作り出した。

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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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