矢印を自分に向けないと、「さらけだす」は生まれない
コルクでは行動指針のひとつに「さらけだす」を掲げている。
価値観の違うもの同士が協力しあい、居心地のいいチームを築くためには、お互いの「前提となるもの」をさらけだしていくしかない。
例えば、仕事の打ち合わせなどで、みんなが「わかる、わかる」と言い合う様子は、傍目にはとてもチームワークがよく、互いに共感しあっているように見える。だけど、会話の内容を細かく聞いてみると、言葉が全然揃ってなくて、真逆のことを言い合っていることがある。
人間は育ってきた環境や経験によって、見える世界は全く変わる。たとえ同じ言葉を使っていたとしても、その意味するところは千差万別だ。
相手の言葉の意味がわかる。相手の言葉に共感するということは、丁寧に段階を踏まない限り到達しない。だからこそ、「さらけだす」を意識して、日々のコミュニケーションをとっていくことが大切だと考えている。
そののなかでも特に重要だと考えているのが、「事実」に対して、どう自分は感じたのかという「解釈」のさらけだしだ。
例えば、ぼくがコルクの社員に会社の経営状況を報告する時、「事実」と「解釈」を同時に語ることになる。
先月末、コルクは8月が期末なので、社員に決算内容を共有する場を開いた。これまでの数字と比較しながら今期の数字を共有していくわけだが、期を経るにつれて利益が少なくなってきていることが、如実にわかるグラフとなっていた。
実は、この傾向自体は以前からあったもので、ここ数年のコルクがずっと向き合っている課題だ。
でも、2年前の報告の場では、ぼくの事実に対する解釈は「この状況から抜け出していくには、みんなの一層の成長が必要だ」で、社員のみんなに奮起を促していた。
だが、今年の報告では、「ぼく自身が経営者として未熟なので、うまくいっていない。みんなの力を貸してほしい」と、ぼくの想いを伝えた。つもりではある。ぼくが頭の中でイメージしたように伝わったかは不確実だから、このように再度、切り口を変えて伝えようと試みてもいる。
自分が変わるから、他者との関係も変わり、他者も変わる。他者が変わってくれたら自分も変われると思っているうちは、何も変化は起きない。
以前は、うまくいっていない状況に関する矢印が他人を向いていた。やっと矢印を自分の方に向けれるようになった。そうした思考法をしていることを、ぼくなりにメンバーにさらけだしたつもりだ。
同時に、今回、ぼくが気づいたのは、自分に矢印が向いていないと、「さらけだす」は生まれないということだ。
人間は解像度が高く見えるものに目が行きがちだ。他人の姿はよく見えて、自分の姿はほとんど見えない。自分を一番わかっているつもりになるが、自分自身が盲点で自分には目が向かない。一方、他人の課題は解像度高く見えるため、そこに目が向かいがちになる。目が外に向いていると、自分の課題は注視できず、解像度が高まらない。
事実に対して、自分はどんな解釈をしているのか。なぜ、その解釈が生まれているのか。その解釈は雑な解釈ではないのか。そうした自問自答を繰り返しながら、自分に矢印を向け、自分に対する解像度をあげる必要がある。
以前に投稿した『チームの思考力を高める、3つの「そろえる」とは?』というnoteで、チームの思考力を高め、意思疎通が成立したチームワークを生むには、3つの「そろえる」が大事という話を書いた。
同じ事実を見た時に、お互いの解釈をそろえて、お互いの呼吸をそろえる。
そうしたチームになるためには、自分がどう解釈したのかを「さらけだす」ことが大切になる。
自分は事実をどう解釈したのか。その解釈の拠り所となる価値観や思考法はどんなものか。そうしたことを、さらけだしていけるチームを、コルクは目指していきたい。
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コルク佐渡島の『好きのおすそわけ』
『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…
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