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「わからない」まま、「わかろう」と続ける

大学に入学してすぐ、教授にこんなことを言われた。

「18歳の君たちは、世の中でもっとも保守的です。教科書に書いてある『わかったこと』ばかりを頭に詰め込んでいる。でも、革新的なことを考えるには『わからないこと』を学び続けないといけない。大学とは、わかったことを教える場ではなく、わからないことを一緒に学ぶ場です」

僕は、「わかった」と思うことは自分の成長を止めることだと考えている。

そのため、頭に「わかった」という言葉が湧き上がった瞬間に、「本当にわかっているのか?」「わかったつもりになってるのでは?」と自問する。

一般的に、学校教育において「わかる」はいいことだ。「物分かりが良い」「理解が早い」「飲み込みが早い」は褒め言葉として使われる。

世の中の仕事が定型化されているなら、「わかる」の価値は高い。正しい手順がわからないと作業ができないからだ。作業の場合、アウトプットを見れば、わかってるかどうかは一目瞭然となる。学校教育で言わる「わかる」とは、基本的に作業の手順を「知っている」ことだった。

だが、これからは「感情、遊びの時代」だ。

正しい手順が「わかる」ことは、ロボットやAIの得意分野。作業の正確さが求められる仕事は、AIやロボットへと移転されていく。

これから必要とされるのは「感情に寄り添う」か「一緒に面白くなれる」人だ。以前、労働感情についての記事を書いたが、人の心に影響を与える人たちにスポットライトが当たっていく。そういう時代、「わかる」の価値はどんどん下がっていく

そもそも、「わかる」とは、心のシャッターを下ろす言葉でもある。

例えば、会話している時に「わかりました」と答えられると、それ以上、その話題は続かない。こちら側は、まだ話したいこと、伝えたいことがあっても、打ち切られてしまう。「わかった、わかった」と二回答えられて、「いや、絶対にわかってないだろ」とイラッとした経験は誰しもあるだろう。日常会話における「わかった」とは、多くの場合、話題を変える建前として使われている。

コーチングを学んでいると、「わかる」という言葉は簡単に使ってはいけないことを学ぶ。「わかる」は相手を傷つることがあるからだ。

傷ついている相手に「僕も同じような経験があったから、あなたの気持ちはよくわかります」と告げると、「あなたの経験と私の経験は違う。あなたに私の気持ちがわかるはずない!」と、それ以上話すのをやめてしまうことがある。もっと話して欲しいと、心理的安全性を担保しようとしていった言葉が、逆効果になってしまう。

「わかる」という言葉で、先に自分がシャッターを下ろしたために、傷ついてる相手も下ろさざるを得なくなる。感情がまだ整理できず、自分でもどうしたらいいのかがわからない状態の時に、「あなたの気持ちはわかった」と言われると、突き放されたように感じてしまうのだ。

「わかる」とは、寄り添っているように見えて、境界線を引く言葉だ。

では、なぜ僕らは「わかる」「わかった」という言葉を使いたくなるのか?

それは、わからないままの状態に不安を覚えるからではないか。だから、本当はわからなくても、わかったつもりになることで、安心できる。

しかし、その安心は「偽物」の安心だ。

「わからない」状態に、いかに身を置き続けるか。「わかった」と決めつけず、価値判断を保留し続けるのが、これからの時代の強さだ。

人間のすごさは、「わかってない」のに、価値判断を保留しているのに、行動できることにある。

わからないからこそ、知りたい。
わからないからこそ、楽しい。
知れば知るほどにわからなくて、面白い。

僕は、そんなスタンスでいる。

わかった気になると、相手との関係も、自分の好奇心も、そこで終わってしまう。

どこまで行っても「わからない」ことを認めたまま、少しでも「わかりたい」と思って、観察力を磨きたい。


ちなみに、今回の記事を書こうと思ったのは、Huuuuの徳谷柿次郎さんのnote記事を読んだからだ。「人生のわからない、を増やす」は、すごく今の時代にあった企業理念だと感じた。この文章に触発されて、上記のようなことを改めて考えた。

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