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死について語れているか。ヤンデルさんとの往復ブログ

病理医ヤンデルさんから、僕の有料購読者専用の質問コーナーに下記のようなお便りがきた。

医療関係者がしょっちゅう話題にしている、「『適切な医療』をおおくの人々に届けようという試み」が頭打ちになっているのではないか、という恐怖があります。

商業的にうまく回っている非医療のコンテンツに比べ、医療従事者の発信するコンテンツは、少ないパイの中でほそぼそと消費され、バズることはまずありません。

「情報を必要とする人が少なく限られているから、専門性に応じて、ニーズに応じて、少なく作って高く売る」という方針もあるようですが、そこまできちんとオーダーメード化できているようにも思えません。そもそも、ニーズというか社会が医療を求めるコンテクスト自体はもう少し大きいのではないかと(これが違うのかもしれませんが)思っています。

医療系の啓蒙活動を、もっと巨大な商売にして多くの人を巻き込み、人々の「境界線を引き直す」ことはできないのでしょうか。医療系雑誌や書籍の編集者ではない「もっと大きなマスを相手に闘っている編集者」は現状をどうご覧になっているのかを知りたいです。

ヤンデルさんは、Twitterで医療情報を発信しているし、医療のことを分かりやすく伝える書籍の出版もしている。本気で挑戦している人からの本気の相談。

僕としてもいい加減に答えるわけにはいかない。

二人でクローズドで議論するのではなく、note上で往復書簡のように意見交換することで、同じような課題を感じている人の参考になればとヤンデルさんと話した。

1回目はヤンデルさんがすでにnoteに書いてくれた。

では、医療情報をどう発信してくといいと僕が考えているのか。

・・・


まず、多くの人は医療情報を何のために調べているのか、を理解することが重要かなと思います。情報を読む人の気持ちがわかると、発信の仕方も決まる。

多くの人が知りたいのは、「正しい知識」ではない。そもそも、「正しい」は、コミュニティによって変わってしまう。医者にとっての正しいと患者にとっての正しいは違う。

科学とは積み重ねなので、理系の学者にとって、正しいは一つだけど、社会において正しいは一つではない。この前提に大きなさがあることを知っておくことが重要だ。

病気に関する「正しい知識」を手に入れても、患者や家族にとってはどうしようもない。患者がガンを検索する時、「ガンとは細胞が突然変異を起こして…」と詳しく知りたいわけではない。

「不安をなくしたい」という気持ちから、検索しているのだ。安心をえたい。そして、医療が難しいのは、その安心というものが存在しない時がある。人は必ず死ぬ。火傷の治療法ならば、正しい情報を検索できて、簡単に安心できるかもしれない。しかし、もはや末期ガンで、どうしようもない時に安心できる情報は絶対にない。自分が死ぬということを、受容していかないといけない。その受容を促すような情報、サービスは、ネット上にない。

医者と患者では、医療情報を検索する時の視点が全く違う。

以前、下記のようなnoteを書いたが、

偽物の情報を扱っている人は、自分たちの情報が偽物であることは、自分たちでもよくわかっている。

だから、情報を伝えることではなく、感情に寄り添うことを主軸に発信する。その人たちの情報の方が、科学的に正確な人の情報よりも患者には届いてしまう。

科学的に正しい情報を伝える時に、「人は死ぬ」という大前提を隠しながら伝えているように僕は感じてしまう。言いにくいことは言わずに察してほしいと思って情報発信されているメディアに信頼感があるか。

偽情報を発しているメディアは、胸襟を開いている感じが出てる。一方、正しくあろうとするメディアは、奥歯にものがはさまった表現方法をしている。そこに大きな問題があるように僕は感じている。

医者と患者は、情報が非対称で、医者が患者の上位にいる状態が長く続いていた。しかし、インフォームドコンセントなどが必要となっていき、医者が患者から訴えられる可能性が増えてきた。その流れで、医者が患者とコミュニケーションを取ることをリスクと捉え、患者が受け止められるか分からない情報は、伝えないとなっているような気がする。

僕の今回の意見は、ファクトに基づいていない、外部からの感想なので、ヤンデルさんが、どんな風に感じたかぜひ、聞いてみたいです。


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