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自分を客観視する鍵は、「脳内会話」の視点にあり

クリエイターにとっても、編集者にとっても、いかに自分を客観視し、自己認識を高めていくかは重要なポイントだ。

以前、『創作に携わる者として、どう自分を客観視するか』というnoteを書いたが、自分を客観視する方法のひとつは、自らのアウトプットと他者からのフィードバックの観察だ。

自分向け、外向け。音声、文章。短い、長い。これらを組み合わせて、様々な形でアウトプットを試み、他者から積極的にフィードバックをもらう。その繰り返しによって、自己認識が自然と高まっていく。

ただ、自分を客観視するための第一歩として、もう少しとっつきやすい方法はないか。そんな風に考えるなかで、自分が自然とやっている習慣でいいと思えるものを見つけた。

人間は誰しも独り言を脳内でつぶやいている。「やばい」「めんどい」といったネガティブなものから、「よし」「やった」といったポジティブなものまで、内容は実に様々だ。こうした脳内会話は「セルフトーク」とも呼ばれ、人は1日5万回前後のセルフトークをしていると言われている。

この脳内会話の質をどうやってあげるかで、ウェルビーイングが全く変わる。環境を変えることよりも、脳内会話を変える方が早い。

そして、ぼくの脳内会話にはある特徴があると思った。

その特徴とは「三人称視点」だ。

多くの人は「やばいなぁ」「めんどいなぁ」といった風に、一人称で脳内会話をしていると思う。一方、ぼくの場合は、ネガティブな内容であればあるほど「佐渡島は少し焦っているようだ」「佐渡島は目の前のことを少し億劫に感じているようだ」みたいな感じで、三人称視点に置き換えて脳内会話をしていることが多い。

小説の登場人物のように自分を第三者に置き換えることで、物語の読者のように自分自身を客観的に見つめる。そうした習慣を長年に渡って無意識のうちに行っている。

自分の感情を心の中で文章にして、自分を客観的に眺めることの重要性。これは『ドラゴン桜』で、桜木が語っていたことでもある。自分の気持ちを客観的な言葉にすることで、焦りや緊張をほぐせるという話だ。

(C) 三田紀房 / コルク

ぼくはよく「いつもメンタルが安定していますよね」と指摘されて、焦りや緊張とは無縁のように思われることが多い。それはこうした自分を客観視する習慣が身についているからだろう。

主体である自分と、それを眺める観客のような自分。自分を第三者に置き換えることで、自分という存在をふたつに分け、少し距離を置いて自分を見つめることができる。

ぼくが好きなチャップリンの言葉で、「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」がある。この言葉の通り、人生という舞台に立っている自分をどれくらいの距離で眺めるかで、自分の人生はどういう物語なのかという捉え方は大きく変わってくるだろう。

脳内会話において、三人称視点で自分を客観視していく。それだけで随分と見える世界は変わってくる。このように自分を眺めていると、自分の人生も楽しい物語になっていく。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。

また、ぼくがどのようにして編集者としての考え方を身につけていったのかを連載形式でシェアしていきます。コルク社内の中堅社員にインタビューをしてもらってまとめた文章を有料部分で公開します。

周りが価値に気づけていない仕事とは

仕事において重要なことは、先回りをすることだと思っている。周囲を観察して、何を求めているのかを予測し、相手が予想していなかったところで、それを出してあげる。

これはどの業界でも変わらない、普遍的なことだと思う。そして、権限や立場にも関係なく、誰にでも始められることだ。

例えば、編集者に限らず、一年目の社会人には電話取りを任されることが多い。二年目以降になると、新しく入った社員に任せてしまいがちだが、この仕事には先回りをするための材料が詰まっている。

そう思って、ぼくは四、五年目になっても、一年目の社員よりも早く電話を取るにはどうすればいいかをずっと考えていた。電話をとるやFaxを配るの優先度は、なかなか下げなかった。みんなの机にあるゴミ箱を回収してゴミを捨てるはやめちゃったけど。(笑)

電話取りがなぜそんなに重要なのか?

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表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、僕が取り組んでいるマンガや小説の編集の裏側、気になる人との対談のレポート記事などを公開していきます。

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…

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