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沈黙は謙虚さを示すのか。相手を信頼するために自分にできること

ここ数年の自分を振り返ると、30代の頃と比べて、仕事や子育てに向き合う考え方が随分と変わったと感じる。

そうした変化をもたらした要因のひとつになっているのが、4年ほど前から参加している『EO(Entrepreneur’s Organization)』という起業家同士が学ぶ合うコミュニティだ。

このEOの特徴的な活動が「フォーラム」で、同じメンバーで毎月集まり、1ヶ月の間に起きたことを共有しあう。そして、共有における大切な考え方として、「5%リフクレション」と「経験シェアリング」が存在する。

5%リフクレションとは、自分の深部をさらけだすことだ。日々の暮らしのなかで様々な感情を感じるわけだけど、そのなかで自分の心に深く刻まれた上位と下位の5%の感情は何だったのか。1ヶ月間をしっかりと振り返り、その5%をグループの仲間に共有していく。

5%を考えるのは容易なことではなく、かなり深く内省していかないと見つからない。そこは自分自身でも、言語化してなくて、普段は見つめていないところだ。かなり意識していても、なかなか辿りつかない。

そして、5%を共有した後に行われるのが経験シェアリングだ。相手の話を聞き、「そういう風なことがあった時は、自分はこうした」と、自分の経験をシェアする。相手の課題を解決しようと勝手に問いを解いて、何かをアドバイスしてはダメで、あくまで経験の共有にとどめるのがポイントだ。

なぜなら、他人からの直接的なアドバイスではなく、自分で気づきを得ることが、一番の成長になるからだ。気づきを得るための材料となるかもしれない経験のシェアはするが、具体的なアドバイスはしない。そうした学びへの姿勢がEOでは徹底することが推奨されている。

自分の感情をさらけだして、学びあえる仲間ができたことで、経営者として気づかされることがすごく多い。

こうした自らの体験を通じて、コルクの社員同士でも、コルクスタジオに所属するマンガ家同士でも、「さけらだす」ことによって、どうやって学び合いが滑らかに起きるかをより考えるようになった。

年に一度、EOでは初心に戻るための研修があるのだが、そこでEOのインストラクターからもらったフィードバックでハッとした。

経験シェアリングにおいて、「こんな自分の経験なんて伝えても、相手にとって意味がないのでは」と思って、発言を踏みとどまることがあるかもしれない。でも、意味があるかどうかを判断するのは相手なので、自分で判断するのはやめたほうがいい。勝手に相手の考えを判断するのはやめようという旨だ。

このフィードバックに「なるほど」と思いつつ、こういう風に勝手に相手を判断してしまっているシーンは意外と多いのではないかと思った。

例えば、会社の会議とかでも、「ここで自分の意見を言っても、波風立てるだけかもしれないから黙っておこう」「この程度の意見を言っても、意味がないから控えておこう」と、自分の意見をあえて言わない人がいる。それは自分の実力や立ち位置を鑑みたうえで、周囲の人に配慮した謙虚な態度のように感じるかもしれないが、果たしてどうだろうか。

それは、相手が自分の意見を受け取る力がないと決めつけていることでもあり、相手を信頼していないことにもならないか。それは謙虚とは真逆の行為で、謙虚と思うことで、正当化してないか?

黙っていて、自分の心の中でやり過ごすのは、自分だけに向き合えばいいので、一番楽な選択肢とも言える。相手を信頼して、自分の意見を素直に伝えるのは簡単なことではない。

自分の意見を拙いと思ったとしても、相手が自分を受け止めてくれると信頼し、そこから対話でお互いに深めれると両者を信頼し、自分の意見を言う。
「伝わらないかな」と思ったとしても、「それを話したら、相手がうまく聞き出してくれるんじゃないか」と思って話してみる。 

話すのを控えようと思った時に問題なのは、話す内容の巧拙ではなく、自分が相手を信頼できているかどうかだ。意見をもっと磨こうと思うのではなく、「相手を信頼するために自分は何をできるか」と考えると、話しやすさが変わるかもしれない。

ふと口をつぐんだ時に、謙虚さや相手のせいにしてしまって、自己開示を終わらせてはいないだろうか。自分は相手を信頼できていないと認識して、信頼するための努力をするところを一歩目とすると、「さらけだす」がうまくいくようになるかもしれない。


今週も読んでくれて、ありがとう!この先の有料部分では「最近読んだ本などの感想」と「僕の日記」をシェア。日記には、どんな人と会い、どんな体験をし、そこで何を感じたかを書いています。子育てをするなかで感じた苦労や発見など、かなり個人的な話もあります。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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