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人を育てるとは、期待しないこと

「人を育てるとは、期待しないこと」

経営でも、マンガ家の育成でも、子育てでも、最近のぼくはこう考えている。昔のぼくが聞いたら、「期待しないなんておかしい」と反論するであろうような考え方だ。

長い間、期待するのは良いことだと思っていた。

期待とは、相手の才能や能力に評価をし、相手を認めることでもあり、相手に自信を与えることにも繋がる。期待を感じているのなら、それが相手に伝わるように、言葉や態度できちんと示そうと意識していた。期待が重荷になると言われても、その重荷を背負うから成長するのだと思っていた。

また、厳しく注意したり、「ぼくだったら、こうする」と助言することも、相手への期待の現れで、思うところがあれば積極的に伝えたほうがいいと考えていた。

怒るのは、相手を期待しているからで、期待の裏返しとしての怒りだから、受け入れなくてはいけない。怒る側だって体力を使うことなんだと。ぼく自身も、そうした先輩の期待に応えたいという気持ちを持ち、叱咤激励を受け入れることで成長できた。その成功体験を繰り返そうとしていた。 

今から考えると、そのやり方しか知らないだけである。だが、会社を経営したり、子育てをするうちに考えが変わってきた。

「このくらいの結果を出してほしい」「この部分をもっと伸ばしてほしい」と思っている段階で、それは自分に都合よく相手をコントロールしようとしている。それは、期待ではなく、「巧妙な管理」ではないか。それを「期待」という言葉に包んでしまっていないか。

期待と同じような行為に「褒める」がある。

以前、『褒めるは、心の声ではなく、技術だ』というnoteでも紹介したが、ドラゴン桜には「褒めることで相手を支配してはいけない」というセリフが登場する。褒めるのは相手のためでなく、自分の思い通りに相手に動いてほしいという気持ちが透けて見えると、桜木は指摘する。

褒めるにも、相手を支配するための褒めると、相手の存在を承認する褒めるがあると僕は意識している。上記のnoteにも書いたが、ぼくは後者の褒めるは大切だと思っていて、そのために大切なことは「観察」と「確認」だ。

ぼくは、誰かを自分の望む方向に導きたくて、組織を作っているのでない。一緒にやっているクリエーターも、コルクのメンバーにも、子供にも、「自分にとっての幸せや成功とは何か」を自分で考え、自分でそれを掴めるようになってもらいたい。唯一、ぼくが望んでいる方向は「自立」だ。そして、期待するとは、その願いに逆行する行為だと、考え出してる。

「信頼」と「期待」は近い概念だと思っていたが、実は遠いのではないか。そもそも期待している時点で、もう相手を信頼していないと言えないか。信頼しているなら、相手が自分なりの方法で、自分なりの目標を達成すると考えている。それならば、何を期待すると言うのか。

いま、ぼくが大切と思っているのは、期待を手放して、相手を「信頼」することだ。

信頼と信用は似た言葉だが意味は違う。信用とは、何かしらの実績によって積み上げられり、場合によっては下がっていく。一方、信頼とは、結果がでなかったり、仮に失敗したとしても、損なわれたりしない。常に、そこに存在していて、何かによって揺らぐものではない。

ぼくは、自分の息子たちを信頼している。これから彼らが挑戦することが、どんな結果になろうと、それで息子たちへの信頼が損なわれることはない。ぼくは「チャレンジしたことに価値があるよ」と伝え、失敗しても安心して戻ってこれる居場所をつくりたい。同じことが、一緒にやっているクリエーターにも、コルクのメンバーにも言える。

そのためには、期待を手放さないといけない。期待は裏切られたと感じるが、信頼は裏切られたと感じることはない。裏切られたと感じたら、実は信頼できてなかった、というだけだ。

こちらから「こうしてほしい」「ああしてほしい」という発言は言わないし、態度でも示さない。必ず自分で自分が望む成功を手に入れるだろうと、相手の存在を信じて、見守る。相手は、自分の時間軸で変化していく。僕の時間軸ではない。

一見、「放置」と似ていても違う。根底に相手への愛情と興味がないと、観察を続けることができない。見守り続けれない。もし、相手がぼくの意見を知りたいと言えば、面と向き合って、ぼくの考えをしっかりと伝える。ぼくの考えを隠すわけではない。何か具体的に手伝ってほしいことがあれば、相談にものる。決して、突き放すわけではない。

こういうやり方は悠長すぎて、自分の逃げを無理矢理肯定する思考法のように感じていた。しかし、最近は、「急がば回れ」で、これがもっとも早い方法のようにも感じている。このほうが、ぼくの予想を遥かに超えるものが生まれる可能性が高い。そして、ぼくはそれを見てみたい。

結果を求めてもダメだし、焦ってもダメだし、怒ってもダメ。

そうは言っても、口を出したくなる瞬間がある。そんなときは、「期待を手放そう」と心のなかで深呼吸してみる。

期待を手放す。相手を信頼する。

それがぼくが仕事をする時、最近、チャレンジしていることだ。


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佐渡島庸平(コルク代表)

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