「若いうちは、量をこなすべき」は本当か?
仕事において「若いうちは、量をこなすべき」とよく言われる。
量が質に転換するからだ。多くの仕事をこなして経験を積んでいけば、自然と仕事の質が上がっていく。質を上げようとじっくりやっていても、再現性は身につかない。だから、「若い時の苦労は、買ってでもせよ」とも言われるのだろう。
ぼく自身、この考え方に同意してきた。コルクの行動指針のひとつに「やりすぎる」があるが、これもまずは量をやりすぎることをイメージしてきた。量をやりすぎるなかで、質をやりすぎるようになっていく。社員にそんな風に成長してほしいと考えてきた。
一方で、まだ実力が乏しい新人の時に、量を追求しようとしてオーバーワークし、鬱っぽくなってしまう人もたくさん見てきた。これはコルク社内に限った話ではない。次第に、「若いうちは、量をこなすべきだ」と若い人に伝えるのは、酷なことなんじゃないかとも考えるようになった。
では、新人のうちは何をやりすぎたほうがいいのか。
その問いを考えるヒントをくれたのは、コルクが仲良くしているデザイン事務所の教育方針だ。そこでは、デザインを学んだ経験のない人達を採用しているのだが、入社して半年くらい経つと一人前の戦力になっている。素人同然だった人が、驚くほどの質の仕事をする。
そのデザイン事務所が新人に求めているのは、量でも、質でもなく、スピードだ。スピードをやりすぎる。
アウトプットを出すスピードを高めることを習慣化させ、まずはスピード感を身につけさせる。そのスピード感に慣れていくと、長時間労働でなくても量ができるようなる。そして、最終的に質へと転換していく。その考えを社内に浸透させている。
まずは、スピードを追い求める。そして、スピードの基準を高めていく。それから徐々に量を増やし、同時に質を高めていく。成長におけるステップの踏み方として、とても腹落ちできる考えだと思った。
そもそも、新人のうちは、粘ったところでクオリティの高いものを出すことは難しい。なぜなら、仕事とはやってみないとわからないことが多いからだ。であれば、アウトプットを早く出して、フィードバックをもらう回数を増やす方が、よっぽど成長する。
もちろん、スピードを追い求めて、雑すぎるアウトプットになるだろう。それでも、スピードがあることをまずは評価する。スピードがあれば、自然と量がこなせて、質はついてくる。
新人のうちは、「どうやったら質をあげられるか」という視点ではなく、「どうやったらスピードを高められるか」という視点で振り返りをするほうがいいだろう。
孫氏の兵法には「拙速は巧遅に勝る」という言葉がある。新人に関しては、この言葉がまさに当てはまるのではないか。
コルクでは、最近中途で入社してきたメンバーが増え、若い編集者が社内に増えてきた。この考え方で「やりすぎる」の捉え方を共有し、それぞれの成長を促すサポートを会社全体でしていきたい。
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コルク佐渡島の『好きのおすそわけ』
『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡…
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