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編集者の時代から、プロ読者の時代へ

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 インターネットによって、今まではありえなかった職業が生まれる。

 人工知能で職業がなくなるとよく言うけれども、きっと同じくらい新しい職業が生まれる。でも、新しい職業は、新しすぎて、その形が分からず想像すらできないのだ。

 世の中に1台目の車ができた時に、ガソリンスタンドや、郊外のショッピングモールで働く人が誕生することを想像した人が皆無だったのと同じだ。

 カカコムや食べログは、使うと便利なところだけがすごい訳ではない。プロの家電を見極める人や、プロの食べ歩きの人を生み出したことが、一番すごいことだと僕は思う。何をもってプロというかは難しいが、それを職業としている人を超える、アマチュアを生み出した。

 インターネットは、様々なプロを生み出していく。そして、僕はプロ読者も生まれると思っている。編集者や批評家よりも、ずっと鋭くて、作品理解が深まる感想を言える人のことだ。

 プロ読者が生まれるという感覚を持ち出したのは、マンバというサービスをやるようになったのがきっかけだ。

 食べログで「デカブリ夫」「一級ウンチク氏」や「うどんが主食」が有名になった感じで、マンバには「マンガトリツカレ男」がいる。彼の「また読みたい」と思っている本棚のマンガのリストは、面白い。読んだことがないマンガだらけで、この中から次読みたいマンガを探すのも楽しい。自分の趣味と同じような本棚の人を見つけると、ハズレが少なく、いい本を見つけられる。

 もう一つ、プロ読者を意識させられることがあった。

 トム・フォードの最新作『ノクターナル・アニマルズ』を妻と観に行った。なぜ、トムフォードが、わざわざこのような映画をとったのか? 監督の意図は何か? 始まりが意味することは? 終わり方が意味することは? 観終わった後に、妻と色々話し合った。でも、分からなくて、それ以上は考えていなかった。

 この映画評を読んで、納得した。僕は、映画の誤読していた。この映画の見方が、監督の意図を正確に理解している、と僕は感じた。ブログの中で、トムフォードがインタビューで語ったラストの意図と、ブログの書き手の解釈が違うと断っている。つまり、ブログの書き手も、誤読しているわけだ。しかし、僕には、このブログの書き手が想像した意図の方が、作品をより魅力的に思わせる、より素敵な理解の仕方だと思う。トニーは、エドワードではなく、スーザンであるという見方は、作品のあり方を一変させる。作品に対して、このような向き合い方をできる人のことが、プロ読者だ。このブログの書き手は、僕よりも、様々な作品に対峙する能力が高いのではないか。そんな風に思わされた。

 カカコムや食べログのように、プロ読者を生み出す土壌は、まだネット上に十分にできていない。それをどのように作っていくのかを、今、コルクのCTO萬田@daisakku と話し合っている。

 今週も読んでくださり、ありがとうございます。僕のツイッターアカウントは@sadycorkです。フォローをよろしくお願いします。

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佐渡島庸平/コルク代表

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佐渡島庸平/コルク代表

2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。

週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』

コルク代表・佐渡島が、「コンテンツのDJ」として自分の好きを届けていくマガジンです!編集者や経営者としての日々の気づき、注目しているクリエーターや作品、影響を受けた話などを配信していきます。また、マガジン購読者限定の特別コンテンツとして、有料者限定記事、公開日記、製作途中の...
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