スクリーンショット_2019-09-29_23

消費されない作品の届け方

ここ数年でサブスクリプションが隆盛し、映像や音楽に留まらず、マンガや小説などのエンタメにも波及しつつある。

勝っているサブスクリプションは、レコメンド機能がいい。

ApplemusicからSpotifyに変更した時、その使い心地に驚いた。自分好みの曲を次々にレコメンドしてくれて、その精度に感心したのだ。ただ、数ヶ月使っていて、音楽への興味が薄れてきた。

僕は大学時代、渋谷のHMVで毎月100枚以上のCDを視聴して、2、3枚を買っていた。これぞという歌手を見つけて、喜んでいた。

Spotifyのレコメンドだと、そのような音楽との出会いが少ない。どこか80点くらいの音楽ばかりで、好みの方向なのだけど、完全に心を捉える100点満点と出会えない。

Spotifyを使っていると、音楽がBGMになってしまう。感動までは到達しないが、満足はできるものに多く囲まれた状態で、自分が求める120%を探しにいくことを多くの人はしない。僕も、Spotifyのレコメンドの質を上げるために、せっせと検索して、お気に入りを押して回るのはなかなかできない。

音楽も、本も、ファッションも、好きな人のための業界だった。ネットにより、それが誰でもアクセス可能になり、触れやすくなった。その分、こだわりが減っていった。

UNIQLOやMUJIに行くと、デザインも素材も悪くないものが簡単に手に入る。僕もそうだが、ファッションに強いこだわりはないけど、ダサい格好はしたくない人は、そこで十分満足できる。

SpotifyやYouTubeで、人気の音楽は、睡眠用だったり、ワークアウト用だったりする。サブスクリプションのマーケットだと、音楽好き向けよりも、音楽にそこまで興味がない人向けの音楽の方が需要がある。

そのようなマーケットの流れを、クリエイターは無視することができない。でも、どうやったら、いいBGMになるかと考えながら、曲を作るミュージシャンは少ない。どうやって、心に一生残る一曲を作れるかとずっと考えている。

漫画家であれば、暇つぶしとして、サラッと読んでもらうものではなく、一生残るざわっとした気持ちを植え付けたい。

それで、元ロード・オブ・メジャーの「けんいち」と一緒に作っている曲は、一工夫もフタ工夫もしながら、曲をファンに届けている。

毎週月曜日の夜11時も、インスタライブを行なっている。ファンからのリクエストに応えながら、制作中の新曲の話をしていく。

そして、毎月25日を新曲の日と決めて、12ヶ月連続で発表している。今は、2曲を発表した。漫画の連載みたいな感じだ。そして、25日の夜も、11時からインスタで新曲発表ライブをやっている。

さらに、25日は、どんな想いで曲を作っているのかを、けんいちさんが、一noteに書く。曲ができるまでの感情の流れも、ファンと共有する。

一曲を消費なれないように、こちらの気持ちと一緒に、ファンに届ける。ファンに、こちらの心を察して欲しいと甘えない。

そして、今は、定期的にライブをすることにしている。今度は、11月4日に東京でライブをする。ライブ前に、僕が場内アナウンスをする。

「けんいちは、一曲一曲を丁寧に作っている。できれば本人が手渡しで曲を渡したいくらいだ。でも、それができない。代わりにファンのみなさんが、他のファンに手渡しで曲を届けて欲しい。そのために、ライブ中の録画・録音は自由。それをSNSに投稿して、自分の知り合いに届けてください。」

けんいちの想いを理解している人が、言葉を添えて、曲を届ける。レコメンドで偶然流れるだけで音楽が届く形じゃないほうがいい。

Spotifyは多くのミュージシャンを金銭的に救った仕組みではある。でも、作り手の気持ちをあげない。

クリエイターが、自分の想いを安心して吐露できるクローズドなコミュニティをどう作るのかが重要だなと改めて感じた。僕のこの思想と方針は、スケールしないという指摘を受ける時があるのだけど、グレーフルデッドがネットがない時代にこのやり方でしっかりスケールしている。僕は、よりこのようなやり方が向いた時代が来ているのだと考えている。

僕は、ファンを通じて、好きのおすそ分けをしてもらいながら、作品を世に広めていきたいのだ。


今週も読んでくれて、ありがとう!

ここから先の有料部分では、「僕の日記」「最近購入した本」「読者からのお便り回答」などをシェア。僕の思考の原材料を公開していきます。

ちなみに月800円「編集者・佐渡島の好きのおすそ分け」マガジン購読者になると、毎週水曜日に更新される記事の有料部分が毎回読めたり、その他の記事も全て読めて、随分お得です。

この続きをみるには

この続き: 2,996文字 / 画像4枚
記事を購入する

消費されない作品の届け方

佐渡島庸平(コルク代表)

500円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
note.user.nickname || note.user.urlname

購入&サポート、いつもありがとうございます!すごく嬉しいです。 サポートいただいた分を使って、僕も他の人のよかった記事にどんどんサポート返しをしています!

ありがとう!コメントももらえると嬉しいです!
150
コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。

こちらでもピックアップされています

コルク佐渡島の『好きのおすそわけ』
コルク佐渡島の『好きのおすそわけ』
  • ¥800 / 月
  • 初月無料

『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』などのマンガ・小説の編集者でありながら、ベンチャー起業の経営者でもあり、3人の息子の父親でもあるコルク代表・佐渡島庸平の思考を「おすそ分け」していくマガジンです。表では書きづらい個人的な話を含め、日々の日記、マンガや小説の編集の裏側、ここだけの対談レポート記事などを公開していきます。 詳しくは:https://www.sady-editor.com/n/ncaf941f64a0d

コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。