【マンガ専科本先出しnote】おもしろいマンガを描く上で必要な要素とは?
おもしろいマンガに必要な要素とはなんでしょう。すべてのマンガで共通しているのは、たった3つの要素、「感情」×「ストーリー」×「演出」です。これらをうまく見せるのには“センス”だと思われがちですが、必要なのはそれぞれの基本の型を覚えていくことです。そこで今回は、この3つの要素について紹介していきます。
◆おもしろいマンガには「感情」×「ストーリー」×「演出」が必要
おもしろいマンガは、「感情」×「ストーリー」×「演出」の掛け算で成り立っています。おもしろいマンガとはどこにでもあるマンガではなく、「作家性」やオリジナリティがあるマンガをいいます。
そして、どこに作家性が出るかというと、「感情」の部分です。この「感情」をきちんと表現するために、「ストーリー」と「演出」が存在します。「ストーリー」と「演出」はすでに多くのマンガ家が型を編み出しているので、それを暗記することが重要です。
また、「感情」にも枠組みがあり、まずがその枠組みを抑えることで、個性の発揮という領域に手がかかります。
●「ストーリー」「演出」…暗記
●「感情」…枠組みを暗記の上に、個性(作家性)を発揮
◆「感情」を知る
では、まず「感情」とは何かを捉えていきましょう。
感情は、日常生活の中で必ず湧いてくるものです。この感情が、マンガを描く時のエネルギーや原材料になっていきます。つまり、生活の中で無数に湧いてくる感情を見つけられる癖を身に付けることがマンガ家にとって最も重要なことです。
根っからのファンはその作家の発信する出来事や情報がおもしろくてファンになるわけではありません。出来事・情報がよかったからついたファンは、すぐに他の刺激的な出来事・情報に流れます。
根っからのマンガファンは、作家の感情の噴出に惹かれてファンになります。
1つの出来事や情報に対しての感じ方は、人それぞれ違います。根っからのファンは、出来事のおもしろさではなく、その出来事から生まれる作家の感情に惹かれています。
情報に飛びついた読み手とは違い、「こんなことを思うんだ。おもしろいな」「自分とはまったく違う感じ方なのに、共感してしまう」などの作家の感情についてくれたファンは長くファンでいてくれます。
したがって、日々に感情をすくい上げることがマンガ家として欠かせない要素なのです。
◆「ストーリー」を知る
ストーリーは、設計がすべてです。設計をするためには基本的な型を覚えなければいけません。人がストーリーを知りたいと思う衝動は3つしかありません。つまり、その3つのどれかを喚起する必要があるということです。
【ストーリーを知りたいという衝動】
・鑑賞したい
・知識を得たい
・活用したい
例えば、「鑑賞したい」時には、「美しい」「涙が出る」「笑顔になる」といった思いをベースにその衝動が起こります。自分の描こうとしているマンガは、この中のどこに当てはまるのかをチェックしてください。その上で、ストーリーを構築します。
人が興味を持つことは、思いの外、限られているものです。それをきちんとおさえておくことが欠かせないのです。
◆「演出」を知る
「演出」とは、キャラクターの魅力や物語のリアリティなどマンガのあらゆる部分での演出を指します。マンガ家になりたい人はこの演出が最も重要だと思うようですが、演出にはすでに型があり、新たに生み出す努力ではなく暗記することが大事な領域です。
演出のわかりやすい例は、落語です。落語は、座布団の上に座り、持っているのは扇子のみです。この扇子を刀にもするし、箸にもします。一人の人が、声やそぶりで老若男女を演じ分け、物語のワンシーンを作り出します。落語は、「演出」のスキルを磨き上げることが求められる芸能なのです。物語は常に古い。演出の工夫だけで、面白さが全く変わってしまうことがよく理解できると思います。新人マンガ家の多くは、作品が面白くないとのフィードバックを受けると、設定やテーマなど全てを描き直してしまいます。しかし、問題は演出にあることが多いです。
例えば、女性の絵を描く時に、どういうふうに描けばセクシーになるかわかりますか。落語家でいうと、演者が男性でも女性っぽく見せる型があります。具体的には、右のイヤリングを左手で外す、飲み物を遠い方の手で取るなど、斜め(クロス)を意識することです。色々なアイテムや要素を入れるのではなく、一つの記号みたいなもので、「これは女性だ」と瞬間的に理解させるのです。
マンガもこうした演出を1つ1つ覚えていくことで、読者にきちんと伝わる演出を理解することができます。
つづいて「おもしろいマンガを描くために必要な能力」についてお話します。
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