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自然は、人工物よりも、情報が多いから魅力的だ

今年4月、家族で福岡へ引っ越した。

福岡は、糸島など、市内からすぐの場所に豊かな自然が多い。また、車で簡単に九州各地へ出かけることができる。いま、福岡で住んでいる家も、歩いてすぐの場所に動物園、植物園があり、大濠公園もすぐだ。自然との距離が圧倒的に近い。

福岡で暮らしはじめてから、自然のなかで過ごす時間が増えた。休日の過ごし方も、九州の山々を登山をしたり、対馬で船釣りをしたり、家族で糸島に行ったりと、東京に住んでいた頃とは大きく変わった。

対馬で船釣りでジギングに挑戦した
三男と2人旅。由布岳の頂上で

そんな風に、自然と接する時間が増える中で、気づいたことがある。

僕は自然はシンプルで、都会は混沌としているから、自然は落ち着くのだと思っていた。でも、逆なのだ。

ぼくは最近、福岡でも、東京でも、10分ほど毎日、半眼で瞑想している。福岡では大濠公園の池のほとりで、東京では渋谷のホテルの部屋で。

瞑想前に、渋谷のホテルの窓から見える世界は、建物が溢れ、人や車が終始動き回り、忙しなく映る。一方、公園から見える景色は穏やかだ。

だが、瞑想して、7・8分経つと、違う景色が立ち上がってくる。

目の前にある池と芝生が、風に吹かれたりして、常に揺らぎ続けているのを感じる。小さい生物や昆虫もずっと動き続けている。何もかもが動き続けていて、シンプルに見えていたものが、圧倒的な複雑さを持って迫ってくる。

その複雑なものを、複雑なまま受け止める。自然界においてとどまっているものはなく、たくさんの動的なものに自分が囲まれていることに気づく。

一方、渋谷の窓から見える景色は、建物や看板が多い。行き交う人も車もたくさんいる。ごちゃごちゃしていて、情報量が多いと思っていたけど、みんなゆっくり動いてる。自然物の揺らぎに比べると、ずっと緩慢で、情報が固定化している。

都市の賑やかさはわかりやすい。人間が作り出しているものなので、人間に知覚されやすい形になっている。一方、自然の賑やかさはわかりにくく複雑だ。人間の手によって生まれたものではなく、様々な要因が絡み合って、自然は存在している。

ディズニーランドのような人工的な場所は、1日の楽しみ方が、人によって設計されてるからわかりやすい。一方、壮大な自然は、景色をちょっとみて、終わってしまうことが多い。どこからアプローチしていけば楽しめるのか、見当もつかない。YAMAPというアプリがなければ、登山を素人が楽しむことも簡単にできない。

釣りも、ベテランと一緒じゃないと、全く楽しみ方がわからない。ディズニーランドは、経験がなくても楽しめる。自然は、たくさんの経験がないと楽しめるようにならない。

妻は、こういう自然のなかにある賑やかさを発見するのがうまい。海辺に行くと、長い時間、子どもと磯遊びをして、「こんなところにお魚がいるよ」「この岩の後に、こんなにカニがいるよ」と子どもをガイドしながら、遊んでいる。

自然に対する感覚が変わったところで、我が家のデジタルデバイスへの向き合い方を妻と話し合った。

ぼくは、子どもがゲームをしたり、デジタルデバイスを使うのに慣れることに大賛成で、積極的にやる方がこれからの時代は、いいと思っていた。

でも、ゲームやデジタルデバイスは、簡単に使いやすくできてる。一方、自然は、簡単にアプローチできない。目の前に両方提示されたら、子どもは、自然の中にいても、簡単に楽しめるゲームをとってしまう。

息子たちには、自然の複雑さを味わえる人になってもらいたい。それができていたら、ゲームを味わうこともできる。でも、逆は簡単に起きない。

そんな話し合いを妻として、我家のゲームやデジタルデバイスとの向き合い方が決まった。

学校の教材も、ゲームも、人の手が加わったものは、味わいやすい。そうではなく、自然を複雑なまま、あいまいなまま味わう。それが、福岡に移住した僕が息子たちとやりたいことだ。ゲームは、中学生か高校生まで成長してからしかできないようにすることにした。

来年は、息子たちを連れて、九州のどこへ行こう。

そして、糸島に自分達で木を切り出して、サウナをつくる予定だ。自分達で建物を作ることにもワクワクしている。


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