宇宙兄弟10周年アイキャッチ

自分ごと化って何だ?

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  宇宙兄弟の10周年イベントを12月10日に講談社の講堂で行なった。ファンが、200人ほど集まってくれた。チケットの倍率は6倍で、当選メールで感極まって泣いた、という連絡が事前に来るほどファンの人は楽しみにしてくれていた。

 「モノ消費からコト消費へ」「体験の時代」とよく言われる。情報が少なかった時は、触れた情報が簡単に自分ごと化された。読むという行為自体が、貴重な体験だったのだろう。

 しかし、情報が溢れる時代では、全てのことが他人ごと化する。

 「面白い」とは何か? 「面白い」とは、自分ごと化することではないか。主人公が、まるで自分のようだと思うと、その作品を面白いと思う。自分ごと化していると、困難すらも、クリアすべきやりがいのある課題へと変わる。自分ごと化させることができると、全てが面白くなり、退屈がなくなる。物語だけで自分ごと化させるのが難しくなった時代に、多くの人を巻き込むために必要なことは何か?

 カヤックの経営理念「つくる人を増やす」は、その解になっているように思う。ただライブを行ったり、イベントをすると、コト消費が起きるわけでもなければ、体験になるわけでもない。つくる人ととして参加することで、人は、その出来事、その時間、その場所を自分ごと化できる。

 コルク、コルクラボでは、多くの人がつくる人になることができるイベントを作家のために生み出したいと思って、試行錯誤を続けてきた。そして、たどりついた答えは、読書会だ。

 本は、一人で楽しむものという認識が日本ではある。しかし、世界的には、読書会は結構一般的で、本を読み終わった後、それを共有しあうことで孤独な作業ではなくなる。『テヘランでロリータを読む』 『ジェイン・オースティンの読書会』という、読書会をテーマにした小説が複数あるくらいだ。中国でも読書会が広まっていて、サイン会をすると、読書会の仲間のために本を複数冊買う人が結構いる。

 読書会は、参加している全ての人が、一緒に作っている。本も大事な構成要素の一つだが、それ以上に大事なのは、そこに参加している人たちだ。 

 宇宙兄弟の10周年は、ファンが支えてくれなければ、迎えることができなかった。10周年イベント自体も、読書会が中心だった。ファンの人たちが、イベントをつくる人になってくれていなければ、楽しいイベントにはならなかった。

 読書会は、まだまだ発展させることができる。新しい読書会の形を、生み出したい。そして、ファンをいかにして、つくる人への変えるのか? その方法は、読書会だけはない。コンテンツをつくるところにまきこまなくても、ファンをつくる人にできるという実感が湧いてきた。

 課題を見つけるのが一番、難しいとよく言うが、コルクが立ち向かう課題が、だんだんと形をなしてきているように思う。

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