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具体と抽象を行き来する鍵、”AIDA(あいだ)”

物語が生まれる時、作家の頭で起きていることは何か?

それは、具体と抽象の行き来だ。

物語だけじゃない。何かのアイディアが生まれる時は、具体と抽象の行き来が、すごい回数起きている。

編集者とは、その具体と抽象の行き来をサポートする仕事だ。

打ち合わせで、相手の言ってることをオウム返しすることもあるが、具体度・抽象度をズラして、答える。それが思考を揺さぶる。だから、経営者からも壁打ち相手を希望されることもあるのだろう。

新人作家の場合、自分の個人的な体験を描いたエッセイ風のものだったり、個別のエピソードをつなぎ合わせただけだったりで、具体だけで物語をつくることがある。そのような抽象化を経ていない表現は、普遍性が浅く、時代を生き残らないのではなくなりやすい。どうすれば、そこに普遍的なテーマとの接点を作るかを、ぼくは意識したりする。

キャラクターもまた、多くの人がもつ具体的な特徴を抽象化し、ひとりの人間に仮託されたものだ。抽象化ができているキャラクターは「どのように振る舞うのか」と、読者が次の具体を予想できる。

いい打ち合わせでは、具体と抽象が行き来する。

一度、抽象を挟むことで、キャラクターの具体的行動が普遍性を持つ。具体を抽象化し、抽象を再度具体化している様子は、はたから見ると雑談に見えるかもしれない。しかし、違うテーマに会話をズラすのと、抽象度をズラすのは、似ているけど、打ち合わせの終着点は全く違う。

では、どうすれば具体と抽象を行き来する力を身につけられるのか?

この言語化が、すごく難しい。「具体と抽象の行き来が大事だ」と、ぼくは新人作家やコルクのメンバーによく話しているけど、「では、どうすれば抽象と具体を行き来できるようになるか?」と聞かれると、うまく答えることができなかった。

だが、具体と抽象を紐解くために重要と思える概念のひとつと出会った。

”AIDA(あいだ)”だ。

人と人。物と物。人と物。人と事。間(AIDA)を見ようとすると、俯瞰をしないといけない。自然と抽象度があがる。何との間を考えるのかにもよって、さらに抽象度を上げることもできる。

この気づきを得たのは、編集工学者として知られる松岡正剛さんが主催する塾名からだ。

ぼくのnoteマガジンの有料読者の人なら知っているかもしれないが、この1年くらい、松岡正剛さんの様々な著書を読んでいる。

編集者として20年近く働くなかで、自分が考えている編集とは狭義なのではないかと感じることがあった。松岡さんは社会や時代や文化といった古代から現代まで続くあらゆる情報を編集している。編集というものを改めて学び直したいと考えた時に、松岡正剛さんの考えを知ることが、自分の道標になるかもしれないと考えたからだ。

そうして松岡正剛さんの本を読むうちに、松岡さんの考える編集とは何かをもっと深く理解したいと思い、松岡さんが主催する塾に申し込んだ。

その塾名が「AIDA(あいだ)」。

ぼくは第2期のメンバーとして、10月から来年3月までの6ヶ月間参加するのだが、この第2期のテーマは「メディアと市場のAIDA」。ちなみに第1期のテーマは「生命と文明のAIDA」。

塾名をみても、テーマ名をみても、松岡さんが"AIDA(あいだ)"という概念をものすごく大切に捉えていることがわかる。

初めて、塾名を聞いた時には、ずいぶんぼんやりした概念を塾名にしていると思った。その後、「なぜ、この名前にしたのだろう?」とずっと考えていた。そして、実は、すごい概念だと思い出した。

これこそ、ぼくが長年考えてきた抽象と具体を行き来する鍵となる概念なのではないか。見ているものをメタ認知するには、間をみようとすればいいのではないか。

人間という言葉もどうやって生まれたのか。人だけを見ていても、人は理解できない。人と間、両方を見なくては、理解が始まらない。間という見えないものをみようとすることから具体と抽象の行き来が始まる。

ぼくは『観察力の鍛え方』で、関係性こそが人間の本質であり、確固たる個性など存在しないと書いた。人間は単独で個人として存在しているのではなく、周りを取り囲む他者や環境との関係性の中で生きている。

間を考えることは、関係性を考えることでもある。

これから、松岡さんが主催する「AIDA(あいだ)」の受講を通じて、ぼくの間を観察する力はあがるだろうか。

それが今、ものすごく楽しみだ。noteでも、ぼくが得た学びや気づきをおすそ分けしていきたいと思う。


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