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作家と「話し合う」ということ

 作家との打ち合わせは、「話し合い」をしているだけだ。何か特別な、打ち合わせの型があるわけではない。

 「話し合い」をする。

 この言葉だけを聞くと誰でもできる簡単なことのように思える。でも、このシンプルなことがすごく難しい。長時間、話をするだけならできる。相手の意見を理解し合いながら、思考を深めていく「話し合い」は、なかなかできない。

 伊東潤がコルクにやってきて、エージェントをし始めたのが、2年ほど前。それから、毎週1時間弱、話し合いをしている。キャラクターをもっとたてましょう、と僕が言う。「キャラクター」という言葉からイメージをするものが、伊東さんと僕では違う。なので、その言葉では、修正でイメージするものがずれる。そういう言葉のずれをお互いにすり合わせ、同じものがイメージできるようにちょっとずつ言葉を揃えていく。それで、やっと「話し合い」ができるようになっていく。

 伊東潤の最新作『男たちの船出』は、この2年間で初めて、十分な「話し合い」をした上で世に出すことができた作品だ。

 『江戸を造った男』は、河村瑞賢という江戸の偉人を主人公にしている。『修羅の都』は、源頼朝、北条政子。『ライト・マイ・ファイヤ』は、よど号事件。歴史上の有名人や話題になった出来事をテーマにしている。一方、『男たちの船出』の主人公は、名もなき船大工だ。船大工・嘉右衛門は、時代の変化に対応した船が作れなくなってしまっている。そして、息子が自分を船大工として追い抜こうとしている。そのことを素直に喜ぶことができない嘉右衛門。そして、息子に協力しない嘉右衛門の行動は、悲劇を生んでしまう。

 この作品の打ち合わせをしている時、伊東さんとお父さんの関係、伊東さんと後輩作家の関係などを話し合った。そして、伊東さんの気持ちを嘉右衛門、弥八郎へと託していった。

 『男たちの船出』は、僕が編集者として伊東潤と一緒に生み出したと自信を持って送り出せる作品だ。地味かもしれない。でも、伊東潤という作家の味は、今までの作品と比べて濃く出ている。伊東作品の中で、もっとも感情が揺さぶられる作品になっているのではないか。

 表紙の男は、嘉右衛門だ。なぜ、こんな苦しそうな、悲しそうな顔をしているのか。嘉右衛門の気持ちは、歴史好きではない、現代人にも共感できる。伊東潤と僕の新作をぜひ、楽しんでほしい。

 ちなみに、僕の秘書の武田は、これを読んだのをきっかけに、伊東さんの本気のファンになり、過去作も熱心に読みだした。(笑)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。

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