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極端なことを、真剣に考えてみる価値

いい企画は、世の中の見え方をがらっと変える。

新人マンガ家とたくさんの新連載の準備をしているため、いろんな企画を「あーでもない」「こーでもない」と頭の中でこねくり回している。

僕自身の整理もかねて、企画をブラッシュアップする際の思考法を言語化してみようと思う。

1「極端なことを考える」

極端なことを考える価値は、低く見積もられている。

ベンチャー企業だと、売り上げが大してないのに、100億とか1000億といった数字を社長が口にして、社員は真面目に取り合わないということがよくある。

でも、僕はリーダーがそのような目標を掲げることに価値はあると思う。

5億の会社を10億にしようだと、人を増やそう、案件数を増やそう、効率をよくしようと改善案をみんなで出し合うことになる。それも価値があることだけど、それでは目標にたどりつかない。今の自分たちの目線を変えてくれる企画が必要になる。極端な設定は、視点を変えてくれる。

もう少し卑近な例で考えてみる。

普段3000円でTシャツを売っているブランドが、8000円で売ろうと思うと、何をするか。生地を良くしたり、有名デザイナーに頼んだり、有名コンテンツとコラボしたりすることになる。

もしも、5万円のTシャツを売ろうと思ったら、そのような解決策は、意味がない。企画が必要になる。極端な設定を考えると、出すアイディアの質が全く変わってくる。

『ドラゴン桜』も、もしも「落ちこぼれ学校から東大生を一人出そう!」なら、今までの先生が必死に教え方を工夫して、生徒に寄り添い、努力する話になってしまったかもしれない。「東大生を100人出す!」物語だから、外部から弁護士が乗り込んできて、予想外の勉強を教える物語になった。

許容できるギリギリの極端を考える。これは、僕でも定期的に自分に言い聞かせないと、極端のずいぶん手前で改善策を考えることになってしまう。

2 「普遍性を備える」

普遍性を備えるというと極端と両立しないと思ってしまう人が多い。しかし、極端と普遍性は両立する。設定に普遍性を持たせようとすると、よくある企画になる。設定は、時代性を帯びるから、極端な方がいい。

ずっと変わっていないのは、人間の感情だ。

何を悲しい、楽しいと思うかは、時代と環境で変わるかもしれない。でも、悲しい、楽しいという感情自体の存在は、普遍だ。普遍性を備えるとは、その企画で湧き起こす感情を具体的に想像するということだ。

3 「新規性を備える」

先日、経営合宿を行った時に、コルクらしい作品の定義を役員で議論した。『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』という僕が関わった作品の寿命が長い理由は何だろう?

産業との結びつきではないか?という仮説が出てきた。『ドラゴン桜2』では、スマホを使った新しい勉強法を紹介している。『宇宙兄弟』は、宇宙ベンチャーが立ち上がる前に始めた。物語の方が、産業の立ち上がりよりも早い。これから大きくなり、継続する産業から企画を考えるのは有効ではないか。

このような枠を作ってみると、マンガの企画が今までとは違う形で出てきた。ウェルビーイングが、産業として立ち上がろうとしている。多くの医療マンガは、病気をテーマにしているけど、健康はない。もしも、健康をテーマにしたら、新しい表現が生まれるかもしれない。

嗜好品ビジネスが大きくなっている。ワインの次で、日本酒がきている。今まで大量消費だったものが嗜好品へと変わっていく。楽しむ人が多くて、嗜好品へと変化するものは何だろう?そんな風に考えていたら、コーヒー、チョコレートは、マンガのテーマになり得ると感じるようになってきた。


僕の企画の師匠の三田さんは、「企画とは細い針の穴を通すもの」といつも言っている。

上の定義は、どれか入っていればといいのではない。全部をどうやって、同時に実現するか。同時に実現しようと思うと、枠が狭くなり、穴がすごく小さくなって、いい企画になる。

以前、こんなノートも書いた。「企画を壮大なテーマから考るな」ということ。

「極端に考える」と「壮大なテーマから考えない」は一見、矛盾するように感じるかもだけど、両立できる。両立できた時に、いい企画になる。

昨日、新人マンガ家たちに、粗々の状態のネームを人前で朗読してもらうというイベントをやった。人前にさらけだして、フィードバックをもらうことによって、ブラッシュアップされるよと。

その様子を見ていて、今、僕の頭の中にある医療ものや、コーヒー、チョコものなど、温める前にもう言語にしてしまおうと。なので、企画のあり方についてはパッと思いついくまま書いたので、あまり MECEではないものになったけど、このように考えている企画が、1、2年経つと形になって世に出ていく。出てきた時に、「あー、これか」と待っていてもらえたら。

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