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【マンガ専科本先出しnote】描きたいテーマの見つけ方

コルクラボマンガ専科に参加した方は、山田ズーニーさんのワークショップを受けていただき、「伝えたいことを見つけて言葉にする力」を育みます。ワークショップでは効果的に自己を掘り下げていくことが可能です。
今回のnoteでは、僕の視点から一般化(言語化)したコンテンツを中心にお届けしていきたいと思います。あわせて、ズーニーさんの『伝わる・揺さぶる! 文章を書く』も参考にしていただくと効果的です。
今回は、描きたいテーマを見つけるヒントをお届けしていきます。

◆描きたいテーマを見つける3つのステップ

そもそもの問いですが、あなたがマンガを描くモチベーションとはなんですか?
僕はこれまでたくさんの作家と接してきましたが、全員共通で言える「マンガを描くモチベーション」は、「自分を知ってほしいということ」です。自分の心の中にあるイメージを伝えたいという衝動。これが作品に向かう原動力になっています。

では、「自分を知ってほしい」という時の「自分」とはどういったものでしょう。禅問答のようですが、この「自分」を見つけない限り、作品を生み出すことはできません。

「自分のことは、自分が一番わかっているよ」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。なぜならば、自分は自分に嘘をつくものだからです。

例えば、仕事で心身がボロボロになった状態で、「私は、どんなに辛くてもこの仕事を続けたいんです」と言ったとします。それは本当でしょうか。本心の場合もあるかもしれませんが、「必死で仕事している自分がかっこいいと思っている」とか「諦める自分には価値がないと思っている」など、本当の気持ちは別にあるかもしれません。
本当の自分を自分自身で把握することは、多くの人が思っているほど簡単なことではないのです。

とはいえ、自分のことも観察できない人間が、他人を観察したり社会を観察したりして作品を生み出すことはほぼ不可能です。自分に興味を持ち、正確に把握するという第一歩がなければいけません。

だから、今回、描きたいテーマを見つけるファーストステップとして、過去・未来から自分を把握する方法をお伝えします。
次のステップでは、物語を生むには他者の存在が不可欠ですから、自分と他者の関係性から自分を知ることをします。
3つめのステップでは、社会の中で自分は何を目指そうとしているかを把握します。社会の現実と理想の間に、物語が生まれます。そういう意味で、社会と自分との関係も見極めていく目が欠かせません。

この3つのステップを踏むことで、本当に描きたいテーマを見つけることができ、表現の底力を養うことができます。描きたいことがぼんやりしたまま描き始めると、世間ウケを狙って描こうとしてしまいます。それでは、心からのモチベーションが湧き起こることはできません。
今回は、この3ステップを丁寧に紹介していきましょう。

◆テーマの見つけ方1:過去・現在・未来の自分を棚卸する

「今、自分が何を感じているか」を必死で考えても、なかなか見えてくるものではありません。そこで必要なのが、過去と現在、現在と未来、未来と過去という多様な時間軸で「自分」を見つめることです。
測量する時には、「三角測量」という方法があります。これは、ある基線の両端にある点から測定したい点への角度をそれぞれ測定することで、明確化したい点の位置を特定する方法です。過去の点と未来の点を確定させることで、現在の自分が見えてくる。僕はそんなイメージを持っています。
そこで、「過去」と「未来」の見つけ方についてお伝えします。

【過去】

自分の記憶に残っていることは、自分にとって何らかの価値があるものです。人はほとんどのことを忘れるのに、なぜその思い出だけを覚えているのか。それは、記録が勝手に残っているのではなく、自分でその記憶を選択しているということなのです。

だから、「自分がなぜその記憶を選択してるんだろうか」というところに、自分を知る鍵があります。それでは、過去に印象に残っていることはなにかを思い出してみましょう。

例えば、「今の自分を形成したと思う大切な出来事は何ですか?」という問いを自身に向けてください。
答えは、
・目標を達成したこと?
・失敗をしたこと?
・嬉しかったこと?
・悔しかったこと?
・奇跡?
・トラブル?
などが出てくるかもしれませんね。

アドラーは、交通事故にあったという事実をどう捉えるかは人によって異なると言っています。例えば、Aさんは「自分は本当に運が悪くて、交通事故に遭って3ヶ月も入院したんです。だから、今もちょっと体調が悪いんですよね……」というかもしれません。
一方のBさんは、「死んでいてもおかしくないような交通事故に遭ったのに、たった3ヶ月の入院で済んだんです。僕は本当に運がよくて、今もいろいろなことに成功しているんです」と言うかもしれません。

運が悪い理由として交通事故を思い返す人もいれば、成功の理由として交通事故を挙げる人もいる。人生において印象に残ったことと言った時に、「交通事故に遭ったこと」と挙げたとしても、記憶の紐付け方が異なるパターンがあるのです。

つまり、
【思い出した記憶+「だから今は〜」という現状認識】
がセットになっているはずなのです。

過去の記憶が思い浮かんできたら、その記憶をどう価値づけるかで、今の自分が見えてきます。思い出していることには、意義があり、適当に心に浮かんでいるわけではないのです。
人は、思い出した出来事の方に、意味があると思いがちですが、現在の状況があるからその過去を思い出しているのです。

過去から現在の自分に気づくために、過去と現在の自分の関係を問うような質問をどんどんしていくことが重要です。過去は変えられないと思いがちですが、本当は過去の意味は全て現在の自分が規定しているのです。

【未来】

続いて、未来と現在の関係性を見ていきましょう。
例えば、「5年後にどんなふうになっていたいか?」という質問に対して、あなたはどんなふうに答えるでしょうか。

先ほどの過去に交通事故に遭ったAさんBさんの例を思い出してみてください。
Aさんは、交通事故に遭ったことで「運が悪い」と思っていました。5年後にどんなふうになりたいと言っているでしょうか。例えば、「今は調子が悪いから、毎日少しずつ運動しているんです。5年後にはすっかり健康になっていたいですね。交通事故の後遺症に苦しむ人のために働いていきたいです」といったストーリーが生まれるかもしれません。

では、Bさんはどうでしょう。「自分は運がいいので、そうそうのことでは死なないと思っています。だから、会社を辞めてチャレンジングな事業を起こしたいと思います」などと言うかもしれません。

つまり、未来は現在と過去により規定されています。過去と現在と切り離して、未来があるわけではないのです。過去と現在と未来をつないでいくことで、1本のストーリーが見えてきて、それが自分自身の理解へとつながるのです。

◆見つけ方2:自分と他者の関係性を知る

物語というものは、すべて「人と人との間」で生まれます。そのため、自分は他人とどのような関係を築きたいのかを考える必要があります。「見つけ方1」では、自分で自分を見てきましたが、「見つけ方2」では相手からの自分の見え方を捉えます。

具体例から考えてみましょう。
例えば、あなたが元彼と別れた理由を、「彼が忙しくて別れざるを得なかった」と思っていたとします。しかし、彼から見たらどうでしょう。自分の感情は一旦横に置いておいて、彼の言い分を考えてみてください。
別れる前に、相手が言っていた言葉で印象に残っていることは何か、どんな振る舞いをしていたか、どういった表情をしていたか…色々と思い出してみましょう。そうすると、「半年過ぎれば落ち着くから待ってほしいと思っていた」「会社が倒産するかもしれないので、なんとか救いたいと躍起になっていた」など彼の本心が見えてくるかもしれません。彼女に弱音を見せられなかったんだなど相手のことがわかってくると、相手側から自分がどう見えているかも浮き彫りになっていきます。
そして、相手側のそのときの事情を理解すると、相手に響くように伝えられるようにもなります。

これは、どこか別の場所にいる人に自分のいる場所を伝えようとした時に「どう伝えればいいか?」という頭の使い方に近いです。俯瞰して説明できれば一番いいのですが、言うほど簡単ではない。説明する時には、ちょっと離れたところに何が見えて、すぐそこにはこれが見えるなど、複数のヒントを言っていかないと相手に伝えられないですよね。
誰かとの関係性も同様で、いくつかの切り口で見ていくことで、相手が自分のことをどう見ているかを捉えていくことができます。

恋愛関係だけでなく、
・親子関係
・親友との関係
・師弟関係
・(スポーツなどの)チームメイトとの関係
などから、自分を相手目線から捉える練習をしていくことができます。

大切な1人との関係性がどんなふうに変わっていったのかを理解すると、物語の中で絆が描けるようになっていきます。

◆見つけ方3:自分と社会との関係性を捉える

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佐渡島庸平(コルク代表)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。