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Netflix と"金は天下の回りもの"

「金は天下の回りもの」

よく聞く言葉だが、この意味をどう解釈しているだろうか?

ぼくは、お金を貯めこむのではなく、必要な時には思い切ってお金を使って、世の中にお金を回すと、結局は自分のところにも回ってくるという意味で解釈していた。

だが、「華僑」は違った解釈をしていることを、最近知った。

「天下」という言葉に、ぼくらは広い世界、世間を連想する。一方、華僑の人たちは「天下」と言葉で、自分の周りにいる家族や仲間などのコミュニティを意味するらしい。

つまり、彼らにとって「金は天下の回りもの」とは、お金を社会で使うことではない。自分が信頼できるコミュニティ内でお金を循環させるのだ。

華僑は、富を独占するではなく、一人が儲かれば仲間内の困っている誰かに与えたり、誰かの商売の援助に使うことで、さらに富を倍増させながら栄えてきた。コミュニティを大きくすることで、結果、自分も大きくなる。

この華僑流の「金は天下の回りもの」の考え方は、持続可能な経済圏を目指すためにも、文化として継続して発展していくためにも、ものすごく重要な考え方のように思える。

今、コミュニティ内でお金を循環させることで、その経済圏を世界規模で急速に広げている存在がある。

それは、Netflix。

先日発表した通期決算では、有料会員数が全世界で2億人を突破したことを発表した。日本でも有料会員数が500万人を超えるなど、動画ストリーミングサービスの中で、圧倒的な存在感を放っている。

Netflixの成長には様々な要因があるが、ぼくが大きな特徴として感じるのは、コミュニティを育てる姿勢だ。

Netflixは予算の大部分を、コンテンツ製作費にあてている。そのため、Netflixと組んだ映像制作やアニメ制作のスタジオに支払われる製作費は充実しており、クオリティを追求した作品づくりができる。結果、ユーザーの満足度は向上し、評判も高まり、新規の会員が増えていく。利用者だけでなく、制作側も含め、エンタメコミュニティを大きくしている。

リリースによれば、2021年は映画製作に力を入れるようで、毎週1本以上のオリジナル映画がNetflixで配信される予定だそうだ。年間にして約50本のオリジナル映画を作る。

通常、映画制作にはリスクを伴う。映画製作には大きな予算が必要で、興行収入が振るわなければ、大赤字になる。実際、大規模な予算を投じた大作が鳴かず飛ばずで、閉鎖したスタジオは少なくない。だが、Netflixは、視聴数によらず一定の額を支払う形で契約をしている。スタジオにとってはリスクを押さえられ、マーケティングや広告宣伝などに余計な頭を取られず、制作に専念できる体制をとれる。

もちろん、Netflixがスタジオ側に求めるクオリティの水準も高い。結果、制作の工数も増えるし、管理にかかる予算も増やさなければならない。Netflixと契約しただけで、スタジオの利益が単純に増えるわけではない。

だが、Netflixとの契約では、基本的に配信権以外の権利がスタジオに残る。グッズやゲームなど、残った権利を運用して利益をあげることができ、これがスタジオ側には大きい。この運用によって得た収入をクリエイターに還元することができるのだ。

Netflixは、富を循環させている。コミュニティ内でお金を循環させることで、経済圏を広げていこうとしている。

ぼくは、これまでも、持続可能な経済圏を作るにはファンコミュニティが大切だと言ってきた。『We are lonely, But not alone』の本を出版する少し前に、さとなおさんが『ファンベース』を出版し、今いるファンを大切にする重要性を説いたが、考え方は基本的に一緒だと思う。

コミュニティ外ではなく、まずはコミュニティ内に目を向ける。

コミュニティ内で互助が生まれ、お互いに支え合うなかで豊かさが増え、そのコミュニティに入りたいと外から人が入ってくる。世界各地で経済的に発展したコミュニティをつくっている華僑も、世界規模で大きなコミュニティをつくっているNetflixも、考え方の根本にあるものは同じだ。

「天下」というと漠然とした社会をイメージしてしまうが、信頼できる仲間や目の前のファンのためにお金を回そうと思うと、考え方が変わる。

華僑流の「金は天下の回りもの」は、ぼくにピッタリな社会の捉え方だ感じる。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。