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人は普遍。環境が変わる。

作家は何のために描くのか? 

新人の時は、面白い物語を作りたくて描く。面白い物語を描くこと自体が目的になる。しかし最終的に、面白い物語を描くことは手段で、「人を知る」ことが目的になっていく。

人間とは何か?その答えなき、問いに答え続けるという行為が、描くという行為なのだと僕は考えている。

『ドラゴン桜2』は、編集しながら不思議な感覚になる。僕は、作品を通じて、今の若い人の考え方を知る。1の時は、東大へ行けと発破をかけたら、反発した生徒からボールが飛んできた。でも、2では無反応。白けて、みんな小さな声で文句を言うだけだ。

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そして、桜木もすごい。時代の変化を理解していて、生徒たちに「頑張らない」勉強法を教えようとする。

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60歳を超える三田さんが現代の子供の気持ちを理解している。早瀬や天野をはじめ、作品で描かれる学生の言動を見ていると、まさに「現代っ子あるある」だと感じさせるシーンやセリフが次々と登場する。

三田さんは、10代の学生と接しているわけではない。また、作品を描くためにインタビューをしているわけではない。

なぜ、リアルに描けるのか?

三田さんにそう尋ねると、「そんなの簡単だよ」と言われた。

人間の「本質」は時代によって変わらない。どんな時代でも、ずっと同じで普遍。だから、昔の学生は賢くて、最近の学生はダメとか、そういうことは決してない。

ただ、人間を取り囲む「環境」が変わると、環境から受け取る影響によって「行動」が変わる。だから、まずは環境について理解を深め、そこに人間を置いてみたら、どう振る舞うかを想像すればいい。

天野と早瀬という二人の家庭、そしてスマホがある状況を想像してみると、この二人の反応になると三田さんは言う。

作家はストーリーを作るのではない。設定を作って、そのなかに人間を放り込む。そして、そこで起きる出来事を観察して、撮影する。まさに、別世界で起きたことを、見てきて描くのが、作家の仕事なのだ。

三田作品は、ハズレがない。それは、どの作品も人間を描いているからだ。ストーリラインは、どの作品もシンプル。『砂の栄冠』をはじめとした甲子園ものは、弱小校が甲子園へ行くまで。『マネーの拳』は、起業で成功するまで。『アルキメデスの大戦』という第二次世界大戦を舞台にした物語でも、三田さんの作品の作り方は変わらない。その環境に放り込まれると、人はどう振る舞うのか?

多くの新人マンガ家は、マンガを描く時に、設定や環境に考えが向かいがちになる。でも、設定がどんなに面白くても、その中に登場する人間がしっかりと描かれてなかったら、作品は面白くならない。作品を作り続けるとは、人を知ろうと挑戦し続けることだ。

人間の本質という「抽象」を掴むために、様々な時代や境遇に置かれた人間の「具体」を知る。個別の具体を知る中で、時代を超えても変わらない抽象を掴む。この繰り返しの中で、作家は「人間の本質」を理解していくのだと思う。

『ドラゴン桜2』は、教育という自分も経験した出来事がテーマだ。教育現場が、過去とどのように変化しているのか、それを知ることで、時代の大きな変化を知ることもできる。もはや受験が関係ないサラリーマンでも、時代の変化を理解するのに、非常に役立つ作品になっている。

その『ドラゴン桜2』のドラマ化が正式に発表された。主演は阿部寛さんで、TBS系「日曜劇場」にて今夏から放送がはじまる。

実は、ドラマ化において、原作はあくまで原作であり、ドラマでは好きにアレンジをしてもらってOKとドラマ制作陣には伝えている。1の時もそうだった。

だから、ドラマの制作チームが現代の子供たちをどのように捉え、阿部さん演じる桜木をどのように動かすのかを、三田さんも僕も楽しみにしている。

これからnoteやYoutubeでは、ドラゴン桜のドラマ化に向けて、担当編集をしている中で得た気づきや裏話を、どんどんおすそ分けしていく。

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