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「おもしろい」は消費されるが、「カッコいい」は時代を超える。

凄まじいスピードでコンテンツが消費され消えていく。

丁寧にプロが作れば、注目される時代は終わってしまった。

一時的な熱狂を起こすコンテンツがあったとしても、次々と人々の関心は移り変わっていく。大きく話題になった映画、小説、アニメなどの作品も、数年が経つと、ほとんどの人はうっすらとしか記憶していない。

そんな時代において、記憶に残る作品を作るためには、「カッコいい」とは何かを考えることが非常に重要になる。

「カッコいいもの」とは、簡単に消費されないからだ。

僕にそのことを気づかせてくれたのが、小説家の平野啓一郎さんが新しく出版する新書『カッコいいとは何か?』だ。

平野さんは、物語を生み出すだけでなく、現代に必要な思考も生み出す哲学者のようにも僕は感じる。

小説『決壊』で、社会的な地位を得ていても心は満たされていなく、「何か」が起きてしまえば、たちまち全てが決壊してしまう危うさを秘めた主人公を描いた。

そして『決壊』を書き終えた後、「そういう人間が社会で生きていくためには、どうすればいいのか?」と考えながら、『ドーン』、『空白を満たしなさい』という小説を書きながら、たどり着いたのが『分人主義』だ。

自分のことが嫌いという人も、自分の分人を一つずつ考えてみると、誰それといる時の自分(分人)や、好みの作品を読んでいる時の自分(分人)は好きだと言えることがある。好きな分人が一つでも二つでもあれば、そこを足場に生きていけばいい。

分人主義とは、自分を愛することができる状態になるための、マイナスからゼロに戻すための思考法と言える。

では、ゼロからプラスへと、人を高みへと持っていくものとは何かを考えたときに、平野さんは、はじめ『憧れ論』というものを書こうとしていた。

人は何かに憧れることによって、もっと先に行こうと思って努力ができる。だから、憧れとは何かを解き明かしたいと。憧れについて思考を深めていくなかで、「カッコいい」と思うから憧れるということがわかってきた。

平野さんは、思索をする時に、自分の頭の中だけで考えることはしない。「カッコいい」という概念の歴史を調べにかかり、膨大な資料を用意し、それを読み込み、そこを元に自分の思索を深めた。

「カッコいい」とは、民主主義と資本主義とが組み合わされた世界で、法外な動員力と消費刺激力を持つものだということがわかった。「カッコいい」と思える対象となると、資本主義的にも成功するし、政治的にも成功する。

例えば、ナチスが、なぜ政治的にあれだけ成功したのかというと、もともとアーティストを目指していたヒトラーが、カッコいいデザイン、カッコいい演説をかなり意識的に取り入れていたからだ。政治は「カッコいい」という要素がなかなか取り入れられない分野だっただけに、それを誰よりもうまく取り入れたことにより、あれだけの人気を得てしまった。

今でもアートの世界でナチスのデザインが使われたりするのは、そこに思想的な共鳴があるのではなく、カッコいいデザインが時代を超えて生き残っているからだ。「カッコいい」は時代を超える力を持っている。

新書『カッコいいとは何か?』は、小説家というよりも、哲学者・学者・平野啓一郎による著作といった方がしっくりくるかもしれない。

この「カッコいい」という概念を解き明かすことへの挑戦は、小説家・平野啓一郎にとっても、重要な意味を持っていたと、編集者としては思っている。

これまでの平野さんの小説は、味わい深かさが魅力だった。そこに、「カッコいい」という要素が加わり、新たな境地へとたどり着く作品が生まれるのではないか。

「カッコいい」を理解することが、これからの時代はより大切になる。

「おもしろいもの」や「役に立つもの」は簡単に消費されていってしまう。でも、「カッコいいもの」は消費されない。

ぜひ、「はじめに」を読んでみてほしい!そして、早速、ゲラを読んだ人から、こんな熱い感想も出てきている。

ぜひ、ツイッターやnoteで「#カッコいいとは何か」で、自分が何をカッコいいと思っているか教えてほしい。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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