来年は、楽しみまくるぞ!

2012年が終わろうとしている。
 
たくさんの人から「なんで講談社を辞めたのか?」「これからどんなことをしたいのか?」という質問を何度もされた。
聞かれるたびに、聞いた人が満足するように色んな答え方をしたように思う。
 
作家エージェントが存在すると、どれだけ作家が仕事をしやすくなるか。出版業界の閉塞を打ち破るために、どうすればいいか、などなど。
どの答えも、本心である。どれか一つの答えがあるわけではない。たくさんの答えの最終的な結論として、退社と起業があった。
でも、僕を突き動かした、根っこにあった思いは何なのか。
質問をされるたびに、心の中で「なんでだろう?」と自分自身に問いかけ続けていた。
 
創業して3ヵ月がたち、すこし落ち着いてきたので、自分の心をゆっくり観察してみる。
 
そうすると、僕の決断のきっかけは、高校時代の友人の死だったのだと気づかされる。
 
その友人とは、高校時代から特別、仲が良かったわけではない。
そいつが20代後半で癌になり、高校時代の仲間数人でお見舞いにいった。そのとき、そいつが『宇宙兄弟』を大好きだと知った。それ以来、新刊が出るたびに直接、持っていってプレゼントしているうちに、次第に仲良くなっていった。
そいつの名前は各務泰紀。
高校時代の知り合いは、たいていが安定志向である。医者になったり、弁護士になったり、官僚になったり、大企業に勤めたり。もちろん、僕も。
でも、各務はふらふらしていた。どこにも勤めたりせず、いきなり自分で「シェアノサイト」というシェアハウスを促進するベンチャーを下北沢で立ち上げたりしていた。
「やっとベンチャーがうまく行きだした。シェアハウスが広まっていくよ」そんな話を、高校の仲間が集った飲み会で各務から聞いた数ヵ月後のことだった。各務が癌になったのは。
抗がん治療で、各務の頭はツルツルになり、眉毛もなくなった。そんな治療に耐えて、各務は退院した。体力を蓄えて、もう一度仕事をしようと準備していた。あと少ししたら仕事を再開しよう、そんな風に思っている時に、癌が再発した。それでも、心が折れることはなく、各務は2度目の抗がん治療に耐えた。そして、順調に回復していった。初めは家から駅まで歩けなかったのに、一緒に焼き肉を食べ、ゴルフができるようになった。医者からほぼ完治と告げられて、みんなでお祝いをしてた。
再度、どうやって仕事を再開しようか各務が考えだしていた時だった。2度目の再発を告げられたのは。
そこからは、あっという間だった。3度目の抗がん治療をする猶予もなく、病状は一気に悪化し、亡くなってしまった。
各務は生きたがったていた。死を受け入れてなかったし、悔しがっていた。各務は、ただ生きたいと思っていたわけではなかった。
生きて、仕事をしたい!そんな風に思っていた。
 
僕は、どんな風に仕事をしているだろう?
仕事をしないで、一生、遊べたら幸せだろうか?
仕事とは、本来、楽しいものなんじゃないか? 一生終わって、仕事ばっかりしていた人生だった、そんな風になるのは、実は幸せなんじゃないか。
1年後に死ぬと急に告げられた時、今の仕事の仕方で、僕は死を受け入れることができるだろうか?
 
葬式に出ながら、仕事について、自問していた。
そして、各務がどれだけ望んでも手に入れられない、仕事をするという機会をもらっているのだから、もっともっと仕事を楽しもう、と考えていた。
 
楽しい仕事とは、しんどいことがないのとは違う。
ドラゴン桜も宇宙兄弟もなかなか売れなくて、たくさんの苦労をした。でも、どの苦労もやりながら、楽しかった。
妥協をせず、努力ができている時は楽しい。
 
組織の理論で諦めないといけないときは、どれだけ楽であっても、楽しくない。
 
講談社という組織で仕事をしていると、確かに楽である。同僚は皆、僕の仕事の仕方に理解を示してくれて、協力的だった。守られながら仕事ができていたから、作品のことだけを考えればよかった。しかし、その楽さと引き換えに、やはりいくつかの妥協は認めないといけなかった。
 
創業して3ヵ月。
講談社の時の何倍も忙しいし、働いている。事務所の家賃、社員の給料、保険に税金。さらに契約書の細かい文言の確認、などなどなど。講談社の時にやる必要のなかったことをたくさんやっている。楽じゃない。でも、やっている仕事には、どれも妥協がない。実現していない時は、僕らのアイディアがまずかったり、進め方が稚拙なだけだ。自分たちでやり方を工夫すれば、必ず実現できる。
 
仕事を楽しくしたい。僕だけにとってではなく、社員、関わる人、みんながそう思える組織作りをしたい。
まずは、3ヵ月。そんな風にできたと思う。
コルクを大きくしていきながら、そこをどうやって継続していくのか。それが僕の課題だ。
 
来年は、楽しみまくるぞ!

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。

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