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出版界に素人革命を起こしたい!

僕は編集者のプロだ。素人革命が起きると、プロの居場所がなくなる。そう考えて、素人革命が起こるのを遅らせたいと思う人たちがいる。その気持ちもわかる。

でも、僕は全く逆の考え方をしている。素人革命によって、知見が増えることで、プロはもっと進化できる。そして、プロの価値はもっと上がる。

インターネットによって、あらゆる分野で素人革命が進行している。Instagramでカメラマン、YouTubeで動画、クックパッドで料理、Airbnbで宿泊施設、Uberで運転。

ITが個人ににパワーを与えている。

Youtubeには様々なジャンルのマニュアル動画が投稿されていて、それをみると大抵のことは真似できる。この前、僕はある特定のテントの畳み方を知りたくて、YouTubeで見た。(笑)

Amazonで必要な備品・工具・材料のほとんどは直ぐに手に入る。人手や資金が必要なら、クラウドソーシングやクラウドファンディングで調達できる。

もしかしたら、近い将来、自分でパソコンを組み立てる感覚で、自宅で電気自動車を作ることだって可能となるだろう。「電気自動車を作ってみた」みたいなタイトルで、一般人がYouTubeに投稿しているかもしれない。

素人革命がくるのを恐れて待つのではなく、積極的に起こしていきたいと僕は思っている。マンガと出版、どちらもまだ素人革命が起きていない。

コミチはマンガの素人革命を促そうとしているサービスだ。

出版業界がほとんど独占的に行ってきた「本をつくる」行為にも、素人革命は訪れるはずだ。

以前は、出版社を介さずに印刷所に本の製作を頼むのが極めて困難だった。だが、ラクスルのようなサービスが普及したため、印刷・製本の難易度が格段に下がった。

同時に、デザインツールの発展や、noteのようなテキストコンテンツを発信するWebサービスの普及により、デザインやライティングスキルを持つ人の人口は増え続けている。

ただ、これだけ条件が揃ってきているにも関わらず、現在、本をつくる行為はまだ出版社に閉じられたままだ。出版社を通さずに本が作れる事実に気づいている人は稀で、まだまだ出版界に素人革命が起きる気配はない。前田デザイン室が「マエボン」を作った時に、出版にも素人革命が起きようとしているのだと僕は気付かされた。

僕は、本をつくる行為がもっとカジュアルになれば良いと思っている。

本は、「自分(たち)が何者なのか」を伝えるのに、一番適した伝達手段だ。そして、本をつくる過程で、自分(たち)が何者かを深く考え、言語化するので、最も思考を深める手段でもある。多くの人が、本を自分で制作することで、自分を知り、仲間と出会える人生を送れるのではないか。

そこで、コルクラボのみんなに自分たちで本をつくる体験してもらいたいと思い、「ラボで本を作らないか?」と提案をした。そうして始まったのが、11月に完成を目指す『居心地の1丁目1番地』の制作だ。

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上のイメージは制作中の仮デザインだ。だが、書店に普通に並べられても全くおかしくないレベルの雰囲気に仕上がってきている。

この本の編集に僕は一切関わっていない。企画も、ライティングも全て本を作った経験のないメンバーが中心でやっている。デザインは、前田デザイン室のメンバーが担当してくれている。

この本の詳しい内容については、こちらのクラウドファンディングのWEbページに詳しく記載しているので見てほしい(もちろん、支援してくれたら嬉しい!)。

また、今回のプロジェクトによって、本をつくる価値の新たな一面に気づくことができた。

それは、本づくりは「チームビルディング」に向いているということだ。

出版社の本づくりは、作家と編集者など、最小人数で進めることが多い。なぜなら、そのほうが意思決定が早く、コミュニケーションコストが低いからだ。それに比べ、今回の制作は数十人が関わっている。通常の本づくりより難しいことを、いきなりやっている。

おそらく、メンバーは途中で何度も「もうやめたい」と投げ出したい気持ちになったこともあるだろう。それくらい大人数で1つの本を作るのは、手間のかかる行為なのだ。

その大変なプロジェクトを、やりきる直前まで来た。みんなのチームビルディングは、相当進んでいる様子が、slackから伝わってくる。

現在、多くの企業が社内のチームビルディングや、自分たちのミッション・ビジョン・バリューの浸透に悩んでいる。その手段のひとつとして、チームや部署で本をつくることは、ものすごく有効だと思う。

出版界の素人革命は、どうやったら、スピードが上がるのか? プラットフォームが出てきたら、スピードが一気に加速すると思う。


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