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シンプルなものだけが生き残っている

「It’s a piece of cake!」

『宇宙兄弟』に登場する僕の好きなセリフだ。直訳すれば「ケーキひと切れ分」だが、「余裕だよ。楽勝だ!」という慣用句だ。

この言葉は、自分の心を落ち着けるための、おまじないのようなものだと思っていたが、ちょっと違う見方をする考え方に出会った。

今、新人マンガ家を育成するマンガ専科という講座を6ヶ月間運営している。そこで、イラストの回を担当してくるデザイナーと教材を詰めていた時のことだ。

「絵を描くなんて、簡単なことなんですよ。世の中に残っているものは、すべて簡単なもの。簡単で、たくさんの人が取り組めないと、そもそもその技術は、残らないのだから」

僕は、家で料理をする。レシピをみて、なんでも作る。でも、寿司は絶対に寿司屋にいく。家で自分ではつくらない。難しいと思っているからだ。

でも、彼は言う。

「チェーン店とか、スーパーの裏では、バイトの人が握ってるでしょ。やればできるようになるのに、難しいって言ってやり始めない人がほとんどなんだよ」

実際、彼はそう言って、1年近く自分で寿司を学び始め、握れるようになってしまった。そのまま、びっくりすることに、都内で五本の指に入るくらいの美味しい寿司を握れるようになった。寿司の修行は、数十年という話は、どこへいってしまったのか? 楽勝だと思って、なんでもやり始めることで、彼は、コーヒー、写真、なんでもプロ級だ。もちろんデザインも。寿司は、噂を聞きつけた美食家が、世界中から来るようになっているくらいだ。

彼は、学びのプロだ。天才なのではない。学び方が圧倒的にうまい。その基本にある思想が、「シンプルなものしか世の中には生き残らない。だから苦手意識を持たずにやり始めた方がいい」だ。

挑戦をしても、ほとんどの人が出来ないほど困難なものであれば、そのジャンルは滅びてしまう。長期的な存在は、それ自体が簡単であることの証明になっているのだ。寿司を握るのが困難を極めるものであれば、寿司屋はとうに世の中から消えている。世界中で日本人以外が握る寿司屋があるなんてことも起きない。

苦手と思うことは、たいてい挑戦をしていないか、1、2回やってみただけで無理だと思っている。

全てのものごとは簡単と捉え、苦手意識を失くし、10回やってみる。そうすると、苦手なものがなくなっていく。

苦手意識とは先入観なのだ。

『ドラゴン桜』の桜木のVチューバーを通じて伝えているのも、勉強とは本来、楽しいものだということだ。苦手意識のせいで、自然と勉強が楽しくない理由探しに意識がいってしまう。苦手意識に囚われ、本来楽しめたであろうものを味わうことができず、もったいない時間を過ごしている人が多すぎる。

宇宙兄弟で、ムッタやシャロンが「It’s a piece of cake!」を合言葉にしているが、この言葉の意味を、改めてとらえ直した。

「経営って難しい」そんな言葉を、僕もポロっと言ってしまう。でも、世の中に経営者はごまんといる。僕が本当に成功を手にしたいなら、「経営なんて簡単で、楽勝でできる!」という姿勢を身につけなくてはいけないのだ。

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佐渡島庸平(コルク代表)

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2002年に講談社に入社し、週刊モーニング編集部に所属。『バガボンド』(井上雄彦)、『ドラゴン桜』(三田紀房)、『働きマン』(安野モヨコ)、『宇宙兄弟』(小山宙哉)などの編集を担当する。2012年に講談社を退社し、作家のエージェント会社、コルクを設立。
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