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【マンガ専科本先出しnote】マンガ家を一生の仕事にするための8つの目標管理

コルクラボマンガ専科」では、これまでマンガ家に必要なマインドとスキルをお伝えしています。いよいよ終盤を迎える今回は、マンガ家を一生続けていく上で必要な8つの目標管理の視点をお伝えしていきます。

◆マンガ家を一生の仕事にしていくために必要な目標管理

これまでは、【マンガ専科本先出しnote】においてはマンガの描き方を中心にお伝えしてきました。今回は、実際にマンガ家として一生を過ごすための方法をお伝えしていきたいと思います。
プロのマンガ家として生きていく上で大切なことは、目標管理です。「マンガ家になっておわり」ではなく、どんどんスキルを高め、世界中で読まれるような作品を生み出すことを目指すことが求められます。継続的にヒットを出していくためには、きちんと基礎力を備えておくことが重要です。そのためには、目標管理をしっかりしていくことが求められるのです。

マンガがヒットするかどうかは、時代的な背景や運の要素も大きいものです。だから、目標管理からのスキルアップは必要十分条件ではないけれど、まずは、いつ作品が当たってもよいように準備をしておくようにしましょう。

◆持続可能な作品作りに必要な8つの目標管理

マンガ家として幸せに仕事を続けていくには、8つの方向性で自身の目標を管理することが必要です。僕が大切だと思う8つは以下です。

①健康であり続ける
②メンタルが安定している
③金銭的に余裕がある
④面白いマンガが描ける
⑤SNSを活用できる
⑥チームを作る
⑦国内でファンコミュニティを作る
⑧世界でファンコミュニティを作る

ひとつひとつ解説していきましょう。

① 健康であり続ける

マンガ家であり続ける上で、健康は一番重要です。スキルを上げるためには、集中してクリエイティブし続ける経験を積むことが欠かせません。そのために、一番重要なのは体力です。マンガを描き始めたら全てをかけて打ち込みたいと思うかもしれないが、1年間無理し続けて、その結果体を壊してしまったら、その後何もできなくなってしまいます。
作品を仕上げるために、徹夜をしている人もいるかもしれないけれど、きちんと眠ることは健康の基本です。同じ時間に寝て、同じ時間に起きるのが、一番睡眠の質を安定させます。集中してものを作っていると、後々直しも減ります。体調を安定させるために、規則正しい生活を徹底してください。80歳でもマンガを描けるような体力づくりをしましょう。

②メンタルが安定している

「アーティストとは、気持ちの浮き沈みが激しいもの」と思っている人も少なくないでしょう。しかし、どんな業界でも一流の方はメンタルを安定させています。
メンタルが安定していることと、感情の有無は同一ではありません。感情豊かでもメンタルが安定しているということは十分にあります。

例えば、ハリウッドはチーム戦で作品を仕上げています。世界トップのクリエイターは、エッジが立っていることと、リーダーとして安定していることを両立させています。
日本のマンガ業界でも、同様のことがいえます。ちばてつや先生は、見た目からも仏様のような優しさがにじみ出ているのですが、話し方も心から温厚な方だとわかります。青木雄二先生も、僕が担当している新人さんが「青木雄二賞」を受賞すると、2年後くらいに「あの子どう? 頑張っている?」と気にかけてくださるような優しさがありなす。トップの作家さんは、思いやりがあって、愛に溢れているのです。

これは作家としての「必然」でもあると僕は考えています。よいマンガを描くには、世界を救う立派な方からとんでもないクズまでを描き分けないといけません。クズを描くためには、自分の腹立たしさは横に置いておいて、そういうとんでもない人を客観的に観察しなければいけません。どんな人でも受け止める人間的な度量がないと、そもそもよいマンガは描けないのです。人間力のある人の描く“悪”は、「ここまで苦しいおもいをしてきたら、悪人になってしまうよね」と客観的に捉えられており、人間味を描けるている。器の大きさが、マンガにあらわれるのです。

なお、人間性を高めていくには、自身が健康でなければその心の余裕は生まれません。つまり、「①健康であり続ける」と「②メンタルが安定している」は連動しているのです。

③ 金銭的に余裕がある

これもまたよくあるマンガ家のイメージとして、「金銭的に余裕がない」というものがあります。生活を切り詰めて、バイトを掛け持ちするような生活をおくって目指すものと考えて、極端な生活を受け入れている人もいるかもです。
しかし、マンガで一番大事なことは読者に「好きのおすそわけ」をするという精神です。果たして、生活に余裕がない方が「好きのおすそわけ」ができるでしょうか。
①で、健康は大前提とお伝えしましたが、体力を最も奪うのは「不安」です。脳は不安の時に、体力を使います。アスリートが平常心で試合に臨もうとするのは、不安を抱いてしまうと無駄に体力を削ってしまうからです。

金銭的な問題は、大きな不安になりがちです。次回、SNSの活用について詳しくお伝えしますが、現在はTwitterなどでファンをつかむことがマンガ家の生活の安定につながります。様々なアプローチで生活を安定させていく視点が重要です。

他にも、以下のような最低のお金の知識もつけておくことも大切です。
●税務の知識を得る
・年間10万円程度で顧問税理士を雇い、最適な節税対策を行う
・年間収入が2,000万を超えたあたりから、法人化を検討する
●投資の知識を得る(税理士のアドバイスを貰いながら)
・つみたてNISA(少額投資非課税制度)
・iDeCo(個人型確定拠出年金) など

ちなみにコルクでは、所属作家に対するサポートプログラムとして、マンガ家に合ったアドバイスができる税理士の紹介や資産形成のサポートなども用意しています。

【参考】著作権の知識を得る

マンガ家の収入に大きく関わることなので、著作権についての知識をお伝えしましょう。マンガ家にとって、お金と著作権は密接に関わっています。お金がないと著作権譲渡の仕事に飛びついてしまうことがありますが、著作権を譲渡してしまうと、二度と自分で自由に使えなくなってしまいます。

新たな仕事を始める時には、「この案件は、著作権が誰のものになって、どういうふうに管理されるのか」を確認しましょう。「著作権を守るぞ」という思いが強すぎて、仕事の機会を減らすのはもったいないですが、どういう仕事ならば譲渡でもOKとするのか、どういう場合は手元に残すべきなのかなどを確認してください。

「この案件では、著作権はどうなっていますか?」「著作権を譲渡したとしても私が自由に使いたいときは許諾を取らずに使用できますか?」といったことを確認する癖をつけてほしいです。

基本的に連載を始めると、編集者は出版社で著作権を管理させるように言います。前提としてお伝えしたいのは、出版社が著作権を管理することは決して悪いことではありません。『ワンピース』が世界でこれだけ読まれて、ゲームやアニメになり、イベントまで作られているのは集英社がきちんと著作権を管理しているからです。『ドラゴンボール』も『ドラえもん』も同様です。出版社の仕組みは、トップの作品にとっては、めちゃくちゃメリットがあるといえます。

しかし、ヒットしていない作品の著作権が塩漬けになります。今までの時代は、それを作家に渡されても、何もできませんでした。それがネット上では、小さくでも、個人では動かせます。小さく動かしていくことも、ヒット作の下地を作る上では重要です。

今までは、絶版になることで出版社に預けた著作権が作家に戻るような仕組みではありましたが、電子書籍ではそうはいきません。年間の印税がほぼなくても、出版社が著作権を管理し続けます。契約は契約なので、それに従う必要があります。出版社は、作家を応援してくれていますが、今の時代に会っていない仕組みも存在します。そこは見極めて、話し合う必要があります。

自分の作品がヒットしマンガ界の上位に入るのであれば、出版社と組むメリットはとても大きいです。
コルクでも作品が当たった時には、出版社に著作権を預けて、より広げてもらった方がマンガ家や作品のプラスになるので管理を任せることもあります。しかし、そこに持っていくまでには、小さなステップを踏んでいかなければいけません。そのステップをコルクが手伝っています。
これからの時代は、マンガ家がインターネットの中で活用することができます。そのため、著作権に対する知識は必須です。

【参考】データ管理方法

著作権に関連して、データ管理の重要性についてもお伝えします。出版社と付き合っているマンガ家たちの困りごとの一つが、アナログで書いた作品をスキャンして写植を入れる作業をし終わったデータが、作家ではなくて出版社に帰属してしまうということです。この工程により、電子での出版を行いにくくなってしまいます。解決策としては、写植を自分で入れて、完成データを管理しておくこと。最終版のマンガデータを自分で管理する。これは、やっておいた方がいいです。

*写植のルール
写植の入れ方のイメージをお伝えします。以下のスライドを参考にしてください。これは一例です。好きにして大丈夫ですが、このようなルールを決めておくと、写植も楽です。

図2

*データ管理方法
きちんとデータを管理をしておかなければ、長いスパンで自分の作品を活用することができません。作品名、話数、完成しているか否か、ページ数をフォルダ名に入れて管理をしましょう。

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④面白いマンガが描ける

根本的なお話ですが、マンガ家としてやっていくためには面白い作品を描かないとダメです。マンガ専科で伝えてきたことはまさにこの部分に当たります。
そのためにはまずは、「自分を知り、表現力をつける」が重要です。何を描いていくかは絶対にみなさんの中にあります。続いて、スキルをつけていきます。イラストを学び、感情の描き方を習得し、プロットを作れるようになり、演出ができるようになり、キャラクターを設定する。そして、作品を見渡して推敲できる力も必要です。この全てを1つのマンガに統合していくことにで、読み応えのあるマンガになります。こちらのスキルはすべてマンガ専科でお伝えしています。最近は、YouTubeにアップもしています。

さらに、面白いマンガを描く上で大事なことは一次情報に当たりにいくことです。
生きている人の中で、最も尊敬する人を思い浮かべてください。その尊敬する人に会いに行ったことはありますか。多くの人はないでしょう。会ったことがないのに尊敬しているのはなぜですか。会ったことがあればその人のエピソードが具体的に書けますが、会ったことがなければその人のリアルを描くのが難しいはず。とても尊敬しているのに、描けないという事態が起きてしまいます。

悲しみの感情を描くときに、自分の悲しい経験を思い出して描きます。一方で経験していない感情は描けないでしょう。
日常生活のすべてを一次情報にするよう意識することで、マンガのリアリティがグッと高まります。今はすべて検索できる時代ですが、それでは強度が弱い。インターネットが出てくる前の作家の強度が強いのは、全部一次情報に当たらなければいけなかったからだといえるでしょう。ネットは便利な反面、作家の想像するための素材集めを邪魔しているところもあります。うまく使いましょう。

⑤SNSを活用できる

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佐渡島庸平(コルク代表)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。