編集者は情報のDJであり、ソムリエでもある。

編集者とは、クリエーターをサポートする役割だ。それは、今も昔も変わりがない。

サポートとは、具体的に何を指すのか?

シンプルに言うと、作家の価値を最大化することだ。そして、価値を大きくするとは、影響力が大きくなるようにすることでもある。

昔はメディアが、影響力の拡大装置だった。なので、編集者は、社内で調整をして、そのメディアにクリエイターを載せるだけで、影響力を大きくすることができた。

しかし、今は、メディアに載せても影響力を大きくすることができない。メディアで認知を高めれても、好きになってもらうのは難しいのだ。

生活レベルが上がると、サービスの向上を人々は望む。ホテルや飲食など、サービス業と呼ばれる職種の日本のサービスは、世界トップレベルになっている。情報の受け渡しにも、同じような気遣いが求められ始めている。

編集者が、SNSをやると著者よりも前に出ていると批判されることがある。DJは、音楽にコンテクストを生み出す。ソムリエは、ワインにコンテクストを生み出す。音楽も、ワインもすごく繊細なものだ。コンテクストによって、そのものの良さは強くなったり、台無しになったりする。

本も同じだ。今、なぜ、読むのか? どう読むのか? 本をより楽しむためには、コンテクストを生み出す、DJやソムリエのような役目が必要だ。そして、編集者こそが、本のDJであり、ソムリエでもある。

ワインは、ソムリエがコルクを抜きながら、そのワインの魅力を説明する。編集者は、作品のコルクを抜く人なのだ。出来上がってすぐにコルクを抜く時と、時間が経った時だと、説明が変わる。

コルクは、コルクを抜く人たちの集団になっていくのだ。


「編集者は黒子だ」と言われることがある。だからといって、SNSで自分を発信しないほうがいいということにはならない。ソムリエがワインの魅力を味わって欲しいからと言って、一言も話さないということがないように。

編集者がSNS上で自分の居場所をつくり、可能性を感じるクリエーターの魅力をフォロワーに伝えることで、クリエイターの影響力を大きくして、サポートをするのだ。

これからの編集者は、サポートする相手のフォロワーを増やせなければいけない。

僕が編集者として、SNSで発信する時のスタンスとして大切にしているのは、『好きのおすそ分け』だ。

自分が良いと思ったクリエーターやコンテンツ。自分の思考にいい影響を与えてくれた情報。そして、日々感じた自分の気づき。このような自分が「いいな」「好きだな」「なるほど」と感じた自分の好きなものだけをフォロワーに共有するようにしている。

どれだけ世間でみんなが話題にしていても、その雑談に僕は参加しない。僕のSNSアカウントは、好きのおすそ分けのためにあるからだ。

マスメディアは、マスを相手にしているために、情報の発信者と受信者のマッチングの時の解像度が低かった。自分の求める情報やコンテンツを求めて、専門雑誌を買ったり、専門店に通ったとしても、そこには自分が求めていないコンテンツも多く含まれていた。

例えば、「面白いマンガを読みたい」と思いマンガ雑誌を購読していても、そこには様々なタイプの連載マンガがあり、その全てが自分の好みにピタリとハマることは、なかなか起こらない。好みのグラデーションがあるはずだ。

これまでは権威あるマンガ雑誌が、「この新人漫画家の作品は読む価値がありますよ」と、読者にコンテンツの質を保証していたが、これでは解像度が低い。NewsPicksがうまくいった理由の一つにのプロピッカーがあると僕は考えている。どのピッカーを信頼するかを先に見極めることで、メディアよりも、より痒いところに手が届く、情報のマッチングが起きる仕組みになっている。ニュースだけでなく、エンタメも、編集者レベルで作品がマッチングされる時代になってきている。

昔であれば、佐渡島がオススメする新人と伝えることに価値はなく、『モーニング』が注目する新人と伝えた方が圧倒的に価値があった。しかし、現在は、僕の熱心なフォロワーの人であれば、僕がオススメする新人と伝えた方が、雑誌の看板より価値を持つ時代になったのだ。

世の中の情報やコンテンツが膨大に増え、選択肢がありすぎる時代。自分の価値観に近いDJを見つけてフォローする価値は、ますます高まっていくだろう。

そして、このnoteでの連載は僕の編集者としてのDJの価値を高めていきたいと思っている。そこでマガジンのタイトルを変更することにした。

マガジン名は、週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』

これまでは「コルク佐渡島のコンテンツ会議」として長らくやってきたが、もともとはピースオブケイク代表の加藤さんとふたりで「コルク佐渡島、note加藤のコンテンツ会議」というマガジンを始めたのがネーミングの由来だった。その時は1分くらいで雑に決めた。

加藤さんと毎回PVを競うことで、文章を書くことを習慣にしようとしたのだ。さらにnoteができたばかりで、応援しようという気持ちがあった。

今、noteはすごく勢いがある。僕が個人メディアとして運用方法を見つけ、加藤さんにフィードバックすることで、よりnoteを応援したいという気持ちもある。加藤さんだけでなく、noteの現場担当の二人が、コルクラボ 出身だから、どうしても肩入れしたくなる。

以前、ライターの井手さんに協力してもらって記事を書く体制を作ったといったが、これからはさらに多くの人に協力してもらう体制を作り、雑誌を運用するような感覚で、しっかりと僕の好きをおすそ分けしていきたい。そんな想いから、タイトルを決め直した。

毎週水曜日にあげている僕の気づきの共有をはじめ、僕が可能性を感じている新人漫画家やクリエーターの作品、僕が刺激を受けた話などを、コンテンツのDJとして届けていく。

また、有料で購読いただいている方には、オープンな場では語りにくい僕のパーソナルな話や、コンテンツに関する個人的な意見などを充実させていく。もちろん、これまで続けてきた日記の共有も続ける。

「週刊!編集者・佐渡島の『好きのおすそ分け』」のこれからをご期待ください。

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