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「コピーライターが100個もコピーを書く意味って分かります?」 田中泰延さんと語る"響く文章を生む思考の型"。

編集者として「人を惹きつける文章」とは何かを常に考えている。

そんな僕が注目している書き手のひとりが、初の著作『読みたいことを、書けばいい。』が発売3ヵ月で16万部を突破した田中泰延さんだ。

電通のコピーライターとして24年勤務した田中さんは、「青年失業家」と名乗り、ウェブを中心にフリーランスのライターをしている。田中さんが担当する連載『田中泰延のエンタメ新党』『ひろのぶ雑記』は累計330万PV を誇るほか、SNSでの含蓄深い発言もしばしば話題となっている。

特に大きな魅力となっているのが、秀逸なボケ。対面では面白い冗談を言う人でも、文章になると固くなることが多いが、田中さんはリアルと文章にギャップがない。

そんな田中さんとコルクラボで対談をする機会を得た。ボケる文章の秘訣を聞いてみると、「ボケとは仮説であり、異なる対象をキワで結びつける行為」だと田中さんは言う。その対談内容をコルクラボのメンバーがレポート記事としてまとめてくれたので共有します。

<記事の書き手 = 井手桂司

図1

田中泰延(たなか・ひろのぶ)さん
1969年大阪生まれ。早稲田大学第二文学部卒。学生時代に6000冊の本を乱読。電通で24年間コピーライター・CMプランナーとして活動後、2016年に退職。「青年失業家」と自称しフリーランスとしてインターネット上で執筆活動を開始。ツイッターを通じて多くのファンを獲得し「ひろのぶ党の党首」と呼ばれることも。2019年、初の著書となる『読みたいことを、書けばいい。』を上梓。

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「水増し」にこそ、人生の楽しさは詰まってる!

佐渡島:
田中さんの書く文章を読んでいて思うのは、ボケが秀逸ですよね。『読みたいことを、書けばいい。』を読んでも、最初から最後までボケが散りばめられていて、途中で力尽きないのがスゴい。

田中さん:
この本を読んで、「泣けました!」と心得違いの感想を送ってくる人が結構いるんですけど、みんなが何を読んでるかというと「水増し」なんですよ。

この本で僕が伝えたいことを普通に要約すると数ページで終わってしまいます。それだと本にならない。さすがに僕も生活があるので、これでは困ります。だから、最低限ここだけは伝えたいという内容の間に、たくさんの水増しがあるんですよ。そのひとつがボケなので、必死にボケを書いてます。

だけど、人生って水増しの部分にこそ、楽しさがあるんじゃないかと思うんですね。

どんな人だって、「やるべきことは何か?」と問われれば、究極は仕事を一生懸命に頑張って、月末にまとまった給料を持って帰ること。以上、それで人生は終わりなんですよ。ところが、みんな、人生に必要ない行為を水増ししていく。仲間と酒を飲んだり、冗談を言い合ったり。僕は、この水増しの部分こそが、人生の本質だと思うんです。

図1

佐渡島:
無駄な部分こそ人生というのは、その通りですよね。でも、文章における水増しって、ただ原稿を膨らすとは違うじゃないですか。田中さんは、どうやったら読者が面白がってくれるかを考えながら、水増しの部分に秀逸なボケを盛り込んでると思うんですね。

僕は水増しの部分にこそ、作家の個性が現れると思うんですけど、田中さんの「ボケる力」みたいなものは、どうやって生まれたんですか?

田中さん:
いやいや、子供の頃からでしょう(笑)。基本的に大阪の人はボケ倒すじゃないですか。ボケの持論を語りだすと4時間くらいノンストップでかかると思いますが大丈夫ですか? 埼玉や千葉の人は終電がありますから、帰ったほうがいいかと思うんですけど。

佐渡島:
そこを何とかお願いしてもいいですか?(笑)

田中さん:
わかりました。もう50億回くらい話してるんですけど、改めて話しますね。


ボケには「パス回し」をするチームが必要!?

田中さん:
そもそもボケとは仮説です

「AはもしかしたらBじゃないのか」という仮説。「これはもしかするとマイクじゃなくて、バナナかもしれない!」 がボケ。「いやいやバナナじゃないだろ。マイクだろ!」がツッコミ。

そして、ツッコミとは舞台芸であるコントや漫才の職務なんです。ボケ役が次のボケにいくためのお膳立てとして、「違うやろ!」とツッコミを入れます。だから、僕らの日常生活においては、ツッコミは全く必要ないんですよ。

例えば、冒頭の挨拶で僕が「田端大学のみなさん、こんにちは!」と言ったとするじゃないですか。そこに「違うやろ。ここはコルクラボや!」とツッコミを入れる必要は全くない。そんなこと全員わかってますから。

そんなツッコミを入れるくらいなら、「違うやろ。ここは箕輪編集室や!」とボケを重ねてくれたほうが、だいぶマシ。

会場:
(笑)

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田中さん:
また、ボケにはチームが必要なんですよ。

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