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『宇宙兄弟』×『インターステラー』=『度胸星』!?

度胸星(1) (KCデラックス モーニング)

『宇宙兄弟』を好きな人なら、絶対に『度胸星』を読んだ方がいい。

映画『インターステラー』を好きな人も、絶対に『度胸星』を読んだ方がいい。

『宇宙兄弟』×『インターステラー』とでもいうべき作品、それが『度胸星』だ。

実はこの『度胸星』、未完である。雑誌の都合で、話がすごく面白いところで、連載は終わってしまっている。

でも、未完であるがゆえに、マンガファンの間で、完結させてほしい傑作としてよく話題になる。現在『へうげもの』を連載している山田さんは、インタビューなどで、もう続きを描く気がないと話していて、決して先を読むことができない。それが、この作品の不思議な魅力を、より増やしている気もする。小説のように、唐突すぎる終わりを迎えて、余韻が残る作品も、悪くないのではないかと個人的には思っている。

ついに人類は、火星に到達した。しかし、謎の物体テセラックにより、宇宙飛行士は殺されてしまい、宇宙船は破壊され、一人だけ残された宇宙飛行士は地球と交信することもできない。一方、地球では、火星へと救出へ行くため、急遽、宇宙飛行士のNASA選抜試験が行われる。元トラック運転手の主人公の三河度胸は、NASA選抜試験には落ちたものの、ロシア経由で火星へ目指す、という話だ。

『度胸星』と『宇宙兄弟』の共通点は、主人公がなかなか宇宙へ行かないことだ。当たり前だけど、宇宙飛行士選抜試験を描いていると、主人公は、宇宙へは行かず、地上で試験ばかりをしている。

『宇宙兄弟』の連載を始める時に、JAXAの取材をした。取材をすれば、するほど悩んだ。『度胸星』も、かなりしっかりと取材をしている。だから、宇宙飛行士選抜試験の流れなどが、同じになってしまうのだ。同じテーマを扱うのだから、一致するところがあるのは仕方がない。でも、『度胸星』はとても個性的な作品で、多くの読者は、それが取材ではなく、山田さんの創作による試験だと思ってしまう。そんな点が読者には、真似ていると思われてしまうかもしれない。

野球マンガであれば、甲子園へ行くまでの道のりを、色んな人が描いている。違う作品同士に共通点があったとしても、誰も気にならない。

悩みに悩んだけど、それを気にし始めると、自由に描けなくなる。宇宙飛行士選抜試験マンガは、『度胸星』と『宇宙兄弟』しかないのだ。小山さんが、影響を受けたり、意識しすぎるとよくないから、僕ら編集者だけが『度胸星』を読むようにして、小山さんにはあえて読まないようにしてもらった。『度胸星』には、謎の物体テセラックが出てきて、SFの要素もかなりある。一方、『宇宙兄弟』は、ずっと現実的な設定のまま話が進む。

巻が進むと、全く違うタイプの作品だとみんな気づいてくれるのだけど、巻が少ないうちは、編集をする時にかなり気を遣っていた。

もう一度言う。

『宇宙兄弟』を好きな人なら、絶対に『度胸星』を読んだ方がいい。

ちなみに、主人公の三河度胸は、目が細くて、目が描かれていない。マンガは、目の表現で感情を伝えることが多いので、このような意志の強い主人公を、細い目で表現しようというのは、すごい面白い挑戦だ。

『度胸星』第3話「名前だけの度胸」より抜粋

『度胸星』第17話 「逆上」より抜粋

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また、山田芳裕のもう一つの傑作。
織田信長、豊臣秀吉に仕えた戦国武将・古田織部を主人公として描いた歴史漫画。

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