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多くの会話は「対話」になっていない。 櫻本真理さんに聞く、問いかける力の大切さ

自分を変えられるのは、自分だけだ。

だが、自分を正しく認識することは、ひとりでは難しい。他者からフィードバックをもらうことで、はじめて自分の盲点に気づくことができる。僕自身、昨年からコーチングを受ける機会を設けているのだが、セッションの度に気づかなかった自分を発見し驚いている。

同時に、僕は編集者として、そして経営者として、作家や社員に気づきを与えられる存在でありたいと思っている。そのため、コーチングの勉強も意識的に行うようになった。

他人に気づきを与えるためには、何が大切なのか?

この問いへの理解を深めたいと思い、オンラインでコーチングやカウンセリングのサービスを提供し、コーチングできる人材(リーダー)の育成支援も行っているcotree代表櫻本真理さんと対談する機会を得た。

今回、5月12日に行われた櫻本さんとの対談について、コルクラボのメンバーがレポート記事を作成してくれたので、それを共有する。

<書き手 = わたぬきみき、編集協力 = 井手桂司

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櫻本真理(さくらもと・まり)さん
1982年生まれ。京都大学教育学部卒。モルガン・スタンレー証券、ゴールドマン・サックス証券にて証券アナリストとして勤務。2014年5月にオンラインカウンセリングサービスを運営する株式会社cotree、2020年1月にチームを育てるリーダーを育てる株式会社コーチェットを設立。両社の代表取締役。NPO法人Soar理事、株式会社CAMPFIRE社外取締役。エグゼクティブコーチ、システムコーチ、産業カウンセラー。

★この対談は、Youtubeの編集者 佐渡島チャンネルにて動画を公開しています。動画で観たい人はコチラから。

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自分の「正しさ」にこだわらない

佐渡島:
はじめに、カウンセリングとコーチングとは何か。両者の違いについて教えてください。

櫻本さん:
現在はコロナの影響で、様々な不安が社会に立ち込め、誰もがストレスを感じやすい状況です。ストレスがたまると、怒りや悲しみの感情を扱うのが難しくなる。向き合い、前に進む場としてカウンセリングやコーチングがあったほうが、気持ちが安定できるんです。

カウンセリングとコーチングに共通するのが、問いかけられることを通じて、自分の中にあったものを「言語化」していくプロセスです。

人に問いかけられることによって、自分を俯瞰的に見つめ、客観的に自分の感情や状況を整理していきます。そうすることで、気持ちの面で落ち着きを取り戻したり、具体的なアクションを見出していきます。

疲れている時にジョギングするのが難しいように、メンタルが弱っている時に自分を客観的に把握するのは困難です。本当の自分や、やりたいことと向き合うにもエネルギーがいりますしね。だから、他人に問いかけられることで、自分ひとりでは目の届かなかった所に光を当てていく。それをケアのためにやるのがカウンセリング成長のためにやるのがコーチングです。

佐渡島:
櫻本さんが考える、コーチングやカウンセリングを受ける上で大切なポイントはありますか?

櫻本さん:
必要なのは、自分の考える「正しさ」にこだわらないことだと思います。

こだわりが強ければ強いほど、自分と信念が結びついてしまって、信念を否定されると、自分を否定された気持ちになっていきます。環境が変化しているのだから、自分も変化して当たり前と捉えるなど、自分と事象を切り離せるかが重要です。

前提として、苦しみ、悲しみ、怒りなどのネガティブ感情は、誰にでもあって当たり前なんですよね。そういった感情と、どう付き合っていくかにフォーカスできると気持ちが楽になれると思います。

佐渡島:
コーチングやカウンセリングを受けなくても、普段から自分を客観視するために良い手法はありますか?

櫻本さん:
自分に自分で問いかける習慣を持つこともひとつですが、瞑想はメタ認知のトレーニングとしてオススメです。また、日記を書くのも効果的です。表現する力、伝えていく力をつけると自分自身に対する解像度が上がります。


大切なのは、相手を「受け止める」こと

佐渡島:
コーチング・カウンセリングで実施する「問いかけ」は、パートナーや友人との会話の中でも実行することは可能ですか?

櫻本さん:
出来る人はできます。でも、難しいと思いますね。

人って喋るのが好きじゃないですか。普通の会話では、「自分はこう思う」の主張の重ね合いで、対話になっていない場合が多いんですよ。自分と違う意見を投げかけられると、「自分の考えを正当化しよう」「相手を否定しよう」と、つい身構えてしまう。結果として、視野が広がっていかないことが多い気がします。

カウンセリング・コーチングでは、発言を受け止めてもらった上で、相手から問いかけられるので、次の見方に進んでいくことができるんですよ。

佐渡島:
なるほど、問いかける力を磨いていく必要があるわけですね。

櫻本さん:
そうですね。問いかける力が高い人は、自身に対しても問いかけることができ、セルフでカウンセリングやコーチングを行える思考プロセスが持てます。

ただ、人間って話を聞いてもらえる相手がいるから言葉を発するし、見てくれる存在がいるから頑張れるものじゃないですか。他者の問いかけにより、「考えよう」と心を動かすキッカケが生まれることに、カウンセリングやコーチングの価値があると思います。

佐渡島:
自身のメンタルケアだけでなく、対話が上手くなって、周りの人を手助けしたいと感じる人も少なくないと思います。対話のポイントはありますか?

櫻本さん:
そうですね、対話で大切なのは「聴く」ことです。

相手の存在を認め、その人の発言は相手にとっては真実である前提で、肯定して受け止める。

極端な話、コーチングやカウンセリングでは、コーチ・カウンセラー側が無言でも進捗していく場合があります。一言も発さなくても、存在を受け止めてもらえる安心感によって、相手の思考が深まっていくんですね。

相手にとって「何が不安なのか」を事前に察知することはできないけれど、「不安な感情を出してもいいよ」という空気を作ることはできる。その上で、「じゃあ、あなたに見えていないものって、なんだろう」と問いを投げかけると、相手の思考が深まっていきます。


自分を客観視できると、気持ちが楽になる

佐渡島:
そもそも、櫻本さんが『cotree』を始めた背景は何なんですか?

櫻本さん:
2014年にcotreeを創業しましたが、2010年頃まで外資系の証券会社でアナリストをしていました。

アナリスト時代、リーマンショックもあり、ストレスから睡眠障害に悩み、メンタルクリニックに足を運びました。すると、たった数分の診療で軽いうつ状態と診断され、治療薬を処方されただけで帰されたんです。大学で心理学を専攻し、心理療法の重要性を知っていた分、その対応にショックを受けました。

色々調べたところ、日本人は自分の悩みを人に話すことがすごく苦手と分かりました。自分の不調を上手く伝えられないと、病気として薬を処方してもらうくらいしか、病院が対応してくれない。

日本には堂々と自分の生き方と向き合える場があまりない。そのため、オンラインで誰でも使えるカウンセリングサービスがあればと思い、cotreeを始めました。

佐渡島:
櫻本さんは、自分のストレスをどう乗り越えたんですか?

櫻本さん:
証券会社にいた頃の私は、自分を全く客観視できてませんでした。勝負に負けたら自分が否定される感覚があって、それがストレスの原因になっていました。

以降、メンタルの問題に興味を持ち、コーチングを学び、色々な人の人生に触れてきました。結果、今でも不安や怒りはありますけど、感情に巻き込まれて調子が悪くなることはすごく減りました。


自己認識と他者認識の差をどう埋める?

櫻本さん:
私は個人的に、佐渡島さんがご自身をどう捉えているのか、すごく気になっています。

佐渡島さんって捉えどころのなさがあるというか……メンタルの不調を感じなさそうでもあり、内省が深そうなイメージもあって。自分自身に対して、どういう風に認識していますか?

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多くの会話は「対話」になっていない。 櫻本真理さんに聞く、問いかける力の大切さ

佐渡島庸平(コルク代表)

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コルク代表・佐渡島のnoteアカウントです。noteマガジン『コルク佐渡島の好きのおすそ分け』、noteサークル『コルク佐渡島の文学を語ろう』をやってます。編集者・経営者として感じる日々の気づきや、文学作品の味わい方などを記事にしています。

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コメント (1)
初めてのコメント…。ここでいいのかな?
とってもうなづき続けました。コーチング体験したくなったし、パートナーとの対話で試してみようと思います。ありがとうございました^_^
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