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「Do」ではなく、「Be」で抱負を立てる

ぼくは「今年は〇〇をしよう」という目標を意識的に立てない。

年始に目標を立てることに、以前から心理的な抵抗感があったのだけど、なぜか自分でもわからなかった。天邪鬼すぎる性格なのかと考えたりもしていた。でも、その違和感が何のか、見えてきた。

人間の成長において具体的なビジョンを描くことが大事とよく言われるが、果たしてそうだろうか。予測不能な変化が連続する中で、ビジョンを描き過ぎることは、ビジョンへの執着をうみ、変化に対する柔軟さを損ねる。

正確な未来予測などできない。去年の年始に、コルクがNFTアバターを事業にするなど、想像もしていなかった。想像をしていなかったことをやっているのは、僕はいいことだと感じている。予想外に対して、自分はどういう態度で接していきたいか。

「Do」ではなく、「Be」で抱負を立てる。

この視点で、今年の抱負を立てるのであれば、違和感はない。

正解主義の中にいると、「すること」「なること」に囚われる。

何をすると、いいのか。どうすれば、いいのか。自分は何をしたいのか。そんな自問自答を繰り返し、休日の予定ですら「何をするか?」と考える。正解主義では、「する」の積み重ねの先に何か正解があると信じてしまう。

ぼく自身、子育てにおいても、作家の育成においても、自分が彼らに何をするのかばかりを考えてきた。「する」ことで相手に影響を与える。だから、「間違っている」と感じることがあれば、それを指摘しにいくのは、すごく当たり前の行為だと思っていた。間違いを正すのは、自分の貢献を感じやすい、わかりやすい「する」ことだ。

しかし同時に、相手に影響を与える何かをすることは、「このままではいけない」「変化したほうがいい」と言外に相手に伝えることでもあり、相手が自分で気づき、自分で変化することを信頼できていない証拠にもなる。相手を信頼していたら、相手に自分が何かをする必要はない。相手に働きかけるのでなく、環境に働きかける。僕自身の行動を変容させることが、相手を信頼しながら、する行為で、贈与的だと考えるようになった。

何をするか、できるかではなく、相手のためにどう「いる」か。「する」ではなく、「いる」について深く考えるようになった。

経営者とは、率先して「する」人ではなく、その企業の価値観、アイデンティティを提示して、そこに「いる」人ではないか、とも考えるようになっている。

では、ぼく自身は、どんな「Be」でありたいか?

それは「判断保留の態度」を貫くことだ。

これまでのぼくは、素早く的確な判断ができる人になりたいと思ってきた。知識や情報が欲しいのは、その考えに基づいて判断をしたら、今の自分よりもいい判断ができるかもと期待するからだ。

だが、『観察力の鍛え方』にも書いたが、判断保留の態度にとり、正解を手放さないことには、観察ははじまらない。

すぐに反応しない、すぐにジャッジしない、自分はわかっていると思わない。この世には絶対的な正解などないことを前提に、どう接するといいのかを自分の心に問いかける。

思考が発酵するのを待つような姿勢なので、「タイムイズマネー」である資本主義の流れに逆行することでもある。

これは「鈍感力」とも違う。世間的でよく言われる鈍感力とは、自分の感情の動きを無視して対処することだと思う。だが、判断保留の態度とは、スルーすることではない。しっかりと観察し、あいまいなものを、あいまいなまま受け入れることだ。もしくは、はっきりと認識しながら手放す。

昨年、『どうやって、自分の存在感をなくしていくのか?』というnoteを書いたが、判断保留をしていくことは、自分の存在感をなくす事にも繋がる。

去年を振り返ると、以前と比べて、判断保留の態度を自然と取れるようになってきた感じる。今年はそれを深化というか、それがより自然な状態へとなっていきたい。思考として理解するのではなく、身体感覚として理解していきたい。

新年のはじまりに、「Do」ではなく、「Be」で抱負を立てる。

正解主義の中では「Do」にばかり重きが置かれる。だが、「well-being」や心のあり方へ関心が高まる時代においては、「Be」で抱負を立ててみるほうが、やはりしっくりとくる。


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